サイゾーpremium  > 連載  > 【華恵】サザンを聞くと、日本に来てすぐの頃を思い出します。
連載
彼女の耳の穴【18】

【華恵】サザンの曲を聞くと、12歳の自分を思い出します。

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 ──耳は口ほどにモノを言う。教えて、あなたの好きな音!

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(写真/三浦太輔 go relax E more)

Touching song

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サザンオールスターズ
『NUDE MAN』

1978年にデビューしたサザンオールスターズが82年に発表した5thアルバム。裸の男性のジャケットが印象的で、『夏をあきらめて』などの名曲を含む全13曲を収録。

 この春、東京藝術大学音楽学部を卒業しました。そもそもなぜ、この大学を目指したのかというと、聴覚が自分の中で一番自信があったからです。あの日あの人に会った時の服装とかの視覚情報って、私はわりと忘れてしまうほう。鼻も弱いから嗅覚も×。でも音だけは覚えていて、「あの時あの曲が流れていたなぁ」というのは忘れないんですよね。

 小学校6年生の時の思い出もそう。それまでの私はアメリカに住んでいたんですが、両親が離婚して母の祖国である日本に戻ってきていて。母の実家のある福島県に半年間いたんですけど、最初の頃はとにかく不安でした。日本語が全然しゃべれない。周りは日本人ばっかり。英語がしゃべれるのは母親だけ。日本国中で話をできるのが母しかいなかったわけです。だから不安だったんですけど、同時に”無”にもなっていた気がします。来る者拒まず。すべて受け入れるみたいな。子ども心に、そうしないと生きていけないとでも感じていたのかもしれません。

 実は、あの当時の謎の感情と結びついて覚えているのが、サザンオールスターズ。裸の男の人が海に飛び込んでいるジャケットのアルバムがありますよね【編註:82年発売の『NUDE MAN』】。母が運転するクルマで、そのアルバムを含むサザンの曲が流れていたのをすっごく覚えていて。私が初めて聞いた日本人男性の声は、桑田佳祐さんだったわけです。今でもサザンの曲を聞くと、家のベッドの中にいてもどこにいても、クルマがカーブしているような感じになるんです。体がそういう反応をするようになっているのか、サザン=後部座席に乗っている私、みたいな(笑)。

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