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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【22】

ハードなれども高給取り"警察"という組織のカラクリ

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

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「2013年版『警察白書』」
警察庁『警察白書』最新版(2013年8月発行)によれば、全国の警察官の定員は25万6924人。この数は、警察官1人当たりの負担人口が欧米諸国に比べ多いことを踏まえ、01年度から増員が図られた結果である。特集は、「サイバー空間の脅威への対処」「子供・女性・高齢者と警察活動」など。


 全国1173カ所の警察署、25万6924人の警察官を擁する巨大組織、警察。おそらく官公庁の中で、国民にとってこれほど身近な機関はほかにないでしょう。またそれでいて、これほど一般にその内情を知られていない組織もないのではないでしょうか。そこで今回は少しだけ、警察の知られざる内幕をのぞいてみたいと思います。

 警察という組織の実像をつかむためには、何よりもまず、その構成員たる警察官とはいかなる職業であるかを説明する必要があります。警察官という仕事の特徴を端的に述べるなら、第一に高給であること、そして第二に“激務”であること。この2点に尽きる。それぞれについて詳しく解説します。

 総務省の地方公務員給与実態調査(2012年)によると、地方公務員である警察職の平均給与は、月額合計約32万2000円。これだけなら、地方公共団体の一般職員の約32万4000円よりやや低いぐらいです。ところが基本的に警察官には3日に1回ペースで夜勤があり、休祝日も関係ない。当然、諸手当が加算され、給与の合計月額は46万3000円にまで跳ね上がる。これは、大学教育職の約49万7000円と比べても遜色ない額です。地方公務員の給料を決めるには各地方自治体の議会の承認を得なければならないので、基本給はそこそこの金額で抑えておき、手当でガッポリ稼ぐ。これが警察官を“高給取り”たらしめているカラクリです。

 ここで簡単に、警察官の階級について述べておきましょう。警察官には、警視総監・警視監・警視長・警視正・警視・警部・警部補・巡査部長・巡査という9つの階級があります。各階級の割合は、巡査・巡査部長・警部補がそれぞれ全体の約30%、警部が約6%。ここまでが実際に現場で活動する人員で、全体の96%以上を占めています。

 地方警察官採用試験に合格したノンキャリア組は、学歴に関係なく、まずは巡査からスタートし、警察学校での6~10カ月間の研修を経て、各警察署に配置されます。最初に配属される部署は地域課(交番勤務)または交通課が一般的で、数年の勤務ののち、本人の希望や適性によって、刑事課や生活安全課などの各部署に振り分けられます。その後、基本的には最初の配属先の仕事を専門として極めていき、昇任試験をパスしてステップアップしていく。先述の通り、全人員の9割は警部補以下ですから、ノンキャリア組のほとんどはそのあたりの階級で定年を迎えることになるわけです。

 一方、国家公務員Ⅰ種試験に合格し、警部補からスタートするキャリア組、およびひと握りの優秀なノンキャリア組は、さらにその上の階級へと進みます。そして警視から警視正に昇任するとき、ノンキャリア組にある“劇的な変化”が起こります。彼らの立場は、警視までは各都道府県警察所属の地方公務員ですが、警視正以上になると、国の行政機関である警察庁に所属する国家公務員(地方警務官)となり、それに伴って給料がガクンと下がってしまうのです。総務省の調査によれば、国家公務員の給与額を100として算出される地方公務員の給与額は、都道府県によって差はあるものの、おおむね105~111。つまり、警視正に昇任すると、最大で約1割も実質的に“減給”されてしまうわけです。

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