サイゾーpremium  > 特集2  > 実録・狂気の関西ラップ【2】/ハイブリッドな【DIRTY KANSAI】

――“DIRTY KANSAI”なるムーヴメントを牽引する大阪のレーベル〈HIBRID ENTERTAINMENT〉。看板アーティスト・Jin Doggはライヴでがなるようにラップし、観客のモッシュを煽る。そんな狂気じみた表現で人気の彼が属するコミュニティの実相とは――。

2005_KANSAIRAP_P114-133_HIBRID_01_520.jpg
大阪・日本橋商店会にて〈HIBRID ENTERTAINMENT〉の面々。取材時にはYoung Yujiro、WARKAR、Jin Dogg、Lil YamaGucci、DJ BULLSETなどが集まった。
2005_KANSAIRAP_P114-133_HIBRID_04_320.jpg
大阪市生野区出身のJin Doggは在日コリアン 3世。2019年末には対照的な2つの1stアルバム『SAD JAKE』『MAD JAKE』を同時にリリースした。

 真夜中のフロアにウォール・オブ・デスが出現した。“死の壁”とは、ライヴの観客が左右に分かれて曲のイントロやフックを合図にぶつかり合う、いわゆるモッシュのヴァリエーションの中でも特に危険とされるもので、ルーツは1980年代のニューヨーク・ハードコア・パンク・シーンだという。その日、パンデミックの最中にあった大阪・アメリカ村のステージにいた男も、長髪に無精髭、ボロボロの黒いハイカットのコンバースと確かにパンク・ロッカー然とした格好だったが、しかし彼はほかでもない“ラッパー”だ。そして男はトラップ・ビートの地鳴りのようなサブ・ベースの上で叫ぶ。「シニ、ザラ、セ! オマ、エ! マジ、ウル、セェ!」。人の壁が決壊し、フロアで渦巻く。これがステージの男=Jin Doggが“DIRTY KANSAI”と呼ぶスタイルだ。

 アトランタで生まれたトラップは、もともとドラッグ・ディールについて歌うラップ・ミュージックを意味していたが、2010年代にかけて同ジャンルで使われるビートのスタイル――すなわちBPM60~70台のサブ・ベースとスネアに対して、8分から32分までの間を揺れ動くエフェクトがかかったハイハットという組み合わせ――を指す言葉となっていった。またそれはジャンルを超え、ポップ・ミュージックとパンク・ミュージックという相反する文化すら更新した。今やトラップ・ビートに合わせてポップ・スターが踊り、ウォール・オブ・デスが行われる。そして後者は日本の関西地区でさらに独特の進化を遂げる。その代表がJin Doggが所属するレーベル〈HIBRID ENTERTAINMENT〉だ。

在日コリアン3世によるエイジアン・ゴシック

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年11月号

サヨクおじさんが物申す 腐敗大国ニッポンの最新論点

    • 【青木理×川端幹人】ニッポンの最新論点

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

サイゾーパブリシティ