サイゾーpremium  > 連載  > 大石始の「マツリ・フューチャリズム」  > 大石始のマツリ・フューチャリズム【50】/【オンライン文化祭】のポテンシャル
連載
大石始のマツリ・フューチャリズム【50】

ネット空間独自の表現という可能性――オンライン文化祭のポテンシャル

+お気に入りに追加

――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!

2011_MF_10_PH_230.jpg
YouTubeには、東海高校記念祭2020テーマ曲「FESTIVAL」がアップされている。和楽器を用いたEDMな楽曲はSoundCloud上でも公開し、ダウンロードも可能と太っ腹対応!

 秋といえば、文化祭・学園祭シーズンである。こうした文化祭も戦後になって全国に浸透した“新しい祭り”のひとつであるわけだが、コロナ禍の今、文化祭にも変革が起きている。今回はその現状をレポートしてみたい。

 まず、文化祭の歴史を少しだけさかのぼってみよう。日本における文化祭の先駆けとなったのは、現在の東京都立小石川中等教育学校(当時、東京府立第五中学校)。1921年(大正10年)、初代校長である伊藤長七の旗振りによって同校初の文化祭である“創作展覧会”が開催されている。開催の目的は、生徒の創作意欲をかきたてるため。こうした文化祭が広く行われるようになったのは戦後のことで、全国的に定着したのは1960年代のことと思われる。

 学生同士で協力し合い、特定の作品や舞台を作り上げていくという文化祭のプロセスは、確かに祭りの準備と似ている。筆者は極めて暗い学生時代を送ったこともあって、文化祭に対して特別な思い出はないが、大学時代の学園祭は昼間から校内で酒を飲めるとあって、それなりに楽しかったと記憶している。通い慣れた学校の場が数日間だけハレの場となり、多少ハメを外しても許されるわけで、その点もまた祭り的といえるだろう。

 ちなみに、筆者が通っていた武蔵野美術大学では、彫刻学科の制作によるガチの男神輿と女神輿が毎年恒例の出し物となっていたが、今もその伝統は受け継がれている。「武蔵野音頭」と「エンヤコラセ」を歌いながら大学構内やその周辺を練り歩く習わしとなっているそうだが、毎年酔っ払っていたので、そんなことをやっていたとは知りませんでした。

 少々前置きが長くなったが、そんな文化祭の形も現在変容しつつある。新型コロナウイルスの感染拡大以降、学校教育のオンライン化が推し進められているが、当然のことながら文化祭もまたコロナ禍の影響を受けているのだ。

 ウィズニュースに掲載された記事「コロナで文化祭どうなるの?自力で全国調査した高校生の訴え」では、その現状が明かされている。東京都多摩地域の生徒会役員らで作る、多摩生徒会協議会が全国62校の文化祭開催予定状況について調査したところ、6月末時点で、オンライン開催およびリアルとオンラインの併用開催を見込む学校は39%にのぼり、文化祭を完全に中止する判断に至った学校は25%に達したという。

 この秋、そうしたオンライン文化祭が各地で行われているわけだが、中にはさまざまなアイデアを出し合って大規模なオンライン文化祭を成功させた学校もある。そのひとつが今年創立132周年を迎える中高一貫の男子校、東海高校(愛知県名古屋市)だ。こちらの文化祭(記念祭)は毎年2日間で1万人もの来場者でにぎわうことで知られるが、今年は9月26日と27日の2日間にわたってオンラインで開催。事前にクラスや部活が軸となって150本の動画を制作し、文化祭当日に公開された。

 動画の種類は多種多様だ。ダンスやDJプレイ、バンド演奏、映画や吹奏楽部のリモート演奏、写真部による展示、有志のグループによるヲタ芸なども披露された。また、今年のテーマが「祭り」だったこともあって、地域の祭り関係者に取材を行ってオリジナルの山車を制作。和風EDMのテーマソングも作られ、オリジナルのビデオクリップとしても公開された。

 文化祭当日はアクセスが集中してサーバーがダウンするなどのトラブルに見舞われたようだが、最終的には1万5000アクセスという目標を大幅に上回る2万アクセスを記録。校外からの注目も高く、各メディアで話題を集めた。

 東海高校の文化祭は、もはやリアル文化祭の代替えというよりも、オンライン文化祭独自の可能性を探るものといえるだろう。幼い頃からスマホやSNSに親しんできたデジタル・ネイティブな00年代生まれにとっては、リアルの場よりもネット空間のほうが自由に表現を繰り広げられるということもあるはずだ。なにより、自分たちの作品や表現が校外の人々の目に触れる機会ともなるわけで、これは公開範囲が校内に限定されたリアル文化祭にはない可能性ともいえる。

 東京府立第五中学校が日本初の文化祭である創作展覧会を開催してから来年でちょうど100年。文化祭という祭りのあり方もまた、時代の移り変わりとともに大きな転換期を迎えつつあるのだ。

大石 始(おおいし・はじめ)
旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」のライター/編集者。07年より約1年間をかけ世界を一周、08年よりフリーのライター/編集者として活動。国内外の文化と伝統音楽、郷土芸能などに造詣が深い。著書に『ニッポン大音頭時代』(河出書房新社)、編著書に『大韓ロック探訪記』などがある。新刊『ニッポンのマツリズム 盆踊り・祭りと出会う旅』(アルテス・パブリッシング)が発売中。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論
    • 音楽業界からの【賛辞と批判】
    • 【芸能プロ】的戦略が抱える2つの“矛盾”
    • 令和の【ジャニーズ・シングル】20選
    • 20年代のジャニーズ【ミュージックビデオ】

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

インタビュー

サイゾーパブリシティ