――DJがレコードをゲームに持ちかえ"電源不要遊戯"の楽しみ方を伝授!
『むかつく友達、行きたくないパーティ』は日本版がないので、筆者自らシールを貼って日本語化。
人生は思春期を起点にねじ曲がり続ける。奇才フリードマン・フリーゼによる『むかつく友達、行きたくないパーティ』(『Fiese Freunde Fette Feten』)は、10代に始まるさまざまな苦難を経て、喫煙、飲酒、麻薬、宗教といった業を背負い、人生の浮き沈みを経験するシミュレーション・ゲームです。「あなたはいろいろな友人や知人とかかわって成長します。思春期の学校で、田舎のナイトクラブで、街中の掃き溜めで」……髪を染めたり、失恋したり、お酒やそれ以上のものに溺れたりの青春時代が終わると、実人生へ。パーティを開いたり、悪い遊びを覚えたり、離婚したり。痛いほどリアルなこの人生ゲームでは、特にSEXが重要イベントなので、お子様とのプレイは難しいですかね。人生の目的を5つ達成したら勝ちですが、それより過程を愉しめるかどうか。
世界観を独特のタッチで決定するのは、フリーゼ作品を多く手がけるイラストレーター、マウラ・カルスキー。米国のオルタナティブ・コミック……アート・スピーゲルマンの「RAW」とか、ロバート・クラムの「Weirdo」とか、中でもダニエル・クロウズあたりのテイストに近いかな。悲惨でブラックユーモアがきついが、読後感としては切なさが際立つ。と思っていたら、ファンサイトのインタビューに、10代の頃、パンクの同人誌を制作したとか、ボードゲームにECコミック【注:40~50年代に米国で怪奇、恐怖、SF物のマンガを出版。後に「MAD」】の要素の導入を試みた等の発言があり、ニンマリ。まぁ、人生いろいろあるけど、こんなゲームに付き合う友人がいる自分はまだいいほうか、とプレイ中に空を見つめる。そんな作品です。ではまた、どこかで。
MOODMAN(むーどまん)
DJ。高橋透、宇川直宏とタッグを組んだGODFATHER, HOUSE OF LIQUIDをはじめ各種パーティでレジデントを務める。最新ワークは、うつくしきひかり「針を落とす」のリミックス(7インチ)。