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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【28】

京都毒婦事件発覚の裏にある警察による“死因特定運動”

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

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「青酸化合物で夫殺し!?」
13年12月、京都府向日市の自宅で死亡した筧勇夫さんの遺体から青酸化合物が検出された。14年11月、京都府警は妻の千佐子容疑者を殺人容疑で逮捕。これまでの調べで、同容疑者は、複数の高齢男性と交際・結婚を繰り返し、うち5名の男性と短期間で死別、総額約8億円の遺産を相続していたことや、12年にバイクで転倒死した内縁関係の男性からも青酸化合物が検出されていたことなどが判明した。

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『毒殺者』(文春文庫) 

 2013年12月、京都府向日市で、夫(当時75)を青酸化合物で殺害したとして、14年11月に妻の筧千佐子容疑者(67)が逮捕された事件。警察によるこれまでの調べで、同容疑者が結婚相談所で知り合った高齢男性と交際・結婚を繰り返していたことや、少なくともそのうちの5名が交際・結婚後半年もたたずに死亡していたこと、さらには同容疑者が総額約8億円にものぼる遺産を相続しながら、株やFXへの投資の失敗によって逮捕時1000万円以上の借金を抱えていたことなどが明らかになりました。

 これらを受けてメディアは、98年に和歌山県和歌山市で発生した”毒カレー事件”犯人の林眞須美死刑囚や、09年に首都圏で複数の交際相手を練炭自殺などに見せかけて殺害したとして逮捕された木嶋佳苗被告らを引き合いに出し、あたかも彼女らを上回る”毒婦”が現れたかのごとく騒ぎ立てています。

 一般に、”遺産・保険金目当ての殺人”というと、それらを題材とする数多くの小説やドラマなどの影響もあり、冷酷で狡猾な犯人によって周到な計画のもとに遂行される犯罪、というイメージが定着しています。また、それだけに社会の注目は、前述の2つの事件がまさにそうだったように、どうしても犯人の人物像や犯行内容といったミクロな側面にのみ集中しがちです。

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