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更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【49】

『けもフレ2』の炎上を見て考える――幽霊、獣に成り果てたフレンズたち。

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――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

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テレビが映画を追い抜き、芸能界の趨勢すらも左右していた、華やかで邪悪だった時代の記録。今は巨大だけどみみっちい。

 前回に続いてピエール瀧逮捕絡みの話だが、電気グルーヴの楽曲販売や配信が自粛され、ワイドショーがバッシングを繰り返す状況に異議を唱えるべく、映像作家の宇川直宏が運営するライブストリーミングサイト『DOMMUNE』が電グルの楽曲を5時間ノンストップで流すDJ企画を行ったところ、『バイキング』の坂上忍が「誰も知らないサイトの売名行為」と嘲笑した。当然、ネット住民の間で大炎上したのだが、当の『DOMMUNE』は80年代の坂上が発表した「ロックな」楽曲を全曲集めて流すアンサー企画を行った。正直、吉川晃司や尾崎豊になり損ねた滑稽な音源なので、その過去を黒歴史にしてワイドショー司会者へ転向した坂上を嘲笑うだけの企画にもできたろうが、実際にはプロのDJの技術と解説で坂上の音楽活動を「知る」もので、音楽的にも「聴ける」企画に仕上げていた。80年代から各種サブカルチャー界隈で活躍してきた大ベテランの宇川が、大人の喧嘩で矜持を見せたと言えよう。

 しかし、同じテレビ対ネット住民の戦いでも『けものフレンズ2』の件は大惨事だ。もともと、新規IP創出を目的としたマイナーなメディアミックス企画のアニメ化である前作が予想外の大ヒットになったが、権利元であるKADOKAWAやテレビ東京と制作会社の対立に巻き込まれ、降板した監督のオリジナル新作と、別の監督を起用した続編が同じクールに放送される時点で火種が燻っており、続編が前作を否定するストーリーの上にクオリティも低かったことで前作のファンが炎上し、暴徒化したのだ。さらに、続編の関係者たちがSNS上で前作の監督を貶していたことが判明し、激怒したハードコアなネット住民たちが、彼らの公私に於ける悪行を次々と暴く私刑モードへ突入した。テレ東の担当プロデューサーは前作のファンをSNS上で皮肉ったことから大炎上し、反社会的勢力との繋がりまで晒し上げられ、左遷されている。真偽のほどはさておき、筆者の親族にもテレビプロデューサーがおり、平然と塀の上を歩くような同業者もいたと聞いているので、驚く話でもなかったが。木下惠介の戦後第一作で1946年度キネマ旬報1位の『大曾根家の朝』を手がけた松竹のプロデューサーの孫……興行師の一族の末裔がテレビ局で深夜アニメのプロデューサーというのもよくある話だ。メディア産業で金を稼ぐ者が映画からテレビへ転じるのも自然の流れで、目端の利く者はさらにネット側のWeb動画へ流れている。結果、ニコニコ動画の企画センスはテレビより古臭くなり、早々に衰退してしまったのだが。

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