サイゾーpremium  > 特集2  > 【セカオワMV】から見る"虚構"を演じ始めたメンバーたち
第2特集
SEKAI NO OWARIはなぜイタい!?【3】

“プロモーション”ビデオとしての正解がここに――SEKAI NO OWARIというサーカスへの没入

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――ミュージシャンにとって、楽曲と共に発表されるミュージックビデオは、自分たち自身や楽曲の世界観を伝えるために欠くことのできないツールだ。ことに、現在のようなYouTube時代にはなおのこと。それでは、セカオワのMVには、いったい何が映し出されているのだろうか?

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■3曲を1作に、世界観をトリックでつなぎ合わせ
「INORI」
「花鳥風月」「不死鳥」「Never Ending World」の3曲を収録したトリプルリードシングル「INORI」のMVとして、11年8月に発表。CHEMISTRY、RADWIMPSなどを手がける須藤カンジ監督作品。

ノスタルジックなお祭りを背景に演奏する「花鳥風月」。ピエロのお面をかぶった少年の動作をモーフィングでデフォルメした「不死鳥」。ストリングスを招いたレコーディングの風景をドキュメンタリーとして記録した「Never Ending World」。異なる表現手法を用いたそれぞれの世界観を1コーラスずつ切り取り、その狭間を、映像を映すモニターが落下したり、逆再生して時間軸を操作したりするトリックによってつなぎ合わせたMV。

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■夢と現実が交錯する世界の萌芽がここに
「スターライトパレード」
11年11月発表。clubEARTHを共に作った仲間であり、セカオワのアートワークを担当するEARTH Company所属のアートディレクター・佐藤央一が監督を務めた。

星の降る眠れない夜。赤いパーカーを着たボーカル深瀬慧は部屋を抜け出し、夜道を自転車で疾走する。たどり着いた野外ステージでは白シャツ姿の深瀬以下、SEKAI NO OWARIがライブ演奏中。熱狂する観客と共に客席でライブを見守り、笑顔を見せる赤い深瀬だったが、最後にはステージへ。ライブシーンがメインながらも、夢と現実、2人の深瀬が交錯するファンタジックな世界観を「CAN'T SLEEP FANTASY NIGHT」のサインが誇張する。

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■宮﨑あおいのかわいすぎる死神
「眠り姫」
12年5月発表。宮﨑あおいが出演している関係か、YouTube公式チャンネルではこの曲のみショートバージョンが公開されている。初回限定版1パターンのみにフルバージョン収録DVDがついた。

双方共にお互いのファンを公言するSEKAI NO OWARIと女優の宮﨑あおいが相思相愛コラボ。観客を入れた正装のライブ演奏シーンに加えて、黒衣に鎌を携えた出で立ちの宮﨑扮するかわいすぎる死神が深瀬の元に舞い降り、恋愛感情が生まれて葛藤するストーリーがインサートされていく。眠ったまま二度と目を開けない彼女を想像する歌詞とは男女設定を入れ替えた脚本は、演出を手がけた映画監督の藤村亨平監督とメンバーの共作。

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■きゃりーぱみゅぱみゅMV手がける監督との作品
「RPG」
13年5月発表。きゃりーぱみゅぱみゅのMVをデビュー以来手がけてきた田向潤監督と初タッグ。ダンスシーンは注意して観ていると、お面をかぶったダンサーが代役を務めている部分がわかる。

きゃりーぱみゅぱみゅのMVが人気の田向潤監督作品。動物のマスクをかぶった子どもたちのマーチングバンドと共に演奏するメンバーが、ダンスにも挑戦するという企画だったが、なんと、撮影直前にFukase氏が足を骨折するというアクシデントが。予定を変更して椅子に腰掛けて歌ったり、杖をついたり、ダンスシーンを合成編集したりと、創意工夫を凝らした結果、ファンタジーの要素がより強く深まる、摩訶不思議な世界観へと昇華した。

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■田向監督の手法とセンスが色濃く映る
「スノーマジックファンタジー」
14年1月発表。前作に続き田向監督との作品。「JR SKI SKI」CMソングとなり、DJ LOVEが「ぜんぶ雪のせいだ」というコピーと共にティザーポスターに起用され、話題を呼んだ。

前作に続き、行進曲を彷彿とさせるドラミングが印象的な本楽曲。FIXアングルで撮影されたMVには、鍵や時計といったシンボルに加え、各メンバーの率いる鼓笛隊、チアリーディング、チェリスト等が登場。人体のサイズや天地の位置を自由自在に変化させ、合成レイアウトする手法には、田向監督が独立以前に所属していた、感覚的なMVを多数輩出してきた映像クリエイティブチーム・CAVIARで培ったモーショングラフィックスセンスの栄養の現出が窺える。

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■頻出モチーフ"鼓笛隊"が象徴するもの
「炎と森のカーニバル」
14年4月発表。3作目となる田向監督作品。前年末に行われた同タイトルのライブから続く「森の宴」という世界観が踏襲されている。

炎の色、赤の衣装を纏ったメンバーが、雪の残る真夜中の森を歩く様子をワンカット撮影。道中を賑わせるバレリーナ、大道芸人、近作のMV群にて必ず登場する鼓笛隊といった出演者陣がカーニバルの臨場感を際立たせる。特に鼓笛隊は、ビジュアルアプローチのみならず、SEKAI NO OWARIの現在の音楽性、エンターテインメント性、存在そのものをシンボライズする機能を果たしている。最後は出演者全員が踊るダンスシーンで大団円。


SEKAI NO OWARIは、いつからSEKAI NO OWARIという名のサーカスでピエロを演じるようになったのか。「眠り姫」以前のMVは、等身大の魅力を伝えるライブ演奏を中心に、楽曲の世界観に寄り添うファンタジックな彩りを加えながらも、決して虚構的にはならないリアリティを維持していた。DJ LOVEのピエロのマスクも極端に突出することなく、バンドの存在感にひねりを加えるスパイスとして機能していた。それが「RPG」以降は一転し、メンバー全員が自らの存在を象徴的なマスクではない本物のピエロに寄せ、SEKAI NO OWARIという名のサーカスの舞台で、等身大の自己とは異なる「本人役」のキャラを過剰に演じ始めた感がある。本人が「本人役」に陶酔感をもって没入し、高揚するほどに、現実に寄り添うファンタジーから歌詞やメッセージの現実味が欠落。「虚構的な現実」の倒錯感が強調される。もっとも現在は、ミュージカルのような過剰演出を施したMVが小中高生に支持される。よって近3作はプロモーション・ビデオという販促ツールの作り方として正解であり、その人気は不安な現実やリアリティに正対したくないあまりに、倒錯的な虚構に没入したい若者が増えた世相の反映なのかもしれない。

林 永子(はやし・ながこ) 
映像ライター。元「Tokyo Video Magazine VIS」編集長。MVを中心とした映像カルチャーを支援するべく、ライター、コラムニスト、イベントオーガナイザー、司会として活動中。

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