サイゾーpremium  > 特集2  > 【モネ】の贋作で相続税逃れができる!?
第2特集
アートビジネスと"金"のキケンな関係【2】

村上隆はオークション落札額を操作した? モネの贋作を買って相続逃れ!アート・コレクター覆面座談会

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――美術品の売買は、こちらの記事で触れたサザビーズやクリスティーズのようなオークション以外の場でも行われている。また、アートのコレクションは、個々人の美的趣味を満たすためだけになされるわけではない――。実際のコレクターたちに“現場”の実情をぶっちゃけてもらいながら、アート・マーケットに渦巻くカネと欲望に迫っていきたい。

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『村上隆の五百羅漢図展』(平凡社)

【座談会参加者】
A 30代会社員
B 50代会社経営
C 60代会社経営

――まず、自己紹介をお願いします。

A 約10年前から、海外の若手作家を中心とした写真作品を買い集めていますね。1点10万円程度のものが中心。

B 30年くらい現代アートを集めていて、最近は国内や海外の若手による作品を購入しています。1点の価格は数十万~数百万円くらい。

C 最近はあまり買っていないけど、バブルの時代に日本画を集めていました。その頃に知り合った、日本画や骨董をコレクションする富豪も多いです。

B しかし、写真の場合は10万円くらいから買えるんですね。

A 写真のマーケットには、ロバート・キャパみたいなドキュメンタリー写真もあれば、現代美術の枠で扱われるアンドレアス・グルスキー、シンディ・シャーマン、杉本博司などのような写真もあり、後者は1点で億を超えることもありますが、写真の場合は作家が“エディション”というプリント制限数を決め、それに応じて価格が決まります。例えば、アラーキー(荒木経惟)は多作で、エディションを設けずに何枚もプリントするので、数十万円ほどで購入できたりする。

C 作品はどう購入していますか?

B 作家が所属する国内のギャラリーを通して買う場合もあるけど、最近は海外のギャラリーに問い合わせたり、アメリカの「アーモリー・ショー」のような国際的なアートフェアに出向いたりしています。あと、ネット・オークションでも買ったことがありますけど、自分が所要する作品をオークションに出して売ったことはないですね。

A 僕もギャラリーかアートフェアが多いですね。どこのギャラリーにも属していない作家の場合は、本人に直接連絡して購入する場合もありますよ。

――若い作家の作品を買うのは、将来、価格が上がったときに転売する――つまり“投資”目的でもありますか?

A 今のところ、それはあまり考えていないかな。アートや写真は保管も難しいし、転売するにも売値の2~3割をオークション会社に手数料として取られたりするし、誰も欲しがらない作品には値段がつかないので。投資の対象としては、株や不動産のほうが利回りがよくて、絶対に扱いやすいですよ。作品を買うのは好きな作家を支えていきたいという意味合いが大きくて、気に入った作品は手放したくない。

B 僕も、これから伸びるだろう作家を支援したいという気持ちが強い。現代アートの転売目的なら、ダミアン・ハーストやジェフ・クーンズみたいな“ブルーチップ(優良株)”と呼ばれる超有名作家の作品を買えば、多少の利益が出るかもしれないけれど、すでに評価が定まった作家の作品を買うことに面白さを感じないし、それには数千万円~億単位の資金が必要ですから。

A 現代アートのよく知られた作品は確実に億を超えるので、今の自分の年収でそんな作品を買うのは無理。ところで、節税のために美術品を購入するコレクターもいると耳にしたことがあるけど、どういうカラクリなのか……。

B 経費にできるのは100万円までと聞いたことがあるので、そこまで大きな節税効果はないんじゃないかな。

C 知人の富豪いわく、美術品は相続税逃れに最適らしい。例えば、オーナー企業が会社の備品として、価値の下がりにくいモネやルノワールみたいな印象派の2級品を1億円で買う。それを贋作にすり替え、本物は隠し資産として自宅に保管すれば、相続税は生じないし、何かのときに換金もできると。贋作のほうは、売らない限り偽物だとほぼ気づかれない。仮にバレたら、「ダマされた」と被害者ヅラすればいい。

女性作家にデートを強要!評判の悪いコレクターとは?

――なるほど。ちなみに最近、コレクターで気になる人はいますか?

A アースミュージック&エコロジーで知られるアパレル企業・ストライプインターナショナル(旧クロスカンパニー)の石川康晴社長は、現代アートのコレクターとして有名。2014年には自身のコレクションによる展覧会を東京オペラシティアートギャラリーで開きました。さらに、今秋、本社がある地元・岡山で行われる国際芸術祭「岡山芸術交流」の総合プロデューサーを務めるし、将来的には同地に現代美術館を建てると宣言している。

B ただ、石川氏は成り金趣味的に誰もが知るアーティストの作品を闇雲にコレクションするのではなく、現代美術の文脈を踏まえながら、ライアン・ガンダーやリアム・ギリックといった玄人好みの作家の作品を買っているとか。そんな彼のアドバイザーとなっているのが、TARO NASUというギャラリーの代表で、地元が同じく岡山の那須太郎氏だそうですね。

A 那須氏の本業は単にギャラリーのオーナーというよりも、作品を評価し、購入のコンサルティングを行うアート・アドバイザリー業なんですよ。つまり、コレクターが欲しい海外作品を日本に持ち込むための手段としてギャラリーを設けていると。

B 大林組の会長・大林剛郎氏、太宰府天満宮権宮司の西高辻信宏氏、眼鏡チェーン店のJINSを運営するジェイアイエヌ顧問の藤本幸三氏など、石川文化振興財団(石川氏が理事長を務める公益財団法人)の役員に名を連ねている有名コレクターも、那須氏のお客さんらしいですね。

A ああ、展覧会のために来日した海外アーティストのレセプション・パーティとかで、よく見かける人たちですね。彼らも投資というより、成功者として世の中に文化的な功績を残したいのでしょう。

B でも、評判の悪いコレクターも一部にはいますよね。ある若い女性アーティストの作品をたくさん買った見返りに、彼女にデートを強要したという話を聞いたことがあります。あと、よく作品を購入する作家を各パーティ会場などで常に引き連れているパトロン気取りのマダムもいたり。

A 世間的には最近、ZOZOTOWNの社長・前澤友作氏がバスキアの作品を史上最高額で落札したことが話題になりましたよね。彼はもともと音楽好きで、会社もCD輸入業から始まったことを考えると、一時期は音楽活動をしていたバスキアを買うというのは腹に落ちる。ネットの記事で彼のほかのコレクションも見たのですが、現代アートのいい作品を結構持っていますよ。バブル期の日本の成り金がルノワールを買ったのとは違って、ある程度、筋が通っていると思う。

B でも、現代アートのコレクションとしてバスキアはベタすぎでは?

C しかも、あの絵に62・4億円もの価値があるとは思えない。ただ、彼の場合、宣伝効果も狙ったのでは。世界に“お金持ち”と認知されれば、さらにビジネス・チャンスが広がるだろうから。純粋にあの作品が欲しいなら、自分の名前を出す必要はない。アートの買い方や持ち方を見れば、カネが目的か、そうでない深い価値を求めているのか、コレクターの人間性がわかるんです。パナソニック創業者の松下幸之助、出光興産創業者の出光佐三、ブリヂストン創業者の石橋正二郎のような日本の古美術や近代絵画、近世~近代の西洋美術に造詣の深い実業家は、今はいない。こうした企業の美術館には、本当に素晴らしい作品が収蔵されています。

B そういえば、僕の周りでは現代アートから古美術に流れていくコレクターが多いけど、何が魅力なのか……。

C 長い間、日本のマーケットで正統派の美術品とされてきたのは茶道具です。ただ、古美術の世界は閉鎖的で、いくらカネがあっても古美術商とのコネがない素人は、なかなか手に入れられない。しかも、さまざまな人が大事に受け継いできたものなので、所有するのに資格が必要だったりします。また、過去に歴史的な目利きが持っていたものの場合、さらに価値が上がったりする。つまり、古美術は所有すること自体がステータスになるんです。

蜷川実花の写真はアート市場で価値がない

――現存する日本人作家の場合、作品の価格はどう決まるのでしょうか?

B 価値が高騰した例としてよく挙げられるのは、村上隆ですね。08年にフィギュア作品がサザビーズのオークションで約16億円で落札されたけど、もともとの売値は数百万円だそうです。

C 当時、あれは仕込みじゃないかというウワサもありましたね。実際、そのニュース・バリューによって、村上作品の価値は格段に上がった。まあ、それはウワサにすぎないけれど、オークションでの価格は相場があってないようなもの。どうしても欲しいお金持ちが2人いれば、値は100億円でも200億円でも上がる。アートのマーケットは、たった数人によって価格が決まる、薄っぺらい世界なんですよ。

A 写真に関しては、杉本博司、畠山直哉、米田知子、横田大輔などは海外のアート市場でキャリアを築いてきたといえますが、日本国内で多くの仕事をこなす蜷川実花なんかは、海外のマーケットではどうでもいい存在で、世界的なアーティストとしては認められていない。彼女みたいに商業写真の世界ばかりで名前が売れると、アートの市場では“そっちの人”と見られるから、アーティストとして活動していくことは難しいんです。とはいえ、日本の写真家が作品だけで食っていくのも大変なことなので、名前を伏せて商業写真を撮っている人も結構いるらしい。

B 現代アートの場合、日本のマーケットはまだまだ小さいので、作家は世界で勝負することが重要。ただ、作品がどんなに素晴らしくても、作家ひとりだけでは世界に届かない。

A でも、世界に対する発信力は、日本の美術メディアにはほぼないですよね。かといって、イギリスの有名なアート雑誌「Frieze」に掲載されて作品の価格が上がるかというと、そうでもない。それよりも、かつてダミアン・ハーストやトレイシー・エミンなどを見いだし、自身の現代美術コレクションをサーチ・ギャラリーで展示してきた富豪のチャールズ・サーチみたいなスーパー・コレクターが購入したら、話題になるでしょうね。もしくは、MoMA(ニューヨーク近代美術館)やイギリスのテート・モダンのような有名美術館に収蔵されるとか。

B 日本にある現代美術ギャラリーの多くは、所属作家を世界に売り出そうという意気込みが感じられない。タカ・イシイギャラリー、MISAKO & ROSEN、Take Ninagawaあたりは海外でも話題に上るけど、その他のギャラリーはもっと作家を後押しすべき。せめて世界的なアートフェアである「アート・バーゼル」か、「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」「アート・バーゼル香港」「フリーズ・ロンドン」「フリーズ・ニューヨーク」のうち2つくらいには出展してほしい。

C かつての日本の画廊なんて、扱っている美術品を海外で売ることに全然関心がなかったけどね。言い換えれば、国内市場だけで十分回っていたということ。それが90年代になって、自身の名を冠した現代美術ギャラリーを運営する小山登美夫氏のようなギャラリストが、所属作家の作品を海外のアートフェアに出展するようになり、海外で作家の評価を高めるという手法を広めた。

B 欧米はコレクターの層の厚さも日本とは全然違いますからね。日本は展覧会の観客動員数は世界一といわれ、美術愛好家は多いけど、購入するまでにはなかなか至らない。一般人には美術品を飾ったリビングでホーム・パーティをしたりする習慣がないこととも関係しているのかも。そんな日本よりも、中国のほうがアート・マーケットは活発な印象があります。例えば、香港の鄭志剛(アドリアン・チェン)氏という不動産王が、09年に香港と上海でK11というショッピングモールと美術館を融合した施設をオープンし、アート・ファウンデーションを設立。中国の若手アーティストをグローバル・シーンに売り出そうとバックアップしています。日本でも石川氏や前澤氏みたいなお金持ちが、そういった活動をしてくれたらいいのに。

C 確かに。でも、日本で一番カネになってきたのは、実は日本画。国内市場に限った話ですが、昔から地方の資産家などに人気があり、高く売れる。そんな日本画の商売は、画商・画廊が儲かる仕組みになっています。例えば、作品が1億円で売れた場合、画家に入るのは2000~3000万円程度。絵を買うお金持ちは決して多くないので、それくらい利幅がないと、画商はやっていけません。洋画家や現代美術家なんかには、そういう事情をわかっていない人が多くて、作品が1千万円で売れたら「800万円くれ」と要求したりすることも。でも、画商はそれでは儲からないから、だんだんその作家の作品は扱わなくなり、必然的に市場での存在感は薄れていく。一方で、日本画家で文化勲章受章者の故・平山郁夫の作品は数億円で売れるといわれるので、画商は彼に足を向けて寝られません。要するに、画商は作品がいいから売るんじゃない、儲かるから一生懸命売るんです。

A あぁ、結局は作品の良し悪しよりも、カネということなのかな……。

(構成/安楽由紀子)

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