サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 【満島真之介】スコセッシ作品を見ると血が騒ぐ!

――昨秋初の主演映画に臨み、1月ドラマ『紙の月』も話題になるなど注目度を高めている満島真之介は、直感で出会った「ヤバい映画」に導かれてここまでやってきていた――!?

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(写真/永峰拓也)

 僕にとって映画とは、自分の知らない自分との出会いなんです。本数をたくさん観る映画マニアみたいなタイプでは全然ないんですけど、偶然巡り合った作品に感化されちゃったりするんですよ。人生の分岐点に映画が影響していることも多くて、例えば高校生の時に観た『HAZARD』【1】は、まだ沖縄に住んでいた頃レンタルショップで何気なく手にしたのが最初。作品のことも園子温監督のことも知らなかったけど、なぜかこれを借りようと思った。観てみると主人公と親友の関係性が自分の環境と似ていたりして、すごくシンパシーを感じちゃったんです。それからは自分でカメラを回して、友達と「HAZARDごっこ」をずっとやってましたね(笑)。その後、園監督のホームページから「雑用でもいいので使ってください」とメールをして、しばらく助監督として働かせてもらったこともあるんです。映画を撮りたいと思ったことなんてなかったのに、本当にタイミングよく作品に出会って、感情が揺さぶられたままに突き進んだ結果なんですよ。

 上京してからはレンタルショップでバイトをしていたので、その時にも映画はよく観ましたね。でも人から薦められた作品はあまり観たくならなくて、自分の感覚で作品と出会うことが楽しかった。店の中を歩いてると「今日はこの列かな」「このあたりにありそうだな」って感じるんですよ。余計な情報で選びたくないから、パッケージも見ません。映画を観る2時間ってすごく貴重な時間だし、失敗したくないじゃないですか。だからこそ、フィーリングでピンと来たものを選ぶんです。そうすると、チラッと映った路地がすごい好きだったとか、空気感がその日の僕に合っていたとか、必ず発見がある。『タクシードライバー』や『グッドフェローズ』【2】のマーティン・スコセッシ監督作品も、そうやって見つけました。僕がイタリア系アメリカ人のクォーターだからなのか、スコセッシ作品に出てくる街並みや人間関係を観ていると、懐かしさを感じることがあるんです。血が騒ぐ感覚というか、目には見えない空気や匂いに覚えがあって、不思議な感情が湧いてくる。沖縄はアメリカとの共存関係が色濃い場所だし、そういう作品に近い空気感の中で育ったことも関係しているんですかね。それにスコセッシ監督の映画は何度も観返すうちに、なんていうか、唾液としてにじみ出てくる感覚になってきたんです。最初はぼんやりした“匂い”しか感じなかったのが、“味”となって少しずつ身体に浸透していく。観るごとに自分自身も変化していると感じさせられるので、それが映画の楽しさであり怖さでもありますね。今の自分の状態がさらけ出されるので、観た後に悶々とすることもしばしば(笑)。

 ただ、ヤバい映画という言い方をするなら『アポカリプト』【3】ですよ。これはとにかくヤバイ! 芝居がすごいとか映像がすごいとか、映画のおもしろさには種類があるけど、そういうレベルじゃない。映画の枠を超えた違う次元の芸術になっていて、「見てしまった……!」という感覚ですね。僕が今まで観た映画はなんだったのかと衝撃でした。生身の強さというか、ライオンが檻から飛び出しちゃったような作品なんです。あの主演は演じることなんて考えていないのか、ただ無心で「追う」「走る」「飛ぶ」みたいな状態にしか見えない。演じるって時に、本当はそうやって無になれることが一番強い。例えば、大人たちがイライラしてても、そばにいる赤ちゃんが笑うだけで皆笑顔になるじゃないですか。その作為のなさこそ最強だと思っていて、『アポカリプト』はそういう映画だなぁと。観るたびに自分が野生化していくのを感じるし、テンションを上げたい時や撮影前には、いつも観返してますね。僕はそもそも飽きっぽくてすぐに新しいことを始めたくなっちゃう性格なんだけど、この映画のような驚きや未知の領域があるから、まだまだ映画に携わりたいと思える。

 演じ方で言えば、ジム・キャリーって結構ヤバい役者さんですよね。昔子どもの頃『マスク』【94年公開、ジム・キャリー主演。冴えない銀行員が緑色の仮面によって、黄緑色の顔の怪人・マスクになってしまう。彼が起こす騒動と恋を、SFXも活用してコミカルに描く】の彼のモノマネをよくしていたんだけど、子どもが好きになるってことはシンプルなのに魅力的な証拠。観ている人を楽しませるためのメソッドや技術もあるんだけど、それを感じさせない圧倒的なパワーがある。きっと演じている自分自身が納得できていないと、観ている人は笑えないと思うんです。彼はそこでとことんストイックに戦っていて、どの作品を観ても彼自身だから安心できる。日本人でああいう演じ方ができる人ってあまりいないような気がする。実は密かに、そのポジションを狙っています(笑)。

(構成/田島太陽)
(スタイリング/檜垣健太郎 little friends)
(ニット/ジョン スメドレー 3万5700円 リーミルズ エージェンシー)

満島真之介(みつしま・しんのすけ)
1989年5月30日、沖縄県生まれ。10年舞台『おそるべき親たち』で俳優デビュー。映画では『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(12年/若松孝二監督)、初の主演『風俗行ったら人生変わったwww』(13年/飯塚健監督)などに出演。今年は1月にドラマ『紙の月』で好演し、5月には特集ドラマ『お葬式で会いましょう』(共にNHK)が控える。

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【1】『HAZARD』
監督:園子温/出演:オダギリジョー、ジェイ・ウェストほか/発売:ジェネオンエンタテインメント
退屈な生活を送っていた学生・シン(オダギリ)は、たまたま知ったニューヨークの犯罪都市「ハザード」に刺激を求めて旅立つ。そこで出会った若者たちは、やがて暴走を始めるのだった。(06年公開)


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【2】『グッドフェローズ』
監督:マーティン・スコセッシ/出演:ロバート・デ・ニーロほか/発売:ワーナー・ホーム・ビデオ
アメリカに実在したイタリア系マフィアの半生をモデルに、ギャングたちの生きざまを描いたスコセッシの代表作のひとつ。現在でも評価は高い。(90年公開)


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【3】『アポカリプト』
監督:メル・ギブソン/出演:ルディ・ヤングブラッドほか/発売:ポニーキャニオン
16世紀にスペイン人に侵略される直前のユカタン半島を舞台に、ジャングルで生きる主人公の逃走劇やマヤ文明との遭遇など、さまざまなイメージが混ぜ合わされている。(07年公開)


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