サイゾーpremium  > 特集2  > 精神科医が語る【Fukase】のADHDと"闇"
第2特集
SEKAI NO OWARIはなぜイタい!?【4】

ADHD? それともアスペルガー? 精神科医が読み解くFukaseの"病理"

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――セカオワのキーマンであるFukaseの人となりを考えるとき避けて通れないのが、10代後半で経験したという精神病院への入院と、その際に下されたという「ADHD」という診断だ。過去のインタビュー等で度々語られてきたこうしたエピソードを我々はどう考えればいいのか? 発達障害にも詳しい現役の精神科医に分析してもらいながら、Fukaseの病理を丸裸にする!

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 セカオワを考える上で、決して避けて通ることができないのは、Fukase自身の生い立ち――とりわけ、10代後半で経験した精神疾患と精神病院への入院だろう。そこで本欄では、『発達障害と生きる どうしても「うまくいかない」人たち』(講談社)などの著作もあり、豊富な臨床経験を持つ昭和大学医学部精神医学教室教授の岩波明氏に、現役精神科医としての見解を語ってもらった。詳細は上の各論に任せるとして、そもそもFukaseが診断されたという「ADHD」(attention deficit hyperactivity disorder、「注意欠陥・多動性障害」)とは、どんな病気なのか?

「多動・衝動性と不注意を特徴とする発達障害の一種です。もともとは脳の微細な器質的障害によって発症するとされていましたが、最近では他の精神疾患と同様、神経伝達物質の機能障害と考えられています」

 ある統計では、子どもの罹患率は全体の5%、大人でも3%というADHD。ただ、その症状は人によって幅があるという。

「多くの人は特に治療せずとも社会生活をやっていけているので、病気と性格の境目ぐらいのものだということも可能です。基本的に知的障害との関連性はないので、クリエイティブな職業についている人もいます。ADHDの症状を、自らの知能の高さやこの病気の特徴のひとつである過集中――異常なほどの集中力を発揮することによってカバーしてしまうことも多いのです」

 ちなみに、Fukaseが書く歌詞を見て、岩波氏は次のような感想を持ったという。

「ひと通り歌詞を読んで思ったのは、彼が常に死を意識しそれと対峙しているということです。さらにいえば、自殺を想起させるようなテーマを持つ歌が非常に多い。それがADHDと直接結びついているとは思えませんが、誰か身近な人が自殺した経験があるとか、あるいは自身が強い希死念慮を持った時期があった可能性を感じます。それは病気との直接的な関連というよりも、現実世界に強い不適応を起こしメンタルダウンした実体験が、重要な精神的な"核"として彼の中にあるように思います」

 現在、人気絶好調のセカオワ。彼らは今後、どうなっていくのだろうか?

「このバンドは、天才肌のFukase君と、それを受け止められるSaoriさんという2人の微妙な関係で成り立っています。逆にいえば、その関係が破綻したら一気に崩壊する可能性もある。そういう意味では、短命に終わるかもしれません。でも、彼自身も『そこで燃え尽きてもいい』というくらいの気持ちでやっている印象もあります。その純粋さが彼の表現の魅力であり、若者たちを惹きつける理由でもあるのでしょう」

(文/麦倉正樹)

インタビュー発言と歌詞からセカオワFukaseを"精神分析"

――本文でも登場した精神科医の岩波明氏に、Fukase発言と彼の歌詞を分析してもらった。あくまでも「発言と歌詞から見えてくるFukase像」なので、あしからず。

■ADHDというより読字障害!?
【1】「幼少期」

「小学校4年生の時に初めてラブレターをもらって。で、嬉しくてなんとなくクラスのみんなの前で読んでみたんです(笑)。そ~れがも~お、大変なことになっちゃって、女の子は泣きながら出ていっちゃうし、何がいけなかったのか全然わかんなくて」
「ロッキング・オン・ジャパン」12年8月号より

[解説]小学生の頃から目立つタイプで女子人気も高かったというFukase。しかし、奇行の類も多かったようだ。そして、利発でありながらも勉学に関しては小学校時よりまったくダメで、中学時代にはオール1の成績を取ったこともあるという。
[岩波氏コメント] 幼少期のエピソードを見ると、ADHDの症状ははっきりしません。むしろ別の発達障害であるアスペルガー症候群の傾向があるようです。特に皆の前でラブレターを読み上げるなどといった"空気を読めない"行為は、アスペルガーを示唆します。ADHDもアスペルガーも基本的に知的障害は伴いませんし、彼のインタビューからは非常にクレバーな印象を受ける。そこから考えると彼は、学習障害の一種で、文字の読み書きにのみ困難を抱えるディスレクシア(読字障害)であった可能性もあります。この障害は、ダ・ヴィンチなど天才肌の人にしばしばみられる症状です。

■非常識なFukaseと、常識的なSaori
【2】「Saoriとの出会い」

「(Saoriの存在は)大きかったと思いますね。(略)考えて得てきた答えを、真面目にずうっと聞いてくれたのが彩織ちゃんだったから」
「ロッキング・オン・ジャパン」
12年8月号より

[解説] もともと知り合いではあったが、初めて話したのは中学生の時という2人。別の高校に通うようになってから逆に一気に距離を縮め、「死刑論についてどう思う?」などの哲学的な問答を一日中続けることもあったという。
[岩波氏コメント] Saoriさんとの出会いは、身近に理解者であり信頼できる「同士」ができたという意味で、非常に重要なエピソードでした。発達障害の人は、常識を超えた行動をしばしば起こします。「なんでそんなことするの?」「なんでそんなこと言い出すの?」ということを平気でやってしまうことが多いのです。普通はそこで周囲から叱責され関係が悪化するのですが、彼女は彼の行動を無条件に受け入れた人でした。Saoriさんのインタビューを読むに彼女は非常に常識的な人なのだと思いますが、そうだからこそ、彼の非常識なところに惹かれたのかもしれませんね。

■うつ病で自殺リスクが高まった?
【3】「精神病院への入院」

「ある日、いつもの病院とは違う病院に行こうってことになって行ったら、そこは鍵が自動で閉まる病院でしたね。さらにその病院の奥には、真っ暗な檻があって監視カメラがあって(略)そんなお仕置き部屋みたいなところに入れられて。そこに1ヶ月ぐらい入院して」
「ロッキング・オン・ジャパン」12年8月号より

[解説] 留学先のボストンで倒れたFukaseは、そのまま帰国し、入院。1カ月ほど閉鎖病棟に入院していたという。そのとき同時に出された診断は「ADHD」。退院後も通院を続けるが、病院で投与された薬の影響で身も心もボロボロになったという。
[岩波氏コメント] 精神科に入院の必要があったとすれば、非常な興奮状態にあるか自殺の危険が高いかのどちらかでしょうが、彼の場合は留学をきっかけに発症したうつ病に近い状態で、自殺のリスクが高かったのではないかと思います。その後ADHDと診断されたとのことですが、ADHDはリタリンやコンサータなどの投薬によって劇的に症状が改善します。しかし彼の場合、投薬後もあまり回復したようには見えないし、服薬もやめています。この点から、ADHDという診断には疑問を感じますね。

■カリスマ性を帯びたトリックスター
【4】「Club EARTHでの共同生活」

「みんなで隠れ家みたいな、基地みたいな、たまり場みたいのを作るのが夢だったというか。僕、その当時あんまり眠れなかったんですよ。眠れないし、学校にも行ってなかったから、ひとりの時間が結構多かったんですよね。だから、とにかくみんながいる場所みたいなのがすごい安心するだろうなと思ってたし」
「bridge」11年1月号より

[解説]バンド結成前から、自分の居場所を作るため、彼の地元である東京・大田区内に自ら物件を借りて改装、手作りでライヴハウスを作ってしまったというFukase。そこで現在のメンバーを含む仲間たちと寝食を共にする共同生活を始める。その生活は現在も続いているという。
[岩波氏コメント] 発達障害を持つ人には対人関係の問題がしばしば見られる一方、よい理解者とは緊密な小グループを形成することがあります。Fukase君はある種のカリスマ性を持っているので、その集団は、小規模な新興宗教の教団に近いところもあるのかもしれません。ただ、その中で彼は教祖様なのではなく、むしろ、"トリックスター"なのではないでしょうか。トリックスターとは、聖なる領域と現実の世界を行き来し、正常な世界をかき乱すことによって新たな秩序を作りだすという役割を持つ者を指します。

■ユング的な「元型的社会」におけるアニマ
【5】「"眠り姫"などの歌詞世界」

「ある朝 僕が目を覚ますと/この世界には君はいないんだね/驚かそうとして隠れてみても/君は探しにこないんだ/Ah 君はいつの日か/深い眠りにおちてしまうんだね/そしたらもう/目を覚まさないんだね」
12年5月発売のメジャー3rdシングル「眠り姫」より

[解説]バンド名でもある「世界の終わり」というイメージと並んで、「幻の命」「死の魔法」(共に10年)、「眠り姫」など、Fukaseの書く詞には、死のイメージが頻繁に登場する。しかも、「いつか来る遠い死」ではなく、「生者の隣にある死」「愛しい人の死」といったものが繰り返し語られるのである。
[岩波氏コメント] 「眠り姫」の歌詞世界は非常に重層的です。ひとつは「ぼく」と「きみ」が存在するリアルなレベルの話。それが徐々にファンタジーの世界に移行していくわけですが、この曲は、さらにその上の階層、ユング心理学でいうところの「元型的世界」というか、ある種霊的な次元にまでたどり着いている。この元型の世界は、彼の内的な世界でもあり、その中で「きみ」は彼のアニマ(心的世界における女性性)を表象しています。つまりこの曲は、自らのアニマを抹殺するという悲劇的な内容にもとれるわけです。

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