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第1特集
劇団俳優"成り上がり"映画伝説【1】

"侍"仲代達矢から"半沢"堺雅人まで 舞台劇団と映画界の甘~い関係

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――戦前の映画黎明期から21世紀の今に至るまで、舞台劇団は常に映画に人材を供給してきた。いったいそれはなぜ、どのような形で行われてきたのか? 舞台劇団と映画業界がそれぞれの時代においてどのような関係を紡いできたのか、映画史と演劇史をシンクロさせ、その関係史を見つめ直す!

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『大人計画フェスティバル-今日は珍しく!昨日より珍しく!』(アスミック)

 黒沢澤明監督の『七人の侍』(54年)に、若き日の仲代達矢と宇津井健がエキストラ出演しているというのは有名な逸話だ。2人は当時、同作を制作した東宝の専属俳優ではなく、「俳優座」養成所に通う役者のタマゴだった。それから約半世紀。最近のヒット映画『永遠の0』(13年)では、新劇界の大物である橋爪功、平幹二朗らが、主役である岡田准一の脇を固めていた。

 このように、昔も今も日本映画には、舞台育ちの俳優はなくてはならない存在だ。つまり、映画界と演劇界とは長い蜜月関係を築いているのだ。まずは、両者の関係史を時系列順にまとめてみよう。

 大正から戦前、戦中にかけては、時代劇が日本映画の中心だった。そして、当時映画出演者の多くは、歌舞伎、新派劇、新国劇、大衆演劇などの出身者だ。ちなみに、新派劇は歌舞伎を「旧派」と見立てた、国内の文学作品などを演目とした演劇、「新国劇」は、大胆な立ち回りを取り入れた、歌舞伎に代わる“新しい日本の劇”を目指した劇団を指す。そんな時代、演劇界では新たなムーブメントとして、「新劇」が誕生していた。新劇とは、歌舞伎など日本的な劇を「旧劇」と位置づけ、それとは違う“新しい劇”を上演する演劇のジャンルだ。

 最初の本格的な新劇の劇団だといわれる「築地小劇場」が生まれたのが1924年(大正13年)。その後、40年代初頭までに、3つの劇団が確固たる地位を築く。岸田國士らの劇作家により結成された「文学座」、小沢栄太郎、東野英治郎らによる「劇団俳優座」、宇野重吉、滝沢修らの「劇団民藝」である。

 一方、映画業界の勢力図も整っていった。サンフランシスコ平和条約が締結された51年に東映がスタートし、東宝、松竹、大映、新東宝との5社体制が確立されたのだ。この体制のもと、戦後復興が加速する中で娯楽の需要も高まり、映画界は量産体制へと向かっていく。そこで、各映画会社は自社専属のスター育成に取り組んでいくのだが、若いスター候補生ばかりでは劇映画は成立しない。特に現代劇のニーズが強まったこともあり重宝されたのが、先述の新劇の俳優たちだったというわけだ。

 日本映画に詳しい映画評論家の磯田勉氏はこう語る。

「スターにはスターの役割があります。ですが、作品に幅や厚みを持たせるには、スターの芝居を“受け”られる、演技力の高い俳優が必要だったんです。これは、今の映画でも基本的には変わらないでしょう」

 劇団は映画会社にとって、俳優供給源として以外に、もうひとつ重要な役割を担っていた。各社とも自社の新人を劇団の養成所に送り込んで、演技の勉強をさせていたのだ。このように、映画会社にとって劇団は頼れるパートナーとなっていったが、では劇団にとって映画会社との提携関係はどんな意味があったのだろうか?

「劇団経営が厳しいのは、今も昔も変わりません。そこで、映画に俳優を出演させれば、出演料を得られるし俳優の知名度アップにもつながる。つまり、両者の利害が一致したわけですね」(磯田氏)

 そんな映画界と演劇界の関係史を語る上で重要なキーワードとなるのが、「五社協定」である。これは、東宝、東映、松竹、大映、新東宝の間の取り決めで、映画会社同士の専属監督や俳優の引き抜きを禁止し、監督・俳優の貸し出しの特例を廃止するというものだ。

「戦時中、制作活動を休止していた日活が54年にそれを再開するにあたり、他社の俳優や監督らを引き抜こうとします。五社協定の目的は、そんな日活の封じ込めでした。やむを得ず、日活は映画会社専属でない俳優、オーディションで集めた新人、そして劇団民藝との提携によって出演者を確保するという苦肉の策に出ます」(同)

 しかし結果的に、日活の石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎ら新人を前に押し出した路線は大成功を収める。そして彼らの主演作品には、民藝の俳優たちもまた欠かせない存在となっていくのである。

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