――若手女流詩人が読み解くアイドルたちのコトバ
ファンの間では「がんばり屋の不思議ちゃん」としても知られる生駒ちゃん。
ひと言質問していいですか?
私のこと知ってますか?
――生駒里奈(乃木坂46/AKB48)
詩人の私だが、最近アイドルにまつわる言葉が気になって仕方ない。「女の子」を演じる彼女たちの発言が、ときに勇ましく響くのはなぜだろう。中でも生駒里奈は気になる存在。乃木坂46の人気メンバーでありながら、ライバルグループのAKB48を兼任することになった彼女。初参戦の総選挙では速報56位から大躍進し、14位の選抜入り。きょとんと驚いた表情が印象に残った。スピーチで飛び出した件のひと言は、「乃木坂46を知ってほしい」という願いにも聞こえた。その素朴な問いかけに、私も「知ってみようかな」と惹かれた一人。というわけで、彼女に宛てて詩を書いてみました。ちなみにサイゾー初登場ですが、私のこと知ってますか……?
「きざし」
背負います、わたし。
もう一歩も動けないと
身体はひととき泣いたとしても。
理由があるからここへ来た、
そう信じさせてください。
立たせてもらったこの場所で
見えてきたはじめての景色。
渦の中に迷い込んでいたけれど、
ひとり取り残されたわけじゃなかった。
一緒に歩いてきたのです。
新しく出会う人たちは皆
わたしのことを知らない人たち。
きっと驚かせるでしょう。
はじまる予感がするでしょう。
生きる「きざし」となって
きみの胸に残りますように。
最果てまで届け。
「わたしのことを知っていますか」
文月悠光(ふづき・ゆみ)
1991年生まれ。詩人。高3で発表した詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で中原中也賞を最年少受賞。講談社主催「ミスiD2014」で"ポエドル"として話題に。全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読などで幅広く活動中。