サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > アイドル女優もヤリマンに!抱腹卒倒の【アメリカンコメディ】

――本国でヒットしても笑いのツボが日本とは違うから面白くないといわれ、DVDスルー(劇場未公開でDVD発売のみ)されることが多かった米国産コメディ映画。とはいえ近年、『ハングオーバー!』シリーズや『テッド』が日本でもヒットするなど、笑える映画がないわけではない。そこで、2000年代以降に時期を絞り、革新的で刺激的でリアルなアメコメを探りたい。

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『俺たちニュースキャスター』【2】より。主演のウィル・フェレル(写真中央)は、要注目コメディアン!Blu-rayが税込2500円で発売中。TM & (c) 2004 DreamWorks LLC. All Rights Reserved. TM & (c) 2013 DW Studios L.L.C. All Rights Reserved.

 何かと「大味」というイメージのあるアメリカン・コメディであるが、固定観念を覆す破格かつリアルな作品があるのをご存じだろうか? 本稿では2000年代以降に生まれたそうした類いのコメディ映画に焦点を当てたいが、それを説明するにはまず、『サタデー・ナイト・ライブ』(以下、SNL)から始めないといけない。これは、1975年からアメリカの土曜深夜に生放送されているお笑い番組で、この番組で実績を残した構成作家やお笑い芸人が映画の世界にフックアップされ、後にスターになっていくというアメリカン・コメディ界の伝統的な登竜門なのである。ここから輩出された人物として特に注目したいのは、アダム・サンドラー。「彼の登場以降、笑いの質が急激に上がった」と語るのは、彼の写真を表紙にした『21世紀アメリカの喜劇人』(スペースシャワーネットワーク)の著者である長谷川町蔵氏だ。

「それまでは芸人の鉄板ネタや得意キャラをつなぎ合わせて話をつくるコメディ映画が多かったのですが、彼以降の作品はストーリー重視になり、脚本や演技のレベルが高くなったんです。テレフォン・セックスのサービスコールを利用したことでトラブルを抱えることになる主人公を彼が演じた02年の『パンチドランク・ラブ』【1】は、『マグノリア』(99年)のポール・トーマス・アンダーソンの監督作ですが、全編にサンドラーへのオマージュが捧げられています。彼ほど黄金期が続いているコメディアンはほかにいないでしょうね。

 また、サンドラーの後にSNLのレギュラーになったウィル・フェレルが、04年に初めて本気で脚本を書いたのが、70年代の風俗をネタにした『俺たちニュースキャスター』【2】です。現在ではアメリカン・コメディ界のVIPにまでのし上がったウィル・フェレルの代表作に推す声も多く、9年後に公開された続編は全米で興行収入1億ドルを突破しています。この映画をきっかけにハリウッドを席巻することになったのが、監督・脚本・プロデューサーのジャド・アパトーです。童貞3人組が初体験を目指して奮闘する07年の『スーパーバッド 童貞ウォーズ』【3】は彼の製作で、正統なイケメンが誰も出演していないという邦画ではあり得ない映画なのに超ヒットしました。主演は、後に『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13年公開)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたジョナ・ヒル。だから、『ウルフ~』だけを見て『ジョナ・ヒルがいい!』と言っている人は、今すぐこの映画を観ないといけないんです!!」

精神が崩壊するアラフォーの笑い

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『キューティ・バニー』【6】は、元プレイメイトがイケてない女子ばかりいる大学寮の寮母になる話。Blu-rayが税込2500円で発売中。(c)2008 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND BEVERLY BLVD LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 しかし、そんな伝説的な番組も「白人男性が主導だった」と語るのは、長谷川氏と共著『ハイスクールU.S.A.』(国書刊行会)を著した山崎まどか氏。

「ところが、2000年代にSNLの構成作家の責任者にティナ・フェイという女性が就任したことが転機になり、番組の雰囲気もがらっと変わって、女芸人が仕事しやすい環境になったんです。そんな彼女が初めて脚本を書いた04年の『ミーン・ガールズ』【4】はスマッシュ・ヒットしました。10代の女の子ならみんな見るような学園コメディのクラシック的存在になり、これ以降に女の子主演のコメディを撮る女性映画作家が出てきます。

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『小悪魔はなぜモテる?!』【7】では、『アメイジング・スパイダーマン』のヒロイン役エマ・ストーンがビッチに!? DVDが税込1480円で発売中。(c) 2010 Screen Gems, Inc. All Rights Reserved.

 また、11年の『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』【5】は、クリスティン・ウィグなどSNL出身の女性スタッフとコメディエンヌによる、ほとんど女子だけでつくられた画期的な映画です。それまで女の子のコメディというと、『ドジな美人がコケる』といった作品だったんですが、この映画はアラフォーのコメディエンヌたちが精神的に壊れていく状況がリアルだと支持され大ヒット。『女性が主役のコメディは当たらない』と言われ続けていたコメディ界の男尊女卑を変えたんです」

 この『ブライズメイズ』は花嫁の世話役になった女友達の話だが、劇中には打ち合わせした店の料理で食中毒を起こして、花嫁のドレスの試着中にみんながトイレに駆け込むという下ネタもある。芸人ならともかく、アイドル女優でもこういう汚れ役をやるのが近年の特徴で、「最近の女優は若くてかわいくてもジュリア・ロバーツのような正統派にはなりたがらず、面白いことをやりたがる」と山崎氏は言う。例えば、アンナ・ファリスは08年の『キューティ・バニー』【6】でイケてない女子が集まる大学寮の寮母になったプレイメイト(「PLAYBOY」誌のヌード・モデル)を演じているのだが、「寮の女子大生にお化粧を覚えさせるときも、『みんな、目は顔の乳首なの』と言ってギャルっぽく改造していくんです(笑)。『メガネをはずしたら変身』なんて演出は古い映画の話。『そこまでするか』というくらい泥をかぶるのですが、それがむしろリアリティがあると同性ウケしたんです。しかも、寮のかわいくない女の子たちを演じている女優は、みんな後にスターになる。代表格が『アメイジング・スパイダーマン』(12年)のエマ・ストーンです。彼女は『スーパーバッド 童貞ウォーズ』で花開き、10年の『小悪魔はなぜモテる?!』【7】では学園内でヤリマン呼ばわりされてしまう主人公を演じていますから、『~スパイダーマン』だけ見てエマ・ストーンをわかった気になってもらっては困ります!!」(山崎氏)。

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『プロジェクトX』【7】は、スクール・カーストの下層に位置する男子が企てたホーム・パーティが、アルコール、エクスタシー、EDM、オッパイが入り乱れ、挙げ句には暴動にまで発展する"伝説の夜"に。間違いなく教育上よろしくない映画だが、超・楽しそう! オランダではマネた事件が実際にあったそう。Blu-rayが税込2500円で発売中。

 と、両氏から同じようなお諫めを受けてしまったわけだが、ともかく美男美女じゃなくても実力があれば映画で主役をやれること、そして美人でも体を張って汚れ役を演じることは近年のアメリカン・コメディの特徴といえるのではないだろうか。

 もうひとつの特徴が、低予算映画の存在である。長谷川氏は、無名でさえないルックスのキャストを起用し、かつ制作費もかかっていない画期的な制作の手法がとられた映画として、誕生パーティに想定外の人数が集まって大騒動になる13年の『プロジェクトX』【7】を挙げ、「ちゃんと演技のできる俳優を使って緻密につくられた『ハングオーバー!』シリーズよりも、もっと未来があるつくり方をしています」と述べる。

ブスの結婚を祝福しない"ビッチ・コメディ"

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『バチェロレッテ ―あの子が結婚するなんて!―』【10】は、ブスでデブな高校時代の友人の結婚に焦る、イタい未婚女子の話。DVDが税込3990円で発売中。(c)2012 Strategic Motion Ventures, LLC

 さて、先に「泥をかぶるほうがリアリティがある」という山崎氏の発言を紹介したが、社会的な価値観の変化に応じて笑いの質も変化しているのだろうか? 長谷川氏は次のように指摘する。

「先ほど紹介した、ジャド・アパトーが監督・製作・脚本を手掛けた07年の『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』【8】は彼の私小説コメディ。自分のできちゃった婚が題材になっています。しかも、この映画には当事者である彼の妻子が出演しているんです。プライベートで関係のある人間を起用したほうが話の説得力があるのでしょう。その意味では、シリアス映画よりもコメディ映画の観客のほうがリアル志向になっているのかもしれないですね」

 一方の山崎氏が指摘するのは、「ビッチ・コメディ」と呼ばれるジャンルだ。センチメンタルではなく、ドライな性格の女子によるコメディ映画である。

「12年の『バチェロレッテ ―あの子が結婚するなんて!―』【10】は、高校時代から仲の良かった4人組の女の子のうち、一番デブでさえない子が真っ先に結婚する話です。高校時代はモテていたほかの3人は全員性格が悪くて、花嫁の世話役になっても『なんでこんなバカなことをしないといけないの?』と誰も結婚を祝福しない。しかも、最終的に改心しないんです。また、『私にもできる! イケてる女の10(以上)のこと』【11】は『自分の性器に指を入れられる』など、大学入学までに達成すべきセックス絡みのTO DOリストをつくってひとつずつ克服していく女の子の話ですが、こういう話も普通だと『女の子は自分を大事にしないといけない』『愛が前提』となりそうですが、『私は後悔しない。イケメンとセックスしたいと思って何がいけないんだ』と主張する。実際、男の子の観客は衝撃を受けたようですが、これは童貞喪失コメディの女性版ともいえます。そんな、物事に動じずやりたいことをやるという女の子のピカレスクロマンを背負ったビッチ・コメディのヒロインに、同性からの支持は厚いんです」

 また、「ロマンティックなラブコメは『嘘だし(苦笑)』みたいに飽きられた」と続ける山崎氏。代わって現れた時代のリアリティには、男は「苦い」、女は「ドライ」と微妙な差はあるにせよ、遠い世界の夢物語に終わらないということは、裏を返せば誰もが楽しめる部分があるということでもある。山崎氏は言う。

「人の心理のグサッとくるところを突いてくるリアルな部分は、日本の映画にはそんなにない。外国人という自分と一番遠いところにいる人でも、自分と似たような部分を見つけられるし、男女問わず感情移入できる側面があると思います」

「おバカで大味」「ツボが違うから笑えない」といわれ、日本では劇場公開されずにDVDでリリースされることが多かったアメリカン・コメディ映画。なかなか食指の動かない読者も多いと思うが、まずは先入観を捨てて、アメリカン・コメディをより楽しむのもいいのではないだろうか。

(文/岡澤浩太郎)

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【1】『パンチドランク・ラブ』
監督:ポール・トーマス・アンダーソン/出演:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソンほか/発売:ポニーキャニオン
アダム・サンドラー演じるバリーは、トイレの詰まりを取る吸盤棒を販売しているが、かんしゃく持ちでもある。そんな青年の恋の行方をブラックな笑いで描く。(02年公開)


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【2】『俺たちニュースキャスター』
監督:アダム・マッケイ/出演:ウィル・フェレル、ポール・ラッドほか/発売:パラマウント ジャパン
70年代サンディエゴ、地元テレビ局の人気キャスターであるロンらは放埒な日々を送っていたが、野心あふれるキャスター志望の女性ヴェロニカの入社で事態は急変。日本未公開。(04年公開)


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【3】『スーパーバッド 童貞ウォーズ』
監督:グレッグ・モットーラ/出演:ジョナ・ヒル、マイケル・セラほか/発売:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
高校卒業を間近に控えたさえない童貞3人組が、同級生の女子からパーティに誘われたことを機に、童貞の卒業を目指して奮闘する青春コメディ。下ネタが満載。日本未公開。(07年公開)


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【4】『ミーン・ガールズ』
監督:マーク・ウォーターズ/出演:リンジー・ローハン、レイチェル・マクアダムスほか/発売:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
リンジー・ローハン演じるアフリカ育ちの少女が、16歳で初めてアメリカの高校に通うことに。各種ルールに戸惑い、学生の派閥闘争に巻き込まれる学園コメディ。(04年公開)


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【5】『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』
監督:ポール・フェイグ/出演:クリステン・ウィグ、マーヤ・ルドルフほか/発売:ジェネオン・ユニバーサル
仕事も恋も崖っぷちの30代独身女性アニーは、親友の結婚式で花嫁介添人(ブライズメイド)のまとめ役を任される。しかし、問題のある友人に囲まれ大騒動に。(11年公開)


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【6】『キューティ・バニー』
監督:フレッド・ウルフ/出演:アンナ・ファリス、ワディ・ワクテルほか/発売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
27歳でプレイボーイ・マンションから追い出されたプレイメイトが、大学女子寮の寮母となる。が、寮生はダサい子ばかりで、寮自体が解体の危機にあった……。日本未公開。(08年公開)


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【7】『小悪魔はなぜモテる?!』
監督:ウィル・グラック/出演:エマ・ストーン、ペン・バッジリーほか/発売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
女子高生オリーヴはゲイ疑惑でイジメられる男子を偽装エッチで助ける。すると童貞を隠したい非モテ男子から依頼が相次ぎ、学内でビッチと見なされる。日本未公開。(10年公開)


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【8】『プロジェクトX』
監督:トッド・フィリップス/出演:トーマス・マン、オリヴァー・クーパーほか/発売:ワーナー・ホーム・ビデオ
イケてない高校生3人がホーム・パーティを計画。手段を選ばない宣伝で想定外の人数が集まり、ドラッグ、セックス、暴動と乱痴気騒ぎは制御不能に。日本未公開。(12年公開)


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【9】『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』
監督:ジャド・アパトー/出演:セス・ローゲン、キャサリン・ハイグルほか/発売:ジェネオン・ユニバーサル
その日暮らしをしているベンは、バーで出会った新人テレビ・キャスターのアリソンのナンパに成功し、酔った勢いでエッチ。その後、アリソンの妊娠が発覚し……。(07年公開)


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【10】『バチェロレッテ ―あの子が結婚するなんて!―』
監督:レスリー・ヘッドランド/出演:キルスティン・ダンスト、アイラ・フィッシャーほか/発売:ギャガ、販売:アミューズソフト
ブスでデブな高校時代の友人が結婚することになり、焦りを隠せない独身女子3人。その憂さを結婚前夜パーティで晴らそうとしたが、花嫁のドレスを破ってしまう。(12年公開)


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【11】『私にもできる! イケてる女の10(以上)のこと』
監督:マギー・ケアリー/出演:オーブリー・プラザ、ジョニー・シモンズほか/発売:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
高校を卒業したばかりのマジメな女子ブランディ。大学入学までに男が振り返るステキな女性となるべく、処女喪失へのプロセスとなるチェックリストを作成。日本未公開。(13年公開)


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