サイゾーpremium  > 特集  > IT  > 【キンドル】販売を阻む"契約問題"とkoboへの逆風

──電子書籍元年!……といわれてはや数年。実際には電子書籍はいまだ普及しておらず、それらを読む端末も浸透していない状態だ。電子書籍が今後、一般層に浸透することは間違いない中で、アマゾンやグーグルなどの外資系企業や日本の出版社などが、その主導権を握るべく争いを繰り広げている現状を追った。

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とりあえず角川さえ押さえておけば、オタク層は取り込める!?

「スマートフォンの普及率も20%を超え、日本ではモバイル革命が予測より早く起きている。特に、日本のスマホユーザーはショッピングに使う人が75%と世界で最も高い。これは大きな成長要因になる」

 9月25日、独自のタブレット型端末「Nexus(ネクサス)7」を引っ提げて、日本市場に殴り込みをかけたグーグルのエリック・シュミット会長は、発表会見の席で日本市場への期待感をそう表した。アメリカ本国では、すでに提供されている端末とサービスだが、同日付で、電子書籍販売サイト「グーグル・プレイブックス」を、日本市場向けに開設した。だが、ここに至るまでには、紆余曲折があったようだ。ある出版社の社員は語る。

「グーグルから(Nexus 7の発売の)1カ月前に突然、電子書籍と端末の販売を開始すると聞かされ、『書籍を電書化してほしい』と依頼されて急いで用意した。同社は、2年前の東京国際ブックフェアで、2011年春にも電子書籍サービスを開始すると発表していたが、それから1年以上も遅れての発売となった。その間にもやり取りはあったが、グーグルと電子書籍の販売契約をしたのは1年くらい前。紀伊國屋書店やTSUTAYAのシステムと連動するという話も挙がっていたが、すべて立ち消えた」

 それでも、このタイミングに参入したのは「6月にアマゾンが『キンドル日本語版』を”近日中”に発売するとの発表に対し、少しでも先にサービスインして、市場を占有したいという思惑からだろう」(出版社社員)と話す。

 次代のメディアを担う存在として、海外における電子書籍市場の覇権争いが繰り広げられる中、日本でもやはり、アマゾン・キンドルへの注目度は高い。ある出版社関係者は「楽天のkoboやグーグルへの期待値を5とすると、アマゾンへのそれは10以上。その要因は、アマゾンが紙の書籍の販売で各出版社のシェアナンバーワンECサイトとなったこと。これだけ紙の本が売れるサイトで電子書籍を販売すれば、相当売れるのではないか」と、期待の高さを話す。

 一方、アマゾンに先んじたいという思惑があるにもかかわらず、グーグルが参入に、これだけの歳月がかかったのはなぜか。実は、その理由のひとつが、「グーグル・プレイブックス」の作品ラインアップから見えてくる。同サービスでは、世界の4万8000社・400万点の電子書籍作品が購入できると謳うが、そのうちの日本語の作品数については公表できていない。なぜなら、同社のサイトには講談社、小学館、集英社などの大手や文芸系出版社の作品が見当たらず、圧倒的に少ないからだ。

「グーグルが発表している作品提供出版社は、角川グループ、PHP研究所、ダイヤモンド社、東洋経済新報社、主婦の友社など。最も売れるはずの大手出版社の名前はない。電子書籍の販売に関しては、取次を介さず大手・老舗出版社と直接販売契約を結ぶのが通例となっているが、大手出版社は、外資系企業であるいわゆるGAFMA(ガフマ:グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト、アップルの総称)と、直接契約を結ぶことについて警戒している。特に販売価格の決定権をめぐって、契約書の内容を再三に渡り見直しているようだ。アマゾンの上陸が延期されている理由も、日本の大手・老舗版元の作品がなかなか揃わないためだろう」(電子書籍関係者)

 講談社・野間省伸社長も、今年の東京国際ブックフェアで「欧米の出版社でもこの5社は、共に事業を行うパートナーでありながらも競合する関係であるとして、出版業界の脅威ととらえている」と、ガフマとの契約締結について懸念を示しており、ほかの大手出版社からも同様の声は上がっている。

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