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第1特集
HIV/エイズが“死に至る病”でなくなった今も根強く残る差別と偏見

“PrEP”の薬事承認が遅れる理由 エイズ問題から見る日本の社会課題

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──性感染症としても知られる「HIV/エイズ」は1981年に最初の症例が確認され、今年で40年を迎えた。すでに“死に至る病”でなくなったにもかかわらず、日本ではいまだに正しい理解が浸透せずに差別や偏見が残存している。HIV/エイズの最新動向をたどりながら、日本が抱える社会課題を浮き彫りにしていく──。

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今年1月には、HIVをテーマに80年代イギリスのゲイコミュニティを描いたドラマ『IT’S A SIN』が配信され、同国で大ヒットを記録した。生島氏も作品中で描かれる描写の正確さを激賞。日本ではAmazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて全話視聴可能。(画像は『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』公式サイトより)

HIV/エイズという病気を知らない人はいないだろう。性感染症としても広く知られているこの病気について、まずは改めてその定義を確認していく。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は主に「性交渉」「血液を介した感染」「母子感染」のいずれかの感染経路を経て人間に感染すると、HIV感染症が発症する。感染から2〜4週間を置いてインフルエンザのような急性症状が起こった後、2〜4週間で症状は沈静化。その後、約2〜10年の潜伏期のうちに体内のHIVが免疫細胞に感染し徐々に感染者の免疫を低下させ、最終的には重篤な免疫不全状態としてエイズ(後天性免疫不全症候群)を引き起こす。

エイズは1981年に米国で最初の症例が確認され、当初は男性同性愛者間で流行している“奇妙な病気”として報道されたが、すぐに全世界的な広がりを見せていく。2021年に国連合同エイズ計画が発表したデータではこれまでの累計感染者数は約7750万人、感染流行以来エイズによる死者は約347 0万人に上る。世界的な治療研究が進められる中で今も根治に至るワクチンは開発されておらず、1990年代前半までは“死に至る病”として人々に恐れられた。国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センターでACC科医長を務める照屋勝治医師は、HIV/エイズを昨今の新型コロナウイルス流行に先駆けて「全世界の医療従事者や研究者が同時に治療と研究に取り組んだ、グローバル化世界における最初のパンデミック」と位置付ける。

しかし現在は抗HIV薬の進歩により、すでに致死的な病気ではなくなった。多くの患者は内服治療を続けながら、全く普通の生活を送れるようになっている。

次に、HIV/エイズをめぐる治療研究の流れと日本の動向を見ていこう。

81年に米国で最初の発症が報告された後、日本では、85年に米国在住の日本人を日本のエイズ第1号患者と認定(96年に修正)。80年代中盤に“エイズパニック”を引き起こしたほか、“薬害エイズ事件”が社会にさらなる衝撃を与えた。(本記事最終ページの年表参照)。これに付随して、98年にはHIV感染者の身体障害者認定制度が開始。これまで患者は高額となる医療費を高額療養費制度で減免するしかなかったが、同制度によって当事者の負担が大幅に軽減されるようになる。日本では最初期の発生から10年近くがたって、ようやくHIV/エイズ患者に対する補償体制が整備されていったのだ。

一方、医療の世界でエイズ治療法の研究は着実な進展を見せる。85年に東京都立病院がエイズ専門外来を設置。同年、米国国立がん研究所に勤めていた満屋裕明博士が世界初の抗HIV薬ジドブジン(AZT)を発見し、87年に日本の厚生省でも臨床承認されている。前出の照屋医師がAZTについて解説する。

「AZTを投与した患者では速やかに免疫力の回復が認められ、この画期的な成果により、治療に光が差したと思われました。しかしその後、AZTの効果は一時的なものでしかなく、AZTの効かない耐性変異ウイルスが、すぐに体内で発生してしまうことが判明したのです。

その結果、AZTにより免疫状態回復が見られていた患者も、再び免疫不全が進行してしまい、最終的にエイズを発症することは避けられませんでした」

HIV/エイズの革新的な治療法が発見されたのは96年。3種類の治療薬を組み合わせて投与する「カクテル療法(HAART/現・ART)」によって、血液中のウイルス量を一定のレベル(検出限界未満)にまで抑えることに成功。これにより、抗HIV薬の効かない耐性変異ウイルスは出現できず、効果が生涯にわたって持続することが明らかとなった。根治はできずとも、ウイルスの体内での活動を止めて、免疫力の回復・維持が可能となった結果、HIV/エイズは“死に至る病”ではなくなった。以降、エイズ患者の死亡率は激減していく。

しかし、96年当時の治療薬では1日に何十錠もの薬を複数回に分けて内服する必要性や強い副作用を引き起こす可能性が高く、患者にかかる負担は大きかった。その後ワクチン研究が続けられる一方で、ARTに使用する治療薬研究が進み、薬の処方量や副作用リスクの軽減を実現。2000年代以降、1日1回の内服で効果を発揮して副作用も少ない「ツルバダ」や「エプジコム」といった薬が開発され、エイズ発症率はさらに減少していった。

「治療薬の発展により、HIV患者の大きな負担となっていた服薬アドヒアランス(服薬順守)や副作用といった問題に劇的な改善が見られました。今年1月、米国ではCabenuvaという筋肉注射製剤が承認され、内服薬でない薬もついに利用可能となりました。この薬により、月一回通院して筋肉注射をするだけでHIVの治療が可能です。飲み忘れの問題を解消すると共に、患者のメンタルヘルス改善につながると期待されています。

これまで患者は毎日服用の際に薬のボトルを見て“自分がHIV患者である”という事実に向き合わねばならず、これが精神的な負担となっていました。日々の服薬から解放されることでメンタルヘルスにも寄与すると期待されており、将来的には日本でも承認される見込みです」(同)

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