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佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第57回

最後に勝つのは、実はアマゾンか?ハードベンダーの限界を見据える

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

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『アップル、アマゾン、グーグルの競争戦略』(エヌティティ出版)

「アップル神話」に陰りが見え始めたと、囁きあう声が聞こえてくる──。最近、アップルの株価が急落した。一時は時価総額世界1の座にまで就いたものが、どうしたのだろうか? これには、同社だけに限った話ではない「ハードベンダーの限界」という問題が密接に関わっているのだ。アップルの株価が急落している。2012年9月の最高額から4割近くも下落したというから尋常ではない。

 アップルのティム・クックCEOはこの原因について、市場の不振に加え、MacとiPadの「共食い(カニバル)」があったと説明している。つまりパソコン市場が縮小して、タブレットに食われている。それがアップルの中でもMacからiPadへの移行として表れているのだという説明だ。

 クックはこうも発言している。

「カニバルは数字はマイナスだが、大きなチャンスでもある。われわれの基本方針はカニバルを恐れないということだ。もしカニバルを恐れれば、ほかの企業がその部分に食らいついてくる」

 これは正しい認識だ。これまでもさまざまな企業が、自社内でのカニバルを避けるために新しい市場創出を尻込みし、結果としてその先の市場を他社に奪われてしまうというようなことを引き起こしてきた。それに対して、自社の製品が売れなくなる可能性も承知で、タブレットやスマホの市場創出に向かっていったアップルはあっぱれというしかないし、Macの売り上げが落ちていることを悲観材料にする必要はない。

 しかし一方で、この先のアップルがどうなるのか? を考えると、かなり厳しいともいえる。なぜならハードベンダーであるアップルは、常に新製品によってイノベーションを繰り返していく必要があるからだ。

 アップルはiPhoneとiPadによって、スマホとタブレットという、これまで存在しなかった新しい市場を創出した。これは素晴らしいイノベーションだ。しかし一方で、いったん作られた市場はどんどん進化し、拡大し、それまでの製品をコモディティ(日用品)化していく。サムスンやHTCなどの追い上げでAndroidをベースにした安価な機器が大量に投入されていくと、アップルの製品は高級さやデザインの良さでは相変わらず他社の上を行っているとはいえ、市場全体でのシェアは当然ながら低下していく。

 すでに先進国のスマホ市場は飽和してきていて、今後期待される市場は中国やインド、東南アジアなどの新興国に移ってきている。ところがこういう市場では、iPhoneやiPadのような高価な製品はなかなか売れない。Androidベースの安価な韓国製、台湾製のスマホのほうが、圧倒的に競争力が高いのだ。そしてこういう新興国市場に今一番食い込んでいるのが韓国のサムスンで、世界市場全体では同社の市場支配力がどんどん高まっている。

 実際、12年の第4四半期の数字を見ると、サムスンのスマホ販売台数は6300万台とトップで、アップルより1500万台あまりも多かった。市場シェアではサムスンが29%でアップルが22%。この差は、徐々に広がってきている。これは明らかに新興国マーケットに主軸が移ってきていることの表れだ。

 アップルはサムスンなどに対抗するため、廉価版のiPhoneを出すのではないかという噂もある。真偽は定かでないが、高級イメージのブランド戦略で戦ってきたアップルが、サムスンと同じような安価なブランドイメージに対抗して果たして大丈夫なのか? という懸念もある。

 これはハードベンダーが成長して巨大化していくと必ず抱えてしまうジレンマで、アップルとしては難しい選択になるだろう。iPhoneやiPadの先にさらに先進的な製品を出し、ユーザーを惹きつければいいのだが、そんなことはジョブズが生きていたってそう簡単ではない。

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