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第1特集
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プーチンに媚びるロシア正教会ラップが猛烈な批判対象に! 独自の美学を磨き続けるロシアン・ラップの潮流

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――本誌2019年2月号掲載規制で生まれたアンセムは国を動かす!?――共産圏らで禁忌化するラップ、リリックはネットで国境を越えるで、ロシアのラップ規制について寄稿した音楽ジャーナリスト・小林雅明氏が現在進行形のロシアン・ラップを追う。

ロシアでもラップは人気の音楽ジャンルである。スポティファイがロシアで音楽配信のサービスを開始したのは2020年7月で、ちょうど1年後には、その間にもっとも多く聴かれたアーティストを発表している。総合第1位となったのは、「Cristal & МОЁТ」をはじめとする楽曲が大きな人気を集めたラッパーのMorgenstern(モルゲンステルン)だった。ロシアでは異色のラッパーとされる彼が曲中で取り上げているのは、銃やドラッグ絡みの犯罪や豪勢な暮らしぶり。北米のサブジャンルでいえば、トラップにあたるようなものである。

これを同スポティファイにてソロパフォーマーに絞ると、彼に続くのはScryptonite。旧ソ連時代に現在のカザフスタンに生まれ、ロシア語でラップし、ロシアでここまでの人気がありながら、自身をロシアではなくカザフスタンのアーティストとしてとらえている。この2人を追うのは、サンクト・ペテルブルク出身のkizaru(キザル)、LSP、エモラップのPharaoh、Boulevard Depo、Slava Marlow、GONE.Fludd、Mayot、Max Korzhなどラッパーの名ばかりが連なる。

一方、2人以上のグループ、あるいはバンドのくくりでもトップのBTSを追うのは、ラップ・デュオであるMiyagi&Andy Pandaといった状況だ。音楽的なスタイルの面では、北米のラップシーンからの影響は強く、オートチューンを使ったり、トラップやエモラップが好まれている。上記のアーティストの中では、一番人気のモルゲンステルンやキザルなどはメジャーレーベルとなんらかの契約を結んではいるものの、ほかはインディペンデントでDIY的な活動展開を続けている。このあたりが2010年代以降、特にここ数年のロシアのラップ・シーンの大きな特徴のひとつとなっている。

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Miyagi & Andy Panda「Freeman」オフィシャルMVより

その代表格が、Oxxxymiron(オキシミロン)だ。今から3カ月ほど前にウクライナ侵攻に反対の意思を表明、ロシア人、ウクライナ人ともに平和を求めて立ち上がろうと呼びかけるライブを欧州各地で開催し、世界中の一般メディアでも大きく取り上げられたラッパーだ。サンクト・ペテルブルグに生まれた彼は9歳から英国南部の郊外の町で育ち、まぐれで入学できたオックスフォード大学で英文学を学ぶ。卒業後、ロシアの新興財閥から仕事をもらったりもするが、食えない生活を続けながら、オンラインで他の国に住むロシア人ラッパーとのバトルを楽しんでいたという。そんな彼が頭角を現したのは、3000人ものラッパーを擁するロシアのオンラインバトル。この頃からここが、ロシア・ラップシーンの登竜門となる。

オキシミロンがロシアに戻ったのは2012年、ガールフレンドとモスクワに移り住んだ。ゴーストライトをしつつもラップだけでは食えない生活を続けるうちに、初めて作ったミュージックビデオが100万回再生を超え、活動が軌道に乗り始める。英国時代はドイツのヒップホップを好んで聴いていたため、グライムに目覚めたのは07年と遅かったようだが、グライムのビートの構造とロシア語の効果的な組み合わせを研究し、独自のスタイルを編み出した。彼の登場により、良くも悪くもロシアのラップに変革がもたらされた。「以前は形式より内容のほうにずっと重きが置かれていた。二音節の押韻やフロウについて誰も気にしていなかった。(ヒップホップの)ルーツを知り、リスペクトしないと」 と雑誌「DAZED」のデジタル版(16年)のインタビューで語っている。

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