サイゾーpremium  > 特集2  > 給料は上がりません!【ミリオンセラー編集者】の悲喜こもごも
第2特集
村上春樹"100万部超"の作り方【2】

「ボーナスがチョット増えただけです(涙)」 ミリオンセラー編集者の悲喜こもごも

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──書籍編集者の夢のひとつともいえる100万部超えの”ミリオンセラー”。会社や著者には多額の利益や印税がもたらされるが、こうしたメガヒットを裏で支えた編集者にはどのように還元されるのだろうか? その実情を見ていこう。

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『電車男』(新潮文庫)

不況の叫ばれる出版界でも、今回の村上春樹の新作のように、時折現れるミリオンセラー。発行元の出版社に巨額の利益をもたらすのはもちろんのこと、その出版を企画した編集者もさぞかし厚遇を受けているのでは……。そんな推測から、ミリオンセラーを手がけた編集者に話を聞いてみたが、現実はそうとも言えないようだ。

「かつて乙武洋匡氏の『五体不満足』(98年/550万部/講談社)を企画した編集者や、2ちゃんねるスレッドをまとめた『電車男』(04年/101万部/新潮社)の編集者などは出世を遂げたという話を聞いています。自分も通常の2倍のボーナスが出ました。著者には1億円超の印税が入るので、それで家を建てたといった話も聞きますが、サラリーマンである編集者に入るお金はそれくらいです。また、自分の立てた企画が通りやすくなるなど、社内的な立場も良くなりました。しかし他社の編集者では、100万部を売ったのに大した評価もされないと、逆に不満を募らせている人もいますね」(中堅出版社の編集者)

 1冊当たり、著者印税を除く6割が粗利となる出版業界において、100万部が売れると数億円の収益が立つ計算になるのだが、編集者にはそこまで還元されないようだ。小出版社でミリオンセラーを出した編集者にも話を聞いたが、「ウチはもともとボーナスすらないし、自分もいつクビを切られてもおかしくない状況ですよ」と、さらに悲惨な状況だった。

「決算の時に少しだけ余分にボーナスをもらえましたが、部門のみんなに分け与えて、1回飲みに行ったら消える程度のもの。会社に利益をもたらしているのは自分の本なのに、査定の段階では『作品性』とか『出版文化の理想』を持ち出されて、数字があまり評価されなかったりするんです(笑)。現在、大手出版社で編集局長や部長の役職に就いている人は、ヒット作を手がけた経験のある人が多い印象ですが、『若い編集者がミリオンを手がけて出世した』という話はほとんど聞きませんね」(小出版社の編集者)

 ではミリオンセラーで得られた利益は、どこへ消えているのか?

「それは出版社により異なると思いますが、大きなヒットが出るたびに社員を増やしているような場合は、その給与の支払いに消えています。また社内の編集者で、年間で黒字を出せる人は半数以下という出版社もあるので、彼らの赤字の補填に使われている場合もあるでしょう。また小出版社の場合は、大手出版社から転職してきた人が部長などのポストに収まることが多いんですが、わざわざ規模の小さいところに落ちてくるわけですから、無能な人が多い。『なんで俺の稼いだカネで、あいつらを養わなければいけないんだ!』という思いはムチャクチャありますよ。せめて自分の給料分くらいは、自分の企画した本で稼いでほしいですね」(前出・小出版社の編集者)

 また、中小出版社では編集者が高給を得るようになるのは、部長や取締役といったクラスまで出世してから。それ以下の編集者は“働きアリ”扱いで、特に小出版社の場合は、新入社員並みの給与で酷使される場合も多いそうだ。そのためミリオンセラーを手がけながらも、翌年には転職をしてしまう人も多いのだとか。

「給与交渉でモメて、出て行く結果になることが多いんです。小さな出版社で働いていて実力がある場合は、そこで地位や給料を上げるよりも、大手に移って“給与のベース”を上げるほうが簡単ですから。集英社、講談社、小学館、あと双葉社や角川書店などは編集者の待遇がいいイメージですね。また、少人数の規模を維持しつつ、話題作を出している太田出版のような出版社も、おそらく編集者は厚遇されているのではないでしょうか」(同)

 そして、ミリオンセラーを生み出した作家との付き合いも楽ではない。

「大物作家や数字を持っている著者は、当然ながら引く手あまたの状況なので、ガッツリと付き合わないと出版企画に乗ってはもらえない。飲みに行くのはもちろんのこと、その作家が主催するイベントにも顔を出したりと、仕事を超えた範囲での付き合いも忙しくなります。中にはミリオンセラーで周囲にチヤホヤされるようになってから、人が変わってしまうような作家もいますからね……」(前出・中堅出版社の編集者)

 巨額な利益を生み出しながらも、冷遇され続ける編集者たち。彼らを題材に、『漫画家残酷物語』ならぬ『編集者残酷物語』なる書籍が発行される日も近いかもしれない……。

(取材・文/古澤誠一郎)

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