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第1特集
嫌韓・嫌中本一気レビュー【1】

なんでそんなに売れるのか!? 嫌韓・嫌中本の主張を読み解く!

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――全国の大型書店で、嫌韓・嫌中本フェアが開かれているのが話題になり、批判も起きている。05年の『マンガ嫌韓流』以来コンスタントに出版されてきたこのジャンルは、近年で存在感を増した。扇情的なタイトルやデザインで目を引く本には、一体何が書いてあるのか? 共感できない人は手に取る機会もないであろう書籍をレビューしてみたい。

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『嫌韓流2014』(晋遊舎ムック)

 嫌韓・嫌中をテーマとした書籍が一大ブームとなっている。書店では専門のコーナーが設けられ、週刊誌でも中国や韓国への憎悪を煽る見出しが並んでいる。今年に入ってから5月末までの段階で、タイトルに「韓国」「中国」が入るという条件に絞っても、少なくとも50冊以上の関連書籍が出版されているのだ。時勢の機を見るに敏なことに定評のある幸福の科学出版でもこの3月に『守護霊インタビュー 朴槿惠韓国大統領 なぜ、私は「反日」なのか』なる書籍を刊行しているくらいで、間違いなく人気ジャンルに成長しているといえよう。

 嫌韓・嫌中といえばネトウヨ(ネット右翼)を中心とした一部の極端な言説だとみなされてきたが、最近ではリアルな世界にも進出。新大久保などで排外デモが行われていることは既報の通りだ。もちろん、中国や韓国に対する批判をしてはいけないわけではないが、世に出回っている出版物の中には、ただのヘイト(憎悪表現)だと捉えざるを得ないものがあるのも事実である。

 そうした状況には、批判の声も上がっている。朝日新聞は2月11日付の朝刊で、「売れるから『嫌中嫌韓』書店に専用棚」と題した記事を掲載。「店舗の売り上げに占める割合が大きくなり、専用のコーナーを設けることになった」という三省堂書店担当者のコメントを引用し、嫌韓・嫌中を煽る週刊誌の報道についても、「売れるのでやめられない。政治家スキャンダルなどと違い、国外のニュースを紹介するだけなので訴訟リスクが極めて低いことも記事を増やす要因だ」と週刊誌記者の分析を紹介している。また、『呆韓論』(産経新聞出版/室谷克実・20万部)、『マンガ嫌韓流』(晋遊舎/山野車輪・100万部)などのヒットに触れ、「『嫌中憎韓』は出版物の一ジャンルとして確立しつつある」としている。

 扇情的すぎるタイトルが並ぶこの手の本、共感できない人は手に取ることもなかなかないだろう。中には一体何が書いてあるのか?似たようなタイトルも多いが、どう違うのか? 今年刊行された中から、人気論者たちの著作を中心に、独自にピックアップした8冊から検証してみたい。

「体罰の会」会長が説く「中韓の心のなさ」

 まずは“ネトウヨのアイドル”と化しつつある旧皇族・竹田恒泰氏の『笑えるほどたちが悪い韓国の話』から。同書はニコニコ動画の番組をもとに書籍化したもので、まさに「ネトウヨからリアルの世界へ」を体現した典型的な例だと言える。内容としては「朴李(パクり)の常習犯」「そのくせ何でもウリジナル」「なのに韓国製品は欠陥ばかり」「民族まるごとモンスター・クレイマー」といった見出しが並び、嫌韓ムードを前面に押し出している。歴史認識や経済についての批判を展開すると同時に、バレンタインデーやホワイトデーのほかにも恋人同士の行事が各月の14日に設定されている韓国の風習を紹介して「民族まるごと粘着質」と断じるという、かなり乱暴な分析も。それでいて、「人種差別という思想があります。(中略)肌の色が黒や黄色だから、あるいはある特定の地域に生まれたから――そんな理由で人を差別するのは、もっとも恥ずべきことです」と説かれても説得力がない気がするが、これはもしかしたら世界で有名なブラックジョーク「私は人種差別と黒人が嫌いだ」にちなんでいるのかもしれない。

 竹田氏はその出自やテレビ出演のほか、歌手の華原朋美を口説いてワイドショーを賑わすなど、嫌韓・嫌中論者の中では圧倒的な知名度を誇っている。『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』(PHP新書・46万部)などのベストセラーもあり、出版社からは数字を稼ぐことができる著者として重宝されているのだろう。

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