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「ファンキー・ホモ・サピエンス」【76】

『Star Trek: Picard』必ず訪れる終焉というもの。ファンキーホモ、最終回!

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『Star Trek: Picard』

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(放送:CBS All Access)
今回は音楽を扱っていないからドラマを。スコットランド系イングランド人のサー・パトリック・スチュワートは、発声も訛りも明らかにUKの俳優なのに、当たり役はフランス東部にあるワイン農家出身の宇宙艦隊士官ジャン=リュック・ピカード! 90歳を超えた彼が再び宇宙へ!

 プリンスが86年に発表したバラードに「Sometimes It Snows in April」がある。歌詞にいわく「人生が終わらなければいいのに、と思うけど/どんなよいことにも終わりがくるんだね」――というわけで、本連載も突然最終回なのであります。

 この連載が始まったのは2013年7月号。第1回は「人気ラッパーの改心。でもラスタの世界は厳しいぞ!」と題して、突如レゲエ・アーティスト〈スヌープ・ライオン〉に変身した頃のスヌープ・ドッグを取り上げた。

 とはいえ、そのアルバムについての言及はほとんどない。彼のバックグラウンドであるアフリカン・アメリカン・カルチャーと、彼が入信したラスタファリアニズム――レゲエのバックボーンのひとつである、ジャマイカ黒人版アブラハムの宗教――との溝について、特に食生活をメインにねちっこく語っていた。

 つまり、一応“音楽系連載”ではあるものの、「この曲が巷で流行しています」「このアルバムがとても素晴らしいです」等々、シンプルな音楽紹介をするつもりがまったく毛頭絶対全然金輪際なかった、ということ。そのアーティストのヘリテッジ、エスニシティ、バックグラウンド、アイデンティティ、そしてカルチャーとフィロソフィ――そういうものについて書きたかったのだ。

 こんな連載になった経緯には、ある原体験が影響している。昔、クリスティーナ・アギレラについて、日本盤発売元のレコード会社の人と交わした会話だ。

「前から気になっていたんです。アギレラという姓はめずらしいな、と。彼女は何系なんですか?」

「いや~、純粋なアメリカ人だと思いますけど」

 その尖った姓「アギレラ」がエクアドル系であることは、その後わかったが……それにしても、移民国家アメリカの音楽を聴いて育ち、その音楽に関わって生計を立てている人物がこんなに無知・無関心とは。さすが、八村塁が「外人やーん」といわれる日本だけはある。

 だから本連載ではミュージシャンたちの、ともすれば無視されがちな出自や文化を語ってきた。M.I.Aとスリランカ情勢、ジャネール・モネイとアフロフューチャリズム、ナイル・ロジャースとライトスキン(色白)信仰、ジョルジオ・モロダーと独伊同盟、等々。

 そうこうするうちに6年以上が過ぎ、顔面タトゥの若造ラッパーどもがSoundCloudで名を馳せる時代に。13年の時点では予想もできなかったことだ。

 ここでSFドラマの話を。『新スター・トレック』こと『Star Trek: The Next Generation』は87年から94年まで7年間、178話も続いた。その最終回のタイトルは「All Good Things...」。冒頭で触れたプリンス曲と同様、「どんなよいことにも終わりがくる」の意味である。

 しかし、同番組の主役ピカード艦長ことパトリック・スチュワートが復帰&主演する『スター・トレック:ピカード』というシリーズが、この20年1月から始まる。この事実の教訓は「一度終わっても、再開は可能」。そう、実は私も次号から新連載開始なのだ。それも本連載の発展的解消/拡大版とも言えそうな……。

 今回、私は本連載開始前の資料を掘り返してみて、もうひとつの連載企画書を発見した。いわく……

【ザ・レイシスト】ギターを弾くのがギタリストなら、人種を語る私は「レイシスト」だ! 世界から伝わるニュースの末端に転がっている、人種・民族がらみのネタあれこれ。自称「単一民族国家」日本に生きる我々がなかなか気づかない、そんな「重箱の隅」にこそ、現代社会のモロモロを読み解く鍵が詰まっているのだ! 21世紀になろうと、世界は人種と民族を軸に回っているのだから……以上。

 我が新連載は、前記の企画書に近いかもしれない。

 というわけで今号をもって「ファンキー・ホモ・サピエンス」を一旦終了し、次号からは音楽に限らず各界で活躍する著名人の多彩なヘリテッジを辿る内容で、リニューアルを図りたいと思う。

 アイデンティティとカルチャーを探る誌上世界紀行、タイトルは『バンギン・ホモ・サピエンス』でございます~。

まるや・きゅうべえ
1月は6日(月)と7日(火)が大阪、それぞれ『ゲーム・オブ・スローンズ』と『スター・トレック』をトーク。次週から東京、13日(月・祝)は中華圏R&B会【旧暦委員会】。

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