サイゾーpremium  > 特集2  > 出版社ウハウハでも書店からは非難轟々の【村上春樹】狂騒曲
第2特集
村上春樹"100万部超"の作り方【1】

作られたミリオンセラー村上春樹狂騒曲

+お気に入りに追加

1306_haruki_1.jpg

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
著/村上春樹 発行/文藝春秋 価格/1785円
主人公・多崎つくるは、大学進学で上京して2年目に、突然地元の親友グループから縁を切られる。それは彼の中に深い傷を残した。それから16年後、鉄道会社に勤めるつくるに、友達以上恋人未満の関係にある沙羅は「4人から縁を切られた理由を探るべきだ」と告げる。彼はその言葉に従って、彼らを訪ねる旅に出た──という物語。社会現象となった『1Q84』以来の新刊ということもあり、発売が予告されるやたちまち話題に。世間の期待も高まり、発売前日の4月11日時点ですでに4刷50万部を超え、1週間でミリオンを達成するなど、驚異的な売り上げを記録している。


──4月、村上春樹の新刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が発売され、各メディアがその熱狂ぶりをこぞって報道した。一体なぜ、これほどまでに村上春樹の作品は売れるのか? 遅ればせながら本誌もこのフィーバーに乗っかり、過去作品の研究や、宗教家や批評家、ハルキスト・アイドルなどによる新刊レビューを敢行。今、最もノーベル文学賞に近い日本人・村上春樹の実態に迫った。

 4月12日の発売から7日目にしてミリオンセラーを達成した村上春樹の新刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)。読者がバーゲンさながらに、目当ての書籍に殺到する風景は、初版部数290万部を記録した『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(04年発売、静山社)の発売時を彷彿とさせる出来事だった。

 しかし、いつから村上春樹氏の新刊がこれほどまでに爆発的な勢いで売れるようになったのだろうか? まずは一連の流れを見てみよう。2002年発売の『海辺のカフカ(上下)』(新潮社)や04年の『アフターダーク』(講談社)の頃は、確かに話題にはなったが、社会現象になるほどではなかった(こちらの記事参照)。分水嶺は、09年に新潮社が発売した前作『1Q84』にあるのだろう。同時発売となった『1Q84 BOOK 1』『BOOK 2』は、発売日までタイトルと価格、2巻同時発売という情報のみが開示され、書籍の内容については一切伏せられた。この戦略が話題を呼んで、メディアも大々的に取り上げて、発売から約2カ月で『BOOK 1』『2』同時にミリオンを達成。しかも、それぞれ初版刷り部数が20万部、18万部と、その後の売り上げからすると少なかったこともあって(それでも一般の書籍としては十分な数だが)、市場ではあっという間に品薄状態になった。増刷しても書店の注文に追い付かない状態が続き、結果的に消費者の“飢餓感”を演出することにもなった。

 この例にならってか今回、文藝春秋も2月に発売の告知を掲載した際には、タイトル・発売日・価格、それと「短い小説を書こうと思って書き出したのだけど、書いているうちに自然に長いものになっていきました。僕の場合そういうことってあまりなくて、そういえば『ノルウェイの森』以来かな」という村上の談話のみを発表した。

 ある文芸出版社の編集者によると、「『1Q84』の際に村上と新潮社がこの戦略で成功したので、今回も村上から文藝春秋にその話を持ちかけたという話だ。発売前まで社内でもゲラを読んだのは、社長以下経営トップ数人というほど、情報統制には超厳戒態勢が敷かれていた。また今回、『1Q84』ほか多くの作品を手がけてきた新潮社ではなく、文藝春秋から刊行したのは、文藝春秋の村上担当の女性編集者が急逝されたので、村上氏から追悼の意を込めて、1冊書きたいという申し出があった」との噂も出ているようだ。

 また、都内書店員A氏は「文藝春秋の情報コントロールは本当に徹底していた。営業担当者に、本の詳細について聞いても『まったく知らない』と逆に困っていた様子。発売日前日には、書店にも本が届いたが、客の目に触れないようにしていた。販促用ポスターも同様で、発売日までは絶対掲示しないようにと、わざわざ電話があったほど。表紙画像が一般人によってネットにアップされたのは、発売が解禁される午前0時の確か2時間前くらいだったので、情報統制はまずまず成功したのでは」と話す。

 このように、期待感を煽る戦略に出た文藝春秋だが、「初版刷り部数の設定には、社内で慎重派、積極派と意見が分かれたようで、苦労していた」(文芸系出版社社員)様子。結局、同社は初版30万部との結論を出した。しかし、書店やネット書店からの注文と問い合わせが殺到したため、発売前日の11日時点で刷り部数は4刷・50万部と一挙20万部を上積みすることになったのだ。

 発売初日もお祭りそのもので、代官山蔦屋書店(東京・代官山)でのカウントダウンイベントや、三省堂書店神保町本店(東京・神保町)では入り口に「村上春樹堂」と看板を掲げて、早朝から店頭でワゴン販売を実施するなど、書店での“春樹フィーバー”を各局のワイドショーが報じるほど。文藝春秋も特設サイトや「週刊文春」などの自社媒体でこの話題を発売前後に繰り広げており、発売と同時に“祭り”は最高潮に達した。

「PubLine(紀伊國屋書店が提供するPOSデータ)など書店の売れ行きをみると、初回に仕入れた分のほとんどが初日に売れてしまった。紀伊國屋書店新宿本店では3日間で2700部を完売し、売上率は前代未聞の101%超え。仕入れを上回る販売部数となっているのは、おそらく店舗間移動などで外部から調達したのだろう」(出版社営業)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年8月号

中韓エンタメ(禁)大全

中韓エンタメ(禁)大全
    • ブルース・リーからBTSまで【中韓エンタメ受容史】
    • 【中国ヒップホップ】の潜在能力
    • 【K-POP製作陣】が語る日本の課題
    • 【BTS】が成功して少女時代がコケた理由
    • 芸能界革命【中国アイドル】ブーム
    • 乃木坂より良い!?【Cアイドル】6選
    • 国家も支援する中国の【食動画】とは?
    • この【食動画】が見たい!セレクション
    • 【中国ファッション界】急成長とリスク
    • 【中国アート】市場の成熟度
    • 【菊地成孔】フロイディズムが息づく物語
    • 【笛木優子】韓国で女優を志すきっかけ
    • 【韓流ぴあ編集長】恥部も暗部も映像化する底力
    • 【片山慎三】今の韓国映画の原型!?60年前のサスペンス
    • 【キム・ソンフン】隠蔽された民主化の歴史を追う
    • 社会問題化する【韓国ネット民】の闇
    • 今も根強い韓国国内の【地域差別】
    • Jリーグも完敗の【中国サッカー】
    • 【朝鮮族】をつなぐサッカー文化
    • 【カンフー映画】の盛衰と進化の旅
    • 極東【バイオレンス】映画祭
    • 急速に広がる【中国SF】の世界
    • 【中国映画】1兆円市場・真の良作
    • 【2.5次元ミュージカル】13億人が熱視線

韓国人気モデル「ジェナ」日本初セクシー

韓国人気モデル「ジェナ」日本初セクシー
    • 【ジェナ】韓国の美モデル参上

NEWS SOURCE

    • レアル移籍の【久保建英】を狙う魑魅魍魎
    • 浜崎あゆみの二番煎じ!?【安斉かれん】て誰?
    • 【参院選】裏の見どころは「不正操作」?

インタビュー

    • 【井桁弘恵】令和初の仮面ライダー美少女
    • 【ゴジゲン】ずっと終わらない永遠の放課後
    • 【FNCY】ヒップホップのニュー・クラシック

連載

    • 【小倉優香】韓国の友達が多いんです。
    • 【日向カリーナ】ブラジル系モデルの古風な一面
    • 愛しさと、切なさと、【熊田曜子と】
    • スマホとSNS以降の【ネットの未来】
    • 【安藤寿康】人間は"教育"によって生かされている(前)
    • 高須基仁/【反社】との交際くらいで騒ぐな!
    • 己の殻を破る【ギャル】が祭に集う
    • 中国【ファッションアプリ】の裏事情
    • 【Lil Nas X】栄光と挫折と突然の告白
    • 町山智浩/【トム・オブ・フィンランド】ゲイ・カルチャーの革命家
    • 医師と大手メディアと【製薬会社】の利益相反
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」
    • 笹 公人「念力事報」/闇営業物語
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/『ホットギミック』"鈍い女"がモテる理由
    • LAのDJが懐古する【90年代のクラブシーン】
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 【都市計画】のスペシャリストがビールで街を盛り上げる!
    • 幽霊、殺されても咎人となるニート。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』