サイゾーpremium  > 特集  > タブー  > 【NHK】に問われる真価

――第二次安倍政権の頃から、政権への「忖度」とも取れる報道姿勢が目立ち始めたNHK。今年2月には『ニュースウオッチ9』の有馬嘉男キャスターらの降板について、「週刊文春」が「菅政権の怒りを買って飛ばされた」と報じた。圧力や忖度は事実として存在するのか。そして公共放送は時の政権にどう対峙すべきなのか――。

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『変容するNHK――「忖度」とモラル崩壊の現場』(花伝社)

「月額で1割を超える思い切った受信料の引下げにつなげます」

 今年1月18日の施政方針演説で、菅義偉首相はNHKの受信料の引き下げをそう明言した。

 首相の施政方針演説にNHK受信料の値下げが盛り込まれるのは極めて異例のこと。なお受信料値下げは、昨年8月にNHKが発表した中期経営計画案には記載がないものだった。

 だがその後、武田良太総務相がNHKに対して繰り返し値下げを要請。NHKの前田晃伸会長は「週刊文春」(文藝春秋)の取材に対し、「国がやってる放送局じゃないんだから。手はつけられない」「報道機関に手を突っ込むのは普通じゃないよ。戦前じゃないんだから」と答えていたが、今年1月に発表した中期経営計画では受信料の大幅値下げに言及する形となった。

 なおNHKは、視聴者からの受信料を財源に独立採算制が取られる「公共放送」であり、総務省が所管する特殊法人。事業予算の決定には国会の総務委員会や本会議の承認が必要で、経営委員は衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣により任命される。その経営や番組編集方針に時の政権の意向が反映されやすい。そして民放の各局と同様に、その電波の許認可権は総務省に握られている。こうしたNHKと政府との関係が、「政治的圧力」ともいえる値下げ要求や、報道における「忖度」が生まれやすい構造を生んでいるのだ。

 そうした前提を踏まえた上で、本稿では昨今のNHKの報道・人事に見える政権への忖度や、NHKに本来求められる「公共放送」としてのあり方を探る。

 まず受信料の値下げについては、「やはり“菅案件”と考えるのが自然」とジャーナリストの小田桐誠氏は話す。

「菅―武田ラインで値下げを迫って実現し、国民に対してわかりやすい実績を提示するのが政権の狙いだったのでしょう。また自民党の支持基盤である高齢化の進んだ地方では、NHKの受信料の支払率が100%に近い。その支持基盤のためにも値下げにこだわったのだと思います」(小田桐氏)

 予算の提出~審議の時期は、NHKは政権に関わる報道に特に敏感になるとされている。『変容するNHK――「忖度」とモラル崩壊の現場』(川本裕司/花伝社)には「NHKには郵政相(当時)に予算を提出する1月から、予算が審議される3月までは、事実上、編成権がないんだよ」との広報部長の言葉もあった。

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