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丸屋九兵衛の音楽時事備忘録「ファンキー・ホモ・サピエンス」【14】

【ボーン・サグスン・ハーモニー】――さらば、歌う悪党軍団!その名に秘めたホネ信仰

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人類のナゾは音楽で見えてくる! ブラックミュージック専門サイト「bmr」編集長・丸屋九兵衛が”地・血・痴”でこの世を解きほぐす。

『Uni5: The World's Enemy』

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ボーン・サグスン・ハーモニー(発売元:ワーナーミュージック)
件の最終作『E.1999 Legends』は来年発売予定なので、ここでは今のところ最後の5人作、2010年のアルバムを紹介。その3年前の『Strength & Loyalty』がボンサグ本体3人に対して豪華客演過多で散漫な内容だったのに比べ、本体5人と身内ゲストで固めた本作は、地味ながらもソリッドな手応え。5人揃えばこそ、の歌心応酬も美しい。

 屌という漢字がある。これは、「クール」「オーサム」「かっこいい」を表す台湾俗語だ。

 しかし! 本来はこれ、男性の陰部を意味する漢字だったという。けしからんことに、それが転じて、なぜか「かっこいい」の意味になり、今では原義がほとんど意識されずに頻用されているようだ。なんて無茶な……とは思うが、似たような話があるのだよ。英語でも。

 多くの哺乳類が陰茎に骨を備えている。実は、霊長類も例外ではない。なのに、なぜか我々ホモサピエンスだけは、その部分が骨で支えられていないのだ。嗚呼、それなのに骨と見紛うがごときハードな状態となったそれ。そんなブツを、敬意を込めて彼ら(主にアフリカン・アメリカン)は呼ぶのだ、「ボーン」と。

 この”bone”は、動詞として「セックスする」の意味にもなっているが、それ以外にマリファナも表す。つまりヒップホップ観点で非常に有用な単語であり、「かっこいい」というニュアンスがあるのだ。

 掛け言葉をすべて汲み取るのは無理だが、サラッと意訳するならば……そのグループ名は、「仲良し スケベ悪党軍団」とでもなろうか。そんなボーン・サグスン・ハーモニーについて語ろう。

 通称「ボンサグ」は、90年代半ば、全米音楽界に衝撃を与えたグループである。クレイジー・ボーン、レイジー・ボーン、ビジー・ボーン、ウィッシュ・ボーン、フレッシュン・ボーンの最大5人組で、出身地は寒風吹きすさぶオハイオ州クリーヴランド。だが、彼らがシーンに登場した90年代半ば、日本の音楽メディアはアメリカの地理に関して無知だったので、彼らボンサグは「カリフォルニアのラップ・グループ」と見なされていた。ま、西海岸ギャングスタ・ラップの本家本元的グループ「NWA」のリーダー、イージー・Eに憧れ、彼と接触してデビューに至ったので、確かに「西海岸経由」ではあるがね。

 とはいえボンサグの芸風は、それまでの西海岸ギャングスタ・ラップとはだいぶ違う。明らかに一線を画していたのは、半ば歌い、半ば早口で畳み掛けるような、彼らのラップ/シング・スタイルだった。

 当時のサウンドは、シャカリキに踊りまくっていた90年前後のニュージャック・スウィング時代から一転し、遅めのビートで自然に体を揺らす「Rケリー」モードに移行。ボンサグのスタイルは、そんな時勢に対応した、新たなヒップホップの雛形となった。のみならず、後にRケリー自身が模倣したことで、R&Bの歌唱法にも影響を与えた代物でもある。

 特に、96年のシングル「Tha Crossroads」は別格だった。急逝した師イージー・Eに「あの世で会いましょう」と語りかける、美しいメロディアス・ラップ/シング曲で、『ビルボード』誌のHOT 100チャートで1位に輝く。それも、並外れた急上昇ぶりで、ビートルズ某曲と並ぶ最速記録となったほどだ。

 しかし、いいことばかりは続かない。まずはビジー・ボーンが「ビデオ撮影に来ない」などの奇行癖を発症。そして、兄貴分フレッシュン・ボーンの長期服役。奇行続きのビジーが脱落して3人体制でのリリースもあったが、フレッシュン・ボーンの出所を記念してビジーも復帰、久しぶりの5人体制で以降は末長く!と思いきや、メンバー間のバランスが崩れたのか、今度はクレイジー・ボーンとウィッシュ・ボーンが離脱し、フレッシュン兄貴が「世の中、多数決じゃい」と息巻く……こんなことの繰り返しで、ウチのサイト(『bmr』)でも、「逮捕、服役などの問題が続き、なかなかオリジナル・メンバーの5人全員が揃わないことでも知られる」という一文を枕詞に使っているくらいである。

 しかしボンサグは、そんな紆余曲折に自ら終止符を打つことにしたらしい。来年に出すアルバムを最終作とし、同アルバムは世界で1枚しか作らず、最低価格100万ドルでオークションにて発売する、という。

 しかし! この「世界で1枚きりのアルバム」という方式は、少し前にウータン・クランが発表したのと同じやんか!こんなパクリを有終の美と呼んでいいのかどうか……。ワシだったら、せめてメンバーの数に合わせた5枚を、それぞれ微妙に違う内容でプレスして、「全部買わないとコンプリート不可」という方式にするがなあ。

丸屋九兵衛(まるや・きゅうべえ)
老舗黒人音楽雑誌あらためウェブサイト『bmr』の編集長。『史上最強の台北カオスガイド101』に続き、『史上最強のカンナムカオスガイド88』を企画していたが、その前途に暗雲が……。

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