――芸能界を去るイケメンのセカンドライフはどこに? 西森路代が"元イケメン芸能人"のその後を追う!
『佑樹―家族がつづった物語』(小学館)
サッカー界、フィギュアスケート界など、スポーツ界にもイケメンがいれば、ファンもいる。こうした現象は、最近に始まったことではない。80年代、早稲田実業の荒木大輔は甲子園でアイドル的人気となり、ヤクルトに入団するや否やCMに出演。「好きよ、好きよ、大輔くん」とアイドルが歌うそのCMは、あきらかにイケメン性を消費するものだった。そして、2000年代、同じ早稲田実業の斎藤佑樹もまた、アイドル的人気を誇った。
しかし、こうしたアイドル的な人気には常に「ちゃらちゃらしやがって」という目線もつきまとい、故障や不調になると「ほれ見たことか、実力とルックスは別物なのだ」と見られやすい。
そんな空気は、そうした選手を応援する女性たちにも影響する。顔で選んだと思われたくないために、「私は彼のプレイが好きなだけで、顔でファンなのではない」とわざわざ宣言する人も多いのだ。
こうしたファンの心性は、実はスポーツに限らない。バンドでもアイドルでも、何か技術的な面を自分は評価している、というエクスキューズがあって初めてファンであることとのバランスがとれるという女性たちは存在する。
そこで考えると、ご当地女性アイドルは乱立しているのに、ご当地男性アイドルはあまりいないのはなぜだろうか。そこには、技術的な軸がないと男性を評価できないという心理が関係ありそうだ。男性のご当地アイドルも増えつつあるとは聞くが、女性アイドルよりも圧倒的に少ないのは、高校野球などの技術を持ったプロ予備軍がその代わりをしているのかもしれない。
男子をアイドルとして評価するときに、どうしても内面的なことと結びつけないと応援する側も応援される側も心地が悪いという事実は、意外と指摘されない部分なのである。
西森路代(にしもり・みちよ)
1972年、愛媛県生まれ。フリーライター。アジア系エンタメや女性と消費に関するテーマなどを執筆。著書に『Kポップがアジアを制覇する』(原書房)、『女子会2.0』(共著/NHK出版)など。