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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第43回

民主党が知り得なかった 普天間移設問題の深淵【中編】

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ほとんど語られない米兵と地元住民のつながり

神保 "沖縄側"といっても知事が提示したわけではなく、主体は「沖縄県防衛協会北部支部」とあります。土建業者が中心の民間の団体であり、アメリカ側に直接提案したというのは驚きです。何かパイプがあるんですか?

守屋 かつて日本は米軍に占領されていました。多くの日本人は忘れていますが、米軍基地は、戦争に負け、衣食住に困っていた日本にとって魅力的な場所でした。チョコレートも肉も食べられる。基地内の売店は免税なので日用品が非常に安い。一部の日本人は、米兵と友人になって、基地を利用していました。米軍基地の多い沖縄では、今でもその付き合いがある。沖縄の人がアメリカ人を嫌っていると考えたら、それは間違いです。本土の人よりもアメリカ人が好きだという人は少なからずいます。日本が高度経済成長を遂げ、物価が高くなると、米兵は基地の外での生活が厳しくなる。そんな時には、沖縄の人たちは米兵を招いてホームパーティを開き、友好をつないで来たのです。沖縄の人は、米軍人・家族とのコミュニケーションを大事にしているのです。

神保 なるほど。現地の土建業者が潤うことは明白ですが、新設基地で、さらに埋め立てを伴えば、一般の沖縄県民の反対運動に拍車がかかることも間違いありません。陸上案で合意しかけていたアメリカが、よくこの案を支持しましたね。

守屋 それが沖縄の交渉力のすごさで、相手を信じさせてしまうのです。

神保 地元団体の意見が沖縄全体の民意を代表しているとは言い難いのでは?

守屋 地元団体の有力者が米軍人に働きかけ、米国側に(埋め立て案より環境に配慮した杭打ち桟橋の)浅瀬案受け入れの余地があると伝えられると、沖縄県の政財界も、浅瀬案でまとまるのです。背景には「米軍基地の大規模返還は沖縄の経済が立ち行かなくなるので、望まない」「ゆっくり時間をかけてやればいい」との考えがあるのです。確実に返還が進む移設案を阻止するためです。

 その手法は、沖縄にいる政府の出先である沖縄大使、沖縄総合事務局、那覇防衛施設局に働きかけ、それと並行して、中央の政・財・官界に対して、沖縄の政・財・官界の人が手分けして浅瀬案で応じる旨を伝えることでした。その一方で、陸上案については、「集落に近いので航空機騒音がうるさい。集落上空を飛ぶので危険だ」と言って批判することで、その適格性を奪うことでした。確かに地図上で見ると、その距離は近い。しかし、実際の予定地は山上にあるので、騒音は下の集落まで届かない。我々としては、そうした地理的特性を踏まえて陸上案を提案したのですが、米国だけでなく、中央の政・財・官界・マスコミから「メンツにこだわりすぎ」と批判されました。

神保 それで、日本政府としては、地元沖縄とアメリカ政府が共に推す案に反対できるはずがなかったと。

守屋 そうです。陸上案を断念してからも、米国との間でL字案で合意するまでに、名護市と沖縄県とV字案で合意し、基地の新設にならず、きれいな海を壊さない、妨害活動を排除できることを確保するために大変な交渉がありました。ちなみに、L字案は130ヘクタールの広さを要し、埋め立て面積は105ヘクタール。V字案は205ヘクタールの広さを要し、埋め立て面積は150ヘクタールに及びます。

神保 そして日本政府は、ベストであると考えていたキャンプ・シュワブ陸上案を捨て、困難が伴うことを知りながら、沖縄県の政財界とアメリカ政府が推す辺野古沖案を最終合意案としたんですね。

宮台 印象的なのは、地元からの強いコミットメントがあって出てきたアイディアが辺野古沖案だったことです。米国政府や日本政府が率先して提案したアイディアではなかったんですね。守屋さんのおっしゃる経緯からみる限り、「米軍が66年に立案したとされる辺野古軍港化構想に固執し続けた」という話ではなかったことになります。

神保 守屋さんには失礼ですが、政府が沖縄に手玉に取られたといえるのでは?

守屋 確かにそうでしょう(苦笑)。沖縄の政・財・官界の人々が結束して、本土の政・財・官界、マスコミに対して「浅瀬案だったら、沖縄はのむ」という一大オペレーションが行われたのです。

神保 こうした経緯を踏まえて考えると、民主党が掲げた「県外移設」という案は、いささか唐突だった感じがしますね。

守屋 しかし、問題は自民党にもあったと思います。06年、額賀福志郎防衛長官が島袋吉和名護市長と基本合意書を、稲嶺知事と基本確認書をそれぞれ署名して交わし、普天間飛行場の移設先について、キャンプ・シュワブV字案で合意しました。ですが知事は、直後の記者会見で、不誠実にも「合意はしていない」と主張しました。基本確認書には「日米が合意した政府案を基本として対応することに合意する」という文言があり、それを記した文書に知事が署名までしているのですから、私はその場で知事に訂正発言させることを大臣に進言しましたが、額賀さんは「まあ、いいよ。確認書は取っているのだから」と、見逃してしまったのです。するとその後、次の仲井眞弘多知事も島袋吉和名護市長も、沖合に100550メートル滑走路の設置という修正案を主張し始めた。驚くべきことに、沖縄問題に影響力のある自民党の大物議員だけでなく、各省も財界もマスコミも沖縄の考えを支持し、「V字案を修正してくれ」と主張したのです。

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