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更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【50】

意識高い系を引っ掛ける洗脳術――幽霊、卑しき自己啓発本サロン商売。

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――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

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ロバート秋山の風刺が笑えるうちはまだ正気だと思うが、ビジネス自己啓発本はコカインより中毒性が高いので、ほどほどに。

 先日、幻冬舎が自社の看板タイトルである、百田尚樹『日本国記』を執拗に批判した作家・津原泰水の文庫化を中止し、社長の見城徹がSNS上で津原の実売部数を晒し上げた件は、アンチネトウヨとクリエイターの受難が結合し「錦の御旗」となる化学反応を起こし、見事に炎上したが、見城の舎弟分で自己啓発本オンラインサロン商売のカリスマ・箕輪厚介が文庫化を引き取った早川書房の塩澤快浩編集長にSNSで嫌味を言った後、謝罪し、早川の新刊の帯コメントを書いた茶番劇……大人の喧嘩を見ていて、見城が幻冬舎とパートナーシップを組んでいたNewsPicksを罵倒し、箕輪が右往左往した2月の一件を思い出した。

 NewsPicksと幻冬舎は2017年に業務提携し、箕輪の企画編集による堀江貴文『多動力』、前田裕二『人生の勝算』、落合陽一『日本再興戦略』など、ビジネス自己啓発本のヒットを連発していたが、ニューズピックス社が自社での書籍化を目論んでパブリッシングチームを創設したことから見城が激怒、親会社のユーザベースの株価も一時暴落した。それでも4月に自社編集へ踏み切った背景には、NewsPicksアカデミアという巨大な金鉱……オンラインサロンがあるからだ。月5000円の会費でITビジネス成功者たちの講演動画配信、限定イベントや交流会を提供することで意識高い系サラリーマンや学生を囲い込み、著書を売っていくクローズドなシステムが大成功したのだ。

 その結果、意識高い系の馬鹿界隈では、クラウドファンディングのCAMPFIREや、会員制動画配信サービスのニコニコチャンネルなどを使った定額課金型オンラインサロンが乱立している。ポスト箕輪的なビジネス自己啓発本から二束三文の情報商材まで、売りつけられるものは有象無象だが、いかにもな情報商材ビジネスに漂っている「貧乏人の一攫千金」的な雰囲気はなく、上手く回っている分には教祖を中心としたコミュニティの安心感に浸ることができる。オウム以降、衰退した新興宗教の代わりに、大学のサークル活動の延長や自分探しの受け皿として、これらのオンラインサロンは機能しているのだ。サークル活動というと騙し騙され、生き馬の目を抜くような同人誌の世界しか思いつかない筆者は、動画映りを気にしてダイエットに励むチープなカリスマを崇めるコミュニティで安心する感覚はまったく理解できないのだが。

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