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第2特集
実録・狂気の関西ラップ【1】

Jin Dogg、WILYWNKA、孫GONG……実録・狂気の関西ラップ

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――“関西トラップ”や“DIRTY KANSAI”などと呼ばれ、近年、異様な盛り上がりを見せている関西のラップ・ミュージック。新型コロナウイルスの感染拡大が現在ほど騒がれる前、本誌は現地へと足を運び、このムーヴメントの狂熱を象徴するようなラッパーやクルー、コミュニティの密着取材を敢行した。これは、その生々しい記録である。

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大阪の〈club JOULE〉でのパーティ「TRAP TOWN」で狂熱のライヴを繰り広げたJin Dogg。フロアでは観客がモッシュを巻き起こした。

 2010年代後半より関西からユニークなラッパーたちが続々と現れ、全国的にも注目されている。本特集ではこの動きの実態に迫るが、まずは“関西ラップ”の歴史をざっと整理したい。 『ルポ 川崎』(小社)の著者で音楽ライターの磯部涼氏は、こう語る。

「首都圏で生活してきた僕の視点になりますが、90年代、大阪の故・DJ KENSAWが関西のラッパーたちをフィーチャーしたミックステープやシングル『OWL NITE』(97年)を出し、関西のアンダーグラウンドなシーンを認識した記憶があります。しかし、最初に強烈な印象を受けたのは、2000年代初頭に現れた韻踏合組合(以下、韻踏)です」

 大阪アメリカ村を拠点としたこのグループは、韻へのこだわりを特徴とするが、当時、現地で取材した磯部氏が特に惹かれたのはその密接なコミュニティだった。

「毎日のようにアメ村のクラブをハシゴしてライヴやフリースタイルをしていたし、アメ村のど真ん中に住んでいるメンバーもいました。また、周囲にはグラフィティ・ライターやダンサーが大勢いて、そうした環境はメンバーのHIDADDYがのちにヒップホップ・ショップ〈一二三屋〉を経営することにつながったと思います。同ショップは、若いラッパーたちをフックアップする役割を担ってきました」(磯部氏)

 ただ、彼らには“ライバル”がいた。米ヒップホップのトレンドを踏襲しつつ、歌の要素も取り込んで同時期に人気を博したDOBERMAN INC(現・DOBERMAN INFINITY)だ。漢 a.k.a. GAMIの自伝『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社)を構成したライターの二木信氏は、彼らのアルバム『MEGA CITY FIVE』(03年)を傑作と評した上で、こう話す。

「同作でほぼすべてのトラックを手がけた大阪出身のBACHLOGICは名を上げ、2000年代にヒップホップ界のトップ・プロデューサーとなりました」

 2000年代は、SHINGO★西成の存在も大きいと二木氏は述べる。

「1stシングル『ゲットーの歌です(こんなんどうDEATH?)』(05年)で出身地である西成の現実を歌い、ヒップホップの地図にそれまでなかった同地を組み込みました。日本語ラップにおけるゲットー・リアリズムの先駆的な曲でしょう。また、大阪弁をラップのフロウ(節回し)に落とし込み、ローカリティを表現しました」(二木氏)

 ゲットーといえば、京都・向島のマンモス団地出身のANARCHYもいる。2000年代半ばに過酷な生い立ちなどを描いたラップで注目され、やがてヒップホップ界のスターとなった。

 2010年代には全国的にフリースタイルMCバトルがブームとなったが、大阪出身のR-指定はその最高峰の巧者だ。

「彼は、07年に梅田駅前の歩道橋で始まった〈梅田サイファー〉(サイファーとは、複数人でフリースタイルをし合うこと)で腕を磨いたひとりです。その流れは、ここ何年かのバトル・ブームに直結しているでしょう」(同)

 現在にかけては、紙幅の都合で詳述はできないが、磯部氏は出身地の韓国を離れて大阪で暮らすMoment Joonや、ローカルな不良世界を描く17歳のEric.B.Jrを、二木氏は大阪弁で女性の強さを歌う大門弥生などを重要なラッパーとして挙げる。あるいは、本誌は昨年、ヤンキー・マンガのようなルックスのGOBLIN LANDを取材することがあった。このように注目すべき人物は多いが、本特集で光を当てるのは、在日コリアン3世のJin Dogg擁するレーベル〈HIBRID ENTERTAINMENT〉、孫GONGとJAGGLAによる“煙たい”ユニット・ジャパニーズマゲニーズ、甘いマスクの若きカリスマ・WILYWNKAだ。コロナショックが深刻化する直前の3月中旬、近年の“関西ラップ”を扇動する彼らに話を聞くべく、現地に向かった。

(編集部)
(写真/cherry chill will.)

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