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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×真実一郎[現役サラリーマン]

──今夏『あまちゃん』と並んで最大の話題を博し、「倍返しだ!」という流行語も生んだ、久々の大ヒットドラマが誕生した。一種社会現象化までした『半沢直樹』の成功の要因を、サラリーマン文化論から考える。

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第1作刊行以来、地道に売れ続けていた銀行小説が、このドラマ化で再びヒットに。シリーズ名も、通称「オレバブ」から「半沢直樹」に変更された。確かにこっちのほうがいいかも……。

真実 ドラマ『半沢直樹』は、日本のサラリーマンを主題にした作品の集大成だなと思って、僕はとても面白く観ました。『半沢直樹』は小説原作(原題『オレたちバブル入行組』04年、『オレたち花のバブル組』08年)ですが、サラリーマンを描いた小説として、1950年代には源氏鶏太的【1】な「戦後の社内政治を勧善懲悪でハッピーエンド」という前向きな素朴さが主流だったのに対し、景気が悪くなってきてそれがリアリティを失った70年代頃には、城山三郎【2】とか山崎豊子【3】に代表される、いわゆる「企業小説」で組織に振り回される個人の悲惨な戦いを描いたシリアスな作品が増えた。そして『半沢』シリーズは、悪く言うと新しさはないんだけど、城山三郎的な個人VS組織のシビアさの中で、源氏鶏太的に勧善懲悪で「正義は(たまには)勝つ」ところを描くという、日本のサラリーマンコンテンツのいいとこ取りをしている。そういう点で作者の池井戸 潤【4】は、源氏鶏太・城山三郎に続く直木賞サラリーマンもの作家の完成形だと思いました。それをドラマにするに当たって、プロットはほぼ原作そのままに、キャスティングと演出の妙で見せていた。大映テレビ【5】的な大げさな演技を取り入れて、時代劇的な要素を取り込むことで、世代を超えたヒットにつながった。

宇野 僕がまず思ったのは、『半沢直樹』の放送枠であるTBS日曜劇場で演出の福澤克雄【6】さんがやってきたことって、「戦後を時代劇として描く」ということだったんですよね。つまり、松本清張や山崎豊子の有名原作が近過去やリアルタイムの時代の精神を表す共感コンテンツとして描いてきた「戦後」を、徹底して「時代劇」として描いたことだと思うんです。時代劇って本質的にはコスチュームプレイで、だからこそほとんど「キムタク」のコスプレをしているような状態の木村拓哉の主演【7】こそがハマっていたりした。ただ、それがさすがに一回りしてネタ切れになり、キムタクのコスプレにも飽きが来てしまった。『南極大陸』はその顕著な例でした。

 そうしたとき、次のステージに行くにはどうしたらいいかという答えが『半沢』だったんだと思います。コンセプトは2つあって、ひとつは思い切って「現代劇にしてしまう」ということ。それも、時代は現代日本なんだけど、都市銀行という戦後の古いサラリーマン社会が一番色濃く残っているところを舞台にすれば、"時代劇"をやってきた彼らのノウハウを活かすことができる。これは原作自体がもともとそういうコンセプトで、そこを活かしたつくりにしたんでしょうね。もうひとつは主にキャスティング面にいえることで、いわゆる舞台俳優や映画俳優を中心に組み立てるということ。これは、これまでのノウハウを動員すれば、有名俳優にコスプレさせるのではなくて、舞台俳優のアクの強い魅力を引き出すことができるという自信の現れでしょうね。このキャスティング戦略を背景に、これまでの時代劇的テイストが、真実さんが指摘したように、その延長線上にあるかつての大映や東映のB級ドラマの流れに進化している。この2つによって、行き詰まってきていた日曜劇場をアップデートさせることに成功したなと感じています。

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