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第1特集
名バイプレイヤーに聞く"ヤバい映画"【6】

【北村一輝】ターゲットは世界……映倫・規制を打ち破るアジアの表現者に学べ!

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――一瞥すれば瞼に焼きつく、鋭利な顔立ち。それでも本人は、「何色にでも染まる」とニヤリ。猟奇殺人鬼から猫を抱く侍、横山やっさんまでブレずに演じきる怪優が本誌で静かに大暴走。

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(写真/江森康之)

「ヤバい映画」って、僕が出ている作品ではないんじゃないかな。というのは、近年の国内作品ですと本当にタブーを描いているようなシーンは全部カットされちゃいますよね。例えば、三池崇史監督の『ケンカの花道』やVシネマの『新・悲しきヒットマン』など、裏社会をリアルに描いた作品もありましたが、「暴力」や「差別」の表現規制で、重要なシーンはお蔵入りしています。そういった現在の規制というものに対して、僕たちはもっと考えなければならないのかもしれない。クサい物にフタをして、キレイにして……という世界に住んでいたら、人は何も考えられなくなる。昔は『犬神家の一族』のような惨殺シーンがあるような映画を誰でも観られる環境があり、それを観た小学生が「犯人みたいなヤツになりたくない」とか判断したりするわけです。このまま目隠しみたいな社会が広がると、今の子どもはそういう判断ができなくなるんじゃないかな。

 その点、今公開している僕の出演作『KILLERS/キラーズ』【1】の監督は違いましたよ。かなり猟奇的なシーンもありますが、自国でのR指定、公開の有無など気にしていません。「アメリカでもマレーシアでも公開できるから大丈夫だよ」と。つまり、表現を規制されるような狭い視野で生きてない。世界をターゲットにすえている。僕が演じる主人公の野村は、理由もなく女性を惨殺して、その様子を淡々と撮影し、動画サイトに公開する――。台本を読んだときに、まったく共感できる要素がなく、監督に「この作品で何を表現したいのですか?」と聞きました。すると、監督は冷静に「日本を含めたアジアで、こんなすごい映画が撮れるということを世界に発信したい。低予算で技術力やセンスを伝えるには、このジャンルが適しているんだ」と言うんです。この点には、同じアジア人として、すごく共感できるところがあり、それならばやってみたいと決意しました。

 個人的に『キラーズ』の見どころを言わせてもらうと、オープニングの映像と音楽がシンクロするセンスが絶妙です。過激なシーンですが、例えば『冷たい熱帯魚』とも、まったく別物で、どこかはかなく美しい。うちの事務所の女性スタッフも「スプラッターは苦手だけど、この作品は大丈夫」と言っていましたよ。僕にとっても台本からはまったく想像できなかった新しい映像体験でした。

 最近観た映画だとタイの人身売買の実情を描いた『闇の子供たち』【2】が、かなり挑んでいますよね。あと『アルゴ』【3】も好きですね。決して「アメリカだけが正義」という描き方をしていないのに、アメリカでヒットして、アカデミー賞も獲ってしまう。そういう感覚に感銘します。その作品を観てどう判断するかは、観ている人に任せればいい。日本ももっと自由になって、世界に開かれていくといいなと思います。もちろん、映画の話で言えば世界で勝負できる日本人監督もいますしね。もっと社会や世界に挑んだ作品が増えていってほしいです。

 役者として言わせてもらうと、海外のスタッフとモノをつくることは大変ですが、楽しいし、学ぶことが多いですね。仕事で中国やインドネシアなど、アジアを訪れることが多いのですが、現場の熱量が日本とぜんぜん違う。スタッフもアメリカやヨーロッパで修業をしてきた人が多くて、技術レベルもすごく高かったですよ。数年後、日本はアジアの国々に追い越されてしまうのではないか……という不安に駆られます。だからこそ、若い役者の方々にも、アジアや世界にもっと出て活躍してほしいですね。自分はそのパイプ役を担いたいと最近強く思います。もちろん、日本の映画シーン、ドラマシーンからも学ぶことは山ほどありますが、海外との接点は少ないですよね。こういうことを言うと、「お前は海外を目指すのか」と聞かれますが、そういうことではないんです。日本人の習性で、「映画人」、「ドラマ人」なんていう枠に自分をはめたがるのが特徴的で、昔は自分もそうでしたが、とにかく価値観が窮屈になってしまう。僕は、「映画人だから」とか「ハリウッド作品に出たから」ではなく、「個人」として作品の上で評価されたい。「自分」という揺るぎない存在を確立できれば、舞台は日本でもフランスでもインドネシアでも同じですよね。今の世の中、飛行機に乗ればどこでも行けるし、インターネットでどんな情報も手に入る。だからこそ、自分の目で自分の価値観でモノを判断したい。そして、自分の土俵を広げていきたいですね。枠をぶっ壊すとか、壁を超えるとかではなくて、「個人」の力を信じて、広い世界を自由に行き来できるようになりたい。そういう人間が一番強いと思いますし、僕の目指すべき方向です。

(構成/丸茂アンテナ)

北村一輝(きたむら・かずき)
1969年、大阪府生まれ。99年『皆月』でキネマ旬報新人男優賞を受賞。近年は、『テルマエ・ロマエ』『劇場版ATARU』『劇場版SPEC』など、話題作に欠かせない存在に。主演作『KILLERS/キラーズ』が日本(公開中)とインドネシアに加え、イギリス、フランス、ドイツほか世界12カ国で公開予定。さらに、3月1日には『劇場版 猫侍』の公開が控えている。

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【1】『KILLERS/キラーズ』
監督:モー・ブラザーズ/出演:北村一輝、オカ・アンタラ ほか/配給:日活 (c)2013 NIKKATSU/Guerilla Merah Films
『冷たい熱帯魚』『凶悪』のプロデューサー陣と、インドネシアの監督ユニット“モー・ブラザーズ”がタッグを組んだバイオレンスアクションの衝撃作。北村演じる殺人鬼の狂気は圧巻。テアトル新宿他にて全国公開中。


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【2】『闇の子供たち』
監督:阪本順治/出演:江口洋介、宮崎あおい ほか/発売:ジェネオン エンタテインメント
タイで行われているとされる、人身売買や幼児売買春を描いた梁石日の同名小説を映画化。人身売買について「そんな事実はない」などの指摘や、無許可での国内撮影を理由にバンコク国際映画祭での上演が中止に。(08年公開)


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【3】『アルゴ』
監督:ベン・アフレック/出演:ベン・アフレック ほか/発売:ワーナー・ホーム・ビデオ
79年のテヘランで起きたアメリカ大使館人質事件と、その裏で敢行されたCIAによる救出作戦の行方は果たして。実話をベースとした作品で、アメリカへの批判も込められていたが、アカデミー賞作品賞を受賞した。(12年公開)


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