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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【10】

オウム死刑囚の証人尋問に見る日本的な“司法取引”の成立要件

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の“意図”──。

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「オウム裁判」
1995年の目黒公証役場事務長監禁致死事件に関与したとして起訴された、オウム真理教元幹部の平田信被告の公判で、東京地裁が、同元幹部の井上嘉浩、中川智正、林泰男(現姓・小池泰男)の3人の死刑囚の証人尋問を決定。死刑確定者に対する証人尋問は極めて異例であり、尋問の方法や証言の内容に注目が集まっている。

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『オウム事件 17年目の告白』(扶桑社)

 2011年末、16年10カ月にわたり逃亡を続けたオウム真理教の元幹部・平田信が自首しました。13年中には開かれるであろう彼の公判において、同じく元幹部の井上嘉浩ら3名の死刑囚の証人尋問が決定されるなど、事件発生から20年近くが経過した今、オウム関連の情勢がにわかに騒がしくなっています。

 オウム裁判と聞いて私が真っ先に思い出すのは、教団幹部に対して軒並み死刑が宣告される中、同様に極刑が予想された前出の井上と元幹部の林郁夫に対して、一審で無期懲役の判決が下されたことです(林は98年、井上は00年)。両名の証言が事件の解明に大きく寄与した事実を踏まえ、当時マスコミを中心に「事件の内幕を暴露すれば刑を軽くすると匂わせるなど、日本の法律では認められていない、ある種の“司法取引”が行われたのではないか」との疑惑がまことしやかにささやかれたものです。

 もちろんそのウワサはなんらかの証拠に基づくものではなく、真偽のほどはわかりません。ですが、実は日本の刑事司法の現場において、厳密には司法取引とはややニュアンスが異なるものの、それに類する“駆け引き”が日常的に行われていることをご存じでしょうか? 法的に認められていないことがなぜ、どのような形で行われているのか? 今回はそのあたりの内情についてお話ししましょう。

 そもそも司法取引とは、刑事裁判において弁護人が検察官と取り引きし、被告に罪を認めさせるかわりに求刑を軽くしてもらったり他の訴えを取り下げてもらったりする制度のこと。アメリカでは法に明記され、全事件の8割以上に適用されているといわれ、日本でも導入すべきという議論はありますが、法律上は存在しないことになっています。

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