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第1特集
ヤクザが見る! アウトロー系マンガのツッコミどころ【1】

『殺し屋1』は一番エグくてリアル!? 現役ヤクザがヤクザマンガを徹底批評

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――マンガで描かれるヤクザの姿は多種多様だ。時にヒールとして、時に正義の味方として物語に登場するが、そんなヤクザの姿を”現役ヤクザ”はどのように見ているのだろうか? ヤクザ界隈で愛読されるアウトロー系マンガを中心に、ツッコミどころを聞いてみた。

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裏の人脈を使ってビッグビジネスを展開する『白竜』の主人公。

 メディアで発表される「子どもが選ぶ、将来就きたい職業」のランキングにおいて、プロスポーツ選手、警察官、医者は常に上位を占めている。現在、そうした職業に就いている人の中には子どもの頃に読んだ『キャプテン翼』(集英社)や『ブラック・ジャック』(秋田書店)の登場人物に憧れて、その道を志した人もいるに違いない。そして職業ではないが、マンガの影響を受けてヤクザになった者も、いるにはいるのだ。

「ワシは本宮ひろ志が描くヤクザもんに憧れたで。ヤクザっちゅうのんはメッチャカッコええもんやなあって。特に『男樹』(小学館)にはシビレた。組長の情婦の息子として生きる主人公の成長譚やけど、ケンカや女、友情などが絡みあう“王道”の物語。ワシも早う組のためのケンカで相手をドツキ回したいと思うたもんや。実際、自分がなってみたら全然、違うたけどな(笑)」(関西広域組織の三次団体組長・50代)

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一見、かつての少女マンガを彷彿するキャラを描く立原あゆみだが、シャブあり、暴力あり、殺人ありと、『本気!』のストーリーは結構過激。

 一方、地元を舞台にしたヤクザマンガを支持する者もいる。

「昔、『本気!』(秋田文庫)ってあったろ? ヤクザ同士の抗争や男の友情、恋愛など、いわゆる王道の極道マンガ。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)って少年誌に連載されてたけど、千葉が舞台だった。オレも千葉だったんで若い頃はワル仲間と毎回、楽しみに読んでたよ。皆で一緒にヤクザになろうって約束してたけど、結局なったのはオレだけだった。今でも単行本を大切に持ってる」(関東にある老舗団体幹部・40代)

 コワモテのヤクザがマンガを読んでいる姿はなかなか想像できないだろう。だが、趣味が高じてわざわざマンガの膨大なコレクションを保管するために専用の部屋を借りているヤクザもおり、また、そこまではいかないまでも、ヤクザ関連のマンガだけは目を通すというヤクザも少なくないのだ。

 彼らは昨今の暴力団排除条例や縦社会という厳しいヤクザ社会に生きている……ことは関係ないにせよ、同業ということで、どうしても作品に対しての目線がシビアになりがちである。そのため一般人なら素通りする表現でも彼らにとっては奇妙に映るケースもあるらしい。

「まあ、マンガだからウソがあるのは当然だけど、どうしても現実とマンガを比べてしまう。もしプロ野球選手が野球マンガを読めば素人にはわからない間違いを見つけると思うけど、それはオレらも同じだね」(前出の老舗団体幹部)

 それではヤクザは、アウトロー系マンガのどこに“引っ掛かり”を感じたのだろうか? 現役のヤクザがよく読むアウトロー系マンガの中から具体的に作品名を挙げてもらい、作品のリアリティについて語ってもらった。マンガオタクでも絶対に真似のできない、彼ら独特の視線に注目してほしい。まずはギャグが少なめで、硬派な作品の書評から紹介したい。最初は『白竜』【1】から。

 主人公の白竜こと白川竜也役を、同じ名前の俳優・白竜が1998年以来、オリジナルビデオシリーズで演じていることでも知られている。

「なかなか渋くて業界評価が高い作品。特に主人公がいい。親分の黒須がいつでも戻ってこられるようにと、組長の席を空けて自分は代行や若頭という役職を名乗り続けるんだよ。こういう親思いのエピソードがヤクザは好きだし、弱いんだよな。ただ現実は、これくらい情に厚いと、必ず利用する人間が現れて、騙されることが少なくない。ところで11年の2月から始まった『原子力マフィア編』が大震災でストップしたことは残念だった。震災の前から始まった新編だけど、原発のずさんな管理体制や、作業員給与のピンハネ横行など、実際に原発が抱える問題を描いていてリアリティがあった。『チェルノブイリの二の舞いだ』といったセリフが出てくるんだけど、その直後に原発事故が起きた。ゾッとするくらい当たってて驚かされたな」(某広域組織三次団体幹部・30代)

 次は『JINGI 仁義』【2】。こちらも実写化されており、映画版が91年に公開されてから、Vシネマでシリーズ化され、そのタイトル数は50を超えている。

「立原あゆみの作品はどれも好きだが、これも読み応えがある。主人公の神林も回を重ねるごとに成長するのは面白い。だけど、どれだけスゴイ才覚があったか知らないが、その出世スピードが並みじゃない(笑)。オレが神林と同じ20代前半の頃は、ただの掃除係だった。それに神林の相棒・義郎が東京大学出身というのも真実味が薄すぎる。そんな奴は絶対ヤクザにはならない。2人が所属する墨田川会内での跡目争いに端を発した混乱を乗り越えて、トップに就任するプロセスがリアルだっただけに、ちょっと興醒めする設定だった」(都内組織の組員・30代)

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