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佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第57回

真のオープンソースプラットフォームを実現する!? Firefox OSの挑戦

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

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2月にスペインで開催された世界最大規模の携帯通信関連見本市「Mobile World Congress 2013」で、詳細が明らかにされたFirefox OS。本イベントの最大の話題をさらった。

 ウェブブラウザのFirefoxや、メーラーのサンダーバードで有名なモジラ・コーポレーションが開発するモバイルOSを搭載した端末の日本市場導入に向け、KDDIとモジラが手を組むことが発表された。2011年から始まったFirefox OS計画は、今のモバイル市場にどんなインパクトを与えるだろうか?

ウェブブラウザで有名なFirefoxの名前を冠したモバイルデバイス向け「Firefox OS」が、俄然注目を集めている。アップルやグーグルの支配を終わらせ、モバイルの世界を再び携帯通信キャリアの支配へと引き戻す強力な武器となるのでは、と考えられているのだ。

 Firefox OSは、非営利企業のモジラ・コーポレーションが完全なオープンソースで開発している。モバイルの世界がグーグルやアップル、アマゾンなどの巨大ネット企業に寡占されつつあることを危惧したモジラの研究者アンドレアス・ガルが2011年、「独占支配されず、皆で参加できるオープンなモバイルOSを作ろう」と呼びかけたのを契機に、計画がスタートした。

 ガルは米メディアのインタビューで、こうしたことを語っている。

「グーグルのアンドロイドはオープンソースと言われるが、本当のオープンソースではない。グーグルのプラットフォームはアップルのiOSとなんら変わりない。プラットフォームのすべて――デザインや開発やディレクションまで含めて、すべてグーグルに支配されているからだ」

「グーグルは閉ざされた扉の裏側ですべての技術的決定を下してから、外部にリリースしている。デバイスが登場してからしか、ソースは見られない。それはオープンとは言えない。だからグーグルがやっていることは、アップルと変わらない。単に、ソースに時々アクセスできるかどうかという違いがあるだけ」

 これに対して、Firefox OSは2つのポイントがある。まず第一に、性能が低い安価な端末でも軽快に動作すること。第二に、HTML5に完全準拠していること。

 安価な製品が出てくれば、まだスマホが普及していない途上国の市場に食い込める可能性がある。すでにiPhoneとアンドロイド端末に寡占されている先進国と比べれば、こうした市場ではFirefox端末は売れるかもしれない。実際、最初に端末が発売されるのは、コロンビアやベネズエラ、ブラジル、ハンガリー、メキシコといった国々だとアナウンスされている。

 しかしもっと重要なのは、第二のポイントだ。HTML5に完全準拠しているということは、すべてのアプリはウェブブラウザ上で動くウェブアプリになるということである。

 モバイルアプリの業界では、これまでも「将来はウェブアプリなのか、それとも今のようなネイティブアプリ【註:端末上で実行されるアプリ】優位が続くのか」が議論されてきた。

 もしウェブアプリが主流になれば、OSに合わせてネイティブアプリを作る必要がなくなり、OSの上に構築されているApp StoreやGoogle Playのような独占的ストアを経由する必要がなくなる。つまりはパソコンのアプリと同じように、モバイルのアプリも完全に自由化されてしまうということだ。

 かといって、この動きにアップルやグーグルが反対しているのかというと、そうでもない。このへんはさまざまな政治的バランス問題を内包しており、アップルは実はHTML5を推進している。一方でネイティブアプリによって自社の優位性を保ち、App Storeでの収益を確保しているという二律背反的な立ち位置になっている。

 しかし通信キャリアにとっては、求める将来像は明確だ。ウェブアプリ化を進めることで、これまでアップルとグーグルの2社に独占されていたモバイルの主導権を、奪い返せるかもしれない、ということだ。

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