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第1特集
「ハイブランドの裏側」ファッション座談会【1】

アルマーニからユニクロまで!ファッション誌が絶対書けないアパレル業界の“掟”

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――ユニクロの新卒離職率は5割──。先日、そんなニュースが話題となったが、アパレル業界の就労事情は決して良いとはいえない。だが、ほとんどのアパレル企業がブランド別に財務状況を公開しておらず、その現状はブラックボックスとなっている。ここでは、同業界の中心で働く面々の声から、アパレル業界の裏話に耳を傾けてみたい。

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(写真/永峰拓也)

【座談会参加者】
A…アパレルメーカー社員。
B…ファッション誌編集者。
C…アパレルメーカープレス。

A (「サイゾー」をめくりながら)うわっ! この雑誌、全然広告入ってないじゃん(苦笑)。よくこれで成り立つよ(笑)。

B まあ、「サイゾー」さんはクライアントウケする雑誌じゃないから、書きたい放題なんだろうけど(笑)、ファッション誌は広告が生命線だから毛色が違うよね。

C で、今回はそんな「サイゾー」さんがアパレル業界の裏側を知りたいってことで集まったんだけど、まあ、ファッション業界って日常的に会う相手が限られているから、情報が外に出にくい部分はあるのかもしれないね。

B 業界の中では、人も動くし話題も広まりやすいんだけどね。百貨店の販売員とか、「あのコは売るね」みたいな評判が立つと、実際にブランドに引き抜かれることも多いし。有名なブランドの販売員でも初任給12~13万円とかはザラで、店長でも手取りが20万円に届かない人も多いから、店を替えないととキャリアアップは難しい。しかも意外と体育会系の縦社会で、百貨店の裏では上司が部下に手を上げている光景もよく見られる。

A そういえば、コム・デ・ギャルソンの店員は店長含め全員チャリ通で、みんなスゴい金なさそうだったな(笑)。ユナイテッド・アローズとかビームスとかのセレクトショップの販売員給料もヤバイらしい。だけど、時給800円程度のバイトでも、人気すぎて順番待ちなんだよね。

C 一方で外資系高級ブランドのジャパン社は、バカみたいに給料を払う。だけどそこに上がれるのは本当に実力がある一部の人だけ。転職組で多いのは、元キャビンアテンダントなんだよね。しかも彼女たちは、本当に優秀なんだよ。おもてなしも上手で、どうすれば上客が喜ぶか、本当に心得ているから、引き抜きも多い。

A だから待遇がいいのも当然なんだよ。おかげで、ユニクロみたいに辞める人が多かったりすることもないし。

C それは世界観を売って儲ける高級ブランドと、数を売って儲けるユニクロの違いですよね。ユニクロは大量生産で数を売らなきゃいけないから、どうしても人手が必要になる。商品の欠品チェックや補充の作業も多いので、営業中に作業が終わらず、残業続きでキツさを感じて辞める人は本当に多いよ。

B 一方で外資系は「いつ日本から撤退するかわからない」というリスクもある。ヴェルサーチなんかも一時撤退してたけど、日本では野球選手とか野村沙知代とかコワモテが着ているブランドという印象で、イメージがとにかく悪くなってしまった(苦笑)。

C 顧客だから、別に彼らが悪いってワケじゃないけど、大企業のエグゼクティブや富裕層は、やっぱりこういった人と同類に扱われるからと敬遠する傾向になりがち。本国イタリアや中東では、上客がついてバンバン売れているんだけどね。

B トラサルディも日本ではダメだけど、イタリアでは今も高級ブランドとして支持されている。エンポリオ・アルマーニも今はEXILEが着たりして格が落ちた感じだけど、海外だと全然そんなイメージもない。

A シャネルやカルティエなんかは日本や海外でも人気があるけど、逆パターンもあるよね。ティファニーとかは日本でとにかく売れる。コーチも日本では売れているけど、ヨーロッパではお店をほとんど見ない。日本ではラグジュアリーっぽいイメージのトリーバーチ【※1】も海外では全然そんな扱いをされてないし、日本では人気のゴヤール【※2】も、パリの本店を見たら大したことない店だった。日本では本国のイメージのままだと売れない場合が多いから、強引にブランディングする必要があるんだよね。そこで失敗した最近の上陸ブランドといえば、アバクロ(Abercrombie & Fitch)かな。というか、入ってきたのが、とにかく遅かった。

C しかも並行輸入品を買っている人は前から多かったのに、本国アメリカの2倍くらいの価格設定で日本で売ろうとして大コケした。はっきり言って、日本人の客をナメているとしか思えない。

B 外資の高級ブランドのライセンス打ち切りも、目立ち始めていますよね。ライセンス契約で日本に進出していたマーク・ジェイコブスも、2008年にマーク・ジェイコブス・ジャパンを設立しています。昔のライセンス契約には「売り場を確保しやすい」「日本のノウハウで上手に売ってもらえる」というメリットがあったんでしょうが、不景気の今は「自分たちで売ったほうが儲かるんじゃないか」と考えるブランドが増えてきた。バーバリーと三陽商会のライセンス契約が2015年で切れて、更新しない可能性があることは話題になっていますよね。

A バーバリーは三陽商会以外にも、傘、ハンカチ、革小物など、アイテムごとに10以上の会社とライセンス契約を結んでいたけど、革小物を作っていた会社はライセンスが切れて自主廃業した。三陽商会も売上高の半分以上がバーバリー関係で占められているので、ライセンスが切れれば本当にマズい。一度は浜松町の高層ビルに移ったバーバリー部門が、四ッ谷の古いビルに戻ったり、今年に入って230人の早期退職も募集したりと、「15年問題」を見据えて、やるべきことを粛々とやっている印象だよね。

C 三陽商会はバーバリーのドメスティックブランド「バーバリー・ブラックレーベル」の売り上げが大半を占めているから、会社の存続にも影響があるかもしれないね。ブラックレーベルは日本のみで展開しているラインだから、消滅する可能性があるって話だよ。

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