サイゾーpremium  > 連載  > NewsPicks後藤直義の「GHOST IN THE TECH」【33】

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー
テラフォーメーション

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テラフォーメーションの公式HPより。

レディットの元CEO、イーシャン・ワンが2019年に創業した植林スタートアップ。多様な種を育てるシードバンクから、植林のノウハウ、その後の木の成長をトラッキングするなど、森を作るためのツールを植林事業者に提供する。シリコンバレーのグーグルやフェイスブックで働いていた元技術者たちが、立ち上げに参画しており、グリーン分野で注目を集めている。

シリコンバレーでは今、テクノロジー業界で成功した起業家やエンジニアたちが、グリーン分野のビジネスに押し寄せている。地球を守りながら、カネも稼ごうというわけだ。

その中でも一風変わっているのが、これまでオンライン掲示板のレディット(Reddit)でCEOなどを務めてきた、起業家のイーシャン・ワンだ。彼はもともとカーネギーメロン大学でコンピュータサイエンスを学んだ秀才。そこから決済サービスのペイパルであったり、創業して間もないフェイスブック(現メタ)のプロジェクトマネージャーとして、長らく活躍してきた。

20年にわたってシリコンバレーの中心地にいれば、お金もあり、豊かな暮らしをするのはわけもないことだ。そんなイーシャンだが、2020年にいきなり植林スタートアップのテラフォーメーション(Terraformation)をゼロから起業した。

「いいですか? 木は少なく見積もって、1本あたり1トンの炭素を吸収します。だから1兆本の木を植えることができれば、1兆トンの炭素を吸収できるんです!」

イーシャンが今熱中しているのは、世界的問題になっている気候変動と戦うために、植林というローテクなソリューションを活用することだ。

世界では毎年、450億トン近い二酸化炭素を空気中にばら撒いており、少なくとも50年までに排出量を「差し引きゼロ」にまでもっていかないと、異常気象などによる壊滅的なダメージが降りかかってくることは、共通認識になりつつある。

ではスタートアップ創業者として、どう戦うか。彼は木や森は、今日からでも始められる炭素回収のソリューションとして有望だという。その野望は、世界で1兆本を植林すること。木は光合成によって二酸化炭素を吸い込むため、増やせば増やすほど、大気中の炭素を減らせるというロジックだ。二酸化炭素を吸い込めば、それはカーボンクレジット(炭素排出権)になり、ビジネスになる。

「俺らに必要なのは、ハイテクじゃない、ローテクな技術だぜ!」(イーシャン)

シリコンバレーから遠く離れたハワイ島にある本社では今、世界中の植林を加速させるために、さまざまな種を増やすシードバンク(種の保存施設)から、それを苗木に育てるグリーンハウス、さらには海水を淡水に変えてくれる、水処理施設などを実験的に運用している。

YouTube上では、エンタメ感でいっぱいのトークで、このテラフォーメーションの野望について語りまくるイーシャンの姿が人気を集めている。

日本風にいえば、2ちゃんねるの創設者であるひろゆき(西村博之)が、いきなり植林スタートアップをつくって、南の島に移住してしまったようなものだ。そして、それがガチだからまた面白い。

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