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第2特集
知られざるニューエコノミー"ギャル"の生態系【1】

華やかで堅実な「フリー」経済の実践場はギャルにあり!?

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──雑誌不況のただ中で、ギャル誌の売り上げが好調だ。新雑誌も複数創刊され、市場は活況を呈している。また、ネットにおいても、主戦場をブログに定めたギャルモデルたちの中には、月に500万PVをたたき出したり、広告によって月収が100万円を超える子もいるという。カネの匂いをかぎつけた大人も集まり始め、にわかに盛り上がりを見せるギャルを取り巻く状況を、文化とビジネスの両面から解析!

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(写真/三浦太輔(go relax E more))

「Popteen」(角川春樹事務所)が50万部を突破したのを筆頭に、「JELLY」「Ranzuki」(共にぶんか社)、「SCawaii!」(主婦の友社)、「egg」(大洋図書)らギャル誌の部数がどれも好調のようだ。さらに「Nicky」(竹書房)、「Popteen」のお姉さん雑誌「PopSister」(角川春樹事務所)、「EDGE STYLE」(双葉社)と、この4月以降だけで3誌が創刊されるなど、ギャル誌の誕生ラッシュも進行中。雑誌の売り上げ低下に悩む出版界の希望の星となっている。また、電通もギャルマーケットに照準を合わせたマーケティングチーム"GAL LABO"を発足させるなど、ギャル市場への注目はとどまるところを知らない。

 ただし、彼女たちの存在を「大きな市場の出現」ととらえるのは大きな間違い。ギャル界の経済には独自のルールがあり、これまでのマーケティングの常識とは少し違う法則で動いているようだ。

 何せ、現在のギャル界最大のカリスマ・益若つばさのモットーは「堅実」。消費の先端にいるファッションモデルから出てくる言葉とはとても思えない。さらに、青山でも原宿でもなく、いまだ足立区在住というのも彼女らしい。そんな彼女が体現するギャルの思想とは「華やかだけど堅実」である。本特集ではそんなギャルたちの世界を研究し、ここで始まっている新しい経済の法則に迫ってみたい。

読者モデルたちを中心に回るギャル経済

 ギャルとは何か? 簡単そうで難しい質問である。本特集のカバーを飾る16歳のてんちむちゃんから彼女より10歳以上年上のアゲ嬢たちまで、ひとことでギャルといっても年齢もファッションの傾向もばらばらなのだ。

「ファッションとしてギャルを定義するのは不可能」と言うのは、ファッション研究者で共立女子短期大学専任講師の渡辺明日香さん。

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90年代以降、コンサバやモードといった従来のファッションの括りが崩れ、上図の4象限に変化。なかでもギャルは、フェミニンやストリート系にまで拡散する、一大派閥になりつつある。盛りギャルと森ガールの2大勢力による最終戦争(ハルマゲドン)は間近!?

「今のギャルファッションは変化が激しくて、ジャンルとして定義することはできません。ひとりの子が昨日はストリート系、明日はコンサバOL風といった変化も普通です。2002〜03年以降、ギャルファッションは臨界点を超えて、普通のファッションに取り入れられるようになりました。赤文字雑誌の中でも『ViVi』(講談社)などはかなりギャル寄りですし、渋原系みたいなストリートと交わる流れもあります」(同)

 かつての"コギャル=厚底"のような、明確な記号性や同族意識はなくなり、ギャルは拡散する傾向にある(右マトリックス参照)。ギャルとはもはやファッションやスタイルではなく、生き方そのものになりつつあるのだ。

 また、ギャル誌が売れているからといって、雑誌が流行を生んでいるわけでもない。渡辺さんは「ファッション雑誌は、あくまでメイクやヘアスタイルの参考のために買われてます。雑誌側もサンプル写真をたくさん載せたり、メイクのハウツーDVDを付けたり、実用の方向に向かっている」という。

 雑誌の代わりに流行をリードするのはモデルたちだ。ギャル誌では、専属モデルはごく少数で、基本的に読者モデル(読モ)だけで成立する。ポスト益若として舟山久美子や小森純らが台頭しているが、彼女たちも皆、読モである。

 読モはノーギャラ、もしくは安いギャラしかもらえない。ただし、その代わりに彼女たちは雑誌に載ることで知名度を得ていくのだ。

 読モたちが収入を得る主戦場は、雑誌ではなくブログ。世間的には無名の読モでも、何万、何十万の月間PVを持っている。彼女たちの服やメイク、アクセサリーなどが、日々のブログで伝えられ、流行が生まれていく。そして、そのブログでスポンサーの商品を紹介したり、バナー広告を貼ることが、彼女たちの稼ぎとなる。ブログを開いていることで、企業側から広告掲載のオファーが個人に来るのだ。芸能事務所などに所属していない子でも、毎月数万円から数十万円の収入になるという。

 もうひとつの収入源に、商品のプロデュースがある。

「つけまつげとカラコン(カラーコンタクトレンズ)の市場は、ここ数年でモデルがプロデュースした商品に独占されました。ほかのジャンルにも、こうした波が押し寄せるのは間違いないでしょう」と断言するのは、"渋谷ギャル界のフィクサー"こと池田隼人氏(関連記事:当特集【3】)。彼がプロデュースする渋谷109の人気ショップ「SBY」で扱うアクセサリー類の商品開発にも、人気読モたちの意見が取り入れられているという。同店では、彼女たちが商品開発に携わるだけではなく、スタッフとして店頭に立って働いている。

 90年代に渋谷109のコギャル御用達ブランド・エゴイストが登場したあたりから、カリスマ店員が流行をつくり出すというボトムアップの潮流は生まれていたが、昨今ではその流れが市場を覆い尽くしているのだ。

 ここまで見てきたように、ギャル誌と読者モデルの関係は、互いに費用を掛けずに得を取るWin-Winの関係にある。クリス・アンダーソンの『フリー』(NHK出版)で掲げられた経済モデルがここで構築されているのである。また、『ツイッターノミクス』(文藝春秋)の著者タラ・ハントは、ネット上での影響力が仮想通貨("ウッフィー")として機能するギフト経済の誕生を指摘しているが、ブログなどでの影響力が現金化されるギャルの世界は、まさにそれを実践した世界なのだ。

地方まで拡散したギャル文化の現状

 ギャル誌が50万部超という市場に成長したのは、ギャルが渋谷から全国区の存在になったことが大きい。渋谷ではいかにもなギャルは減り、むしろ地方都市や郊外のファミレス、ショッピングセンターなどで見かけるようになった。

 ギャル誌のターゲットも地方に移っている。今年6月創刊の「EDGE STYLE」は、"地方都市在住、ネイルサロン勤務、20代中盤"と狙いを明確にしている。また、一昨年〜昨年の「小悪魔ageha」(インフォレスト)のブレイクも、地方のキャバ嬢をモデルに起用するという戦略の勝利だった。

 こうしたギャルの地方への拡散を後押ししたのは、ブログやプロフなど、ケータイのソーシャルメディア系サービス。前出の池田氏は、こんな例を挙げる。

「地方から渋谷まで買い物しに来たにもかかわらず、お目当ての商品を、マルキューで試着だけして帰るんです。たとえば試着した服が6000円だったら、それをモバオクで3800円で買う。そして、1〜2カ月着たらモバオクで2500円で売る。地方のギャルたちは、お金を使わずおしゃれを楽しんでるんです。小学校低学年からケータイを使ってる現代ギャルは、ケータイでモノを買うことに違和感を感じていませんね」

 ネット通販やオークションを駆使することで、地方にもギャルアイテムが行き届くようになり、ギャルが全国区のものとなったのだ。

 iPhoneやtwitterを活用するビジネス層とはまったくクロスしないが、彼女たちには彼女たちのネットの世界が広がっている。 「努力してでも安く済ませる」「何がカッコイイかは自分たちが決める」。こうしたギャルならではのルールとネットが結びつき、「華やかだけど堅実」という特有の経済モデルが生み出されているのだ。

(取材・文/速水健朗)

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