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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×さやわか[ライター、物語評論家]×柴 那典[ライター/編集者]

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6月に行われた第5回選抜総選挙で1位を獲得し、センターを射止めた指原。ファンからもメンバーからも、納得と驚きの声が両方あがっていた。

──6月に行われた第5回AKB48選抜総選挙で、指原莉乃が1位になった。そしてセンターに彼女を迎えてリリースされたシングルが「恋するフォーチュンクッキー」だ。初動で100万枚を超えた同作が示す、AKBの今後とはどのようなものなのか? AKB論、楽曲論、そしてダンス論の面からこの曲の真価に迫る。

宇野 今回の『恋するフォーチュンクッキー』(以下、『恋チュン』)は初日売上が110万枚で、AKB48史上では3番目に多い。これまでのAKBのシングルで初日売上1位は『さよならクロール』(2013年)、2位は『真夏のsounds good!』(12年)だったわけだけど、両方とも総選挙の投票券付きの曲だった。今回の『恋チュン』が投票券のついていないシングルでは過去最高の出だしになりそうですね。

さやわか これまでの総選挙直後のシングル初日売上枚数を比較すると、去年の『ギンガムチェック』が90万枚、その前の『フライングゲット』が102万枚。3年前の『ヘビーローテーション』は最初はあまり伸びなくて34万枚なので、『恋チュン』はかなり好調だと言えますね。

 AKBはすでにかなり歴史が蓄積されてきたと思うんですが、僕は曲で言うと、地下アイドル時代のAKBを象徴するのが「会いたかった」、国民的アイドルに駆け上がっていく「現象」としてのAKBを象徴するのが「ヘビーローテーション」、そして本当の意味でのAKBの代表曲として「恋チュン」が出てきたと捉えてます。お2人はAKBの歴史をどう切り分けて考えていますか?

宇野 僕は、まず前田敦子卒業までの「第一章」を、AKBが地下アイドルだった時期と、そこからマスメディアに進出して国民的なアイドルに成長していく時期に分けて考えていて、前者から後者へのターニングポイントがキングレコード移籍第一弾のこの時期の象徴として「大声ダイヤモンド」だったと思っています。そして「大声」からあっちゃん卒業までの時期は、戦後文化の中でも最大規模の現象としてAKBが頂点を極めていく過程として位置付けられる。

 あっちゃん卒業後のこの1年は、第二章の陣容と方向性が固まるまでの動乱期・転換期だったわけですが、この「恋チュン」以降になってようやく完全に第二章に突入した、という見立てをしています。

さやわか 地下アイドルから、あっちゃんを中心にしてリニア(直線的)に駆け上がっていく進化の過程が第一期だったとすると、第二期は頂点を極めていくような進化ではなく、宇野さんが「国民的」とおっしゃったように、AKBが「現象」ではなくプロ野球やJリーグのような「日常」になっていくということだと思います。そして指原のような今までは「邪道」とされたようなキャラクターが、純粋にファンたちに愛されて支持を受けるというものになった。

宇野 そう、AKBの第二章は縦に伸びていくのではなく、横に広がっていくイメージなんですよね。その象徴が今回選挙でセンターを勝ち取った指原莉乃でしょう。「恋愛禁止条例」を破って事実上のペナルティをくらった指原が、移籍先の博多で半分プロデューサーとしても活躍しHKT48を全国区に押し上げ、博多のファンたちがその功績を認めてこぞって投票したことで総選挙に勝った。指原は二つの意味でAKB第二章のカラーを決めたように思う。第一に地方の姉妹グループのメンバーとしてセンターを取ったことで「横に広がるAKB」というカラーを決めた。第二に、指原のセンター獲得はファンの民意が恋愛禁止条例の事実上の無効化を選択したようなもので、従来の参加型アイドルイベントをさらに押し進めた「みんなで決めるAKB」というカラーを方向づけたように思う。

 恋愛禁止条例をめぐる問題はデリケートだけどなかなか興味深くて、ファンの間でも、80年代からのアイドルの伝統に則ったタイプがいいのか、指原のようにセルフプロデュース能力に優れた現代的なタイプがいいのかという議論はずっとあった。そして峯岸問題【1】から、さっしーの1位獲得に至るまでの過程で、「アイドルはもっと多様であっていいんじゃないか」というイデオロギーが勝ったんだと思います。

ディスコチューンと日本の歌謡曲の歴史

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48グループに関わるスタッフたちの踊る姿を次々に映した「スタッフバージョン」MVはYouTube公開後、ネット上でも話題になった。画像下は、SKE48劇場警備員の登場シーン(上は公式MV)。

 今回の「恋チュン」の曲調はフィリー・ソウル【2】で、典型的なディスコ・チューンですよね。実はこれまでのAKBの曲では、ディスコを歌謡曲/J-POPで使うという手法はあまり試みられてこなかった。

 一方で、日本の歌謡曲史を紐解くと、ディスコと歌謡曲の蜜月は比較的歴史が古くて、まず70年代半ばに岩崎宏美の「ロマンス」や「ファンタジー」という曲が、その後に中原理恵の「東京ららばい」「ディスコ・レディー」というムード歌謡的なディスコ曲もヒットしてる。これらはいずれも作曲家・筒美京平【3】の手によるものです。80年代になってからは、近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」、田原俊彦の「ラブ・シュプール」がフィリー・ソウル。80年代初期の男性アイドルでは、こういった曲調は定番中の定番でした。

さやわか しかし80年代初期になると、打ち込みの表現が台頭したせいもあって、こういう正調のディスコ曲を女性アイドルがやると「ダサい」と言われてしまう時代に入っていきましたね。

 そうですね。その後、80年代後半はユーロビート【4】の時代になって、荻野目洋子がユーロビート・アイドルとして活躍し、それがWinkに引き継がれ、そこから初期の安室奈美恵やMAXといったエイベックス系につながり、90年代のJ-POPを席巻した。

 じゃあ90年代にフィリー・ソウル経由のディスコはどこにあったかというと、実は渋谷系だったんですね。小沢健二の「強い気持ち・強い愛」は筒美京平の作曲だし、ピチカート・ファイヴの小西康陽もまさに直系で影響を受けている。電気グルーヴの「Shangri-La」も、やはり70年代ディスコのサルソウルを代表するベブ・シルヴェッティという人の曲が元ネタになっている。つまり90年代中期、ディスコはサブカルだったんです。それが、再び90年代後半になってメインストリームに戻っていく契機のひとつがSMAPの「ダイナマイト」で、その流れの臨界点がモーニング娘。の99年の大ヒット曲「LOVEマシーン」だった。

 ただ、モー娘。以降にその流れが続かなかった。2000年代は宇多田ヒカルと浜崎あゆみの時代で、R&Bやトランスを非ディスコ的な解釈で歌う時代だった。その後のPerfumeにしても、言葉の元来の意味での「ディスコ」ではなかったですからね。そういう流れがあって、00年代後期から登場したAKBは非ディスコだった【5】わけだけど、10年以上の時を経て再びメインストリームにディスコが戻ってきたのが今回の「恋チュン」なんじゃないかなと僕は思っています。

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