サイゾーpremium  > 連載  > 町山智浩の「映画でわかるアメリカがわかる」  > 町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第182回

――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。


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『パーフェクトネイバー正当防衛法はどこへ向かうのか』

フロリダ州で起きた隣人による銃殺事件を追うドキュメンタリー。差別、銃社会、そして退避義務なき正当防衛法の問題を浮き彫りにする。

監督:ジータ・ガンドビール。Netflixにて配信中。


子どもの頃、空き地や裏路地で草野球をした人なら、ボールが塀を越えて近所の家に落ちてしまった時の気まずさを覚えているだろう。特に、その家に住むのが子ども嫌いの年配者の場合。さらにその年配者が人種差別的で、遊んでいた子どもが有色人種の場合に何が起こるかを記録したのが、今年のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞の候補作『パーフェクト・ネイバー 正当防衛法はどこへ向かうのか』(Netflix)だ。

この作品には基本的にカメラマンがいない。ほとんどのシーンが、ドアから撮影した監視映像、警察官の制服に着けられたボディカム、パトカーにつけられたダッシュカムだけで構成されているからだ。

2023年6月2日、フロリダ州オカラ郊外の住宅地でシングルマザー、アジケ・オーエンスさん(当時35)が同じ敷地内に住むスーザン・ルイーズ・ロリンツ(同58)に射殺された。ロリンツは地元警察への通報の常習者で、警察官たちはいつかこうなることを恐れていた。

そこは一戸建ての賃貸住宅が真ん中の共有部分の芝生を囲むように丸く並び、芝生では夕方や週末、子どもたちがボール遊びや鬼ごっこでにぎやかに遊んでいた。その芝生は親や隣人が家の中から子どもたちを見守ることができる、安全な遊び場のはずだった。

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