サイゾーpremium  > 特集  > 裏社会学  > 不戦屈敵から平和共存へ "ヤクザ抗争"変貌最前線

──暴力団関係者による抗争や発砲事件を目にする向きも多いだろう。だが実は、現在は最も暴力団による抗争が少ない時代だという。そんな抗争の最新事情を見てみよう。

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『戦後ヤクザ抗争史』(イースト・プレス)

 2012年12月27日、福岡など5県の公安委員会は、改正暴力団対策法に基づいて工藤会(福岡県北九州市)を「特定危険指定暴力団」に、道仁会(同県久留米市)と九州誠道会(同県大牟田市)を「特定抗争指定暴力団」に指定した。

「特定危険」はミカジメ料などの要求を受け入れない事業者を襲ったうえ、以降も繰り返す恐れのある団体に対して指定され、警戒区域内において組員がミカジメ料を要求すれば、直ちに逮捕できるという。指定期間は1年。一方「特定抗争」は、抗争事件を繰り返し、付近の住民にも危険が及ぶ恐れのある団体に指定される。警戒区域内での事務所の新設や出入り、また対立している組織の組員を尾行などすれば直ちに逮捕できるという。指定期間は3カ月。

 12年10月30日に暴力団対策法が改正されて以来、この三団体に対しては改正で新設された「『特定危険』と『特定抗争』が指定されるのでは」と囁かれていたが、ついに現実のものとなったのだ。

 道仁会から分裂した一派によって06年6月に九州誠道会が結成された直後から、九州各地で両組織の組員が犠牲となる事件が頻発。特に07年11月に佐賀県内の病院で入院中の一般市民が組員と間違われ射殺された事件以降、当局は一刻も早く事態を収拾しようと全力を挙げてきたが、今もって対立抗争は収束と激化を繰り返している。

 こうした両組織間のトラブルについて、大手メディアは大々的に報道してきた。ニュースでしか事件を知らない人ならば、九州は国内屈指の危険地域だと思い込んでいるかもしれない。

 確かに抗争は起き、死傷者も出ているのだから、こうした地区はまったくの安全地帯とはいえない。だが、「九州での抗争は、暴力団抗争史上最悪とされた『山一抗争』に比べれば、事件や死傷者の数から見ても、かなりスケールは小さい」(全国紙社会部記者)というのが関係者の見立てだ。

 山一抗争とは、1984年6月、山口組内で次期組長として竹中正久若頭を推す一派と、山本広組長代行を推す一派との間で亀裂が生じたことに端を発する。その直後、反竹中派の直系組長たちは山本組長代行を会長とする「一和会」を結成。両派の溝はますます深まっていく。そして同年8月に山口組組員が一和会組員を刺殺したことで、抗争へと発展。85年1月には跡目を継承した竹中四代目山口組組長が中山勝正若頭とともに、一和会のヒットマンによって射殺される事件が発生した。

「一度に組織のナンバーワン、ツーを失った山口組は弱体化するのではと危ぶまれた。だが予想に反して組織の結束力は高まり、敵討ちを誓った組員たちは一和会に向けて一斉に報復を始めた。それにより、大打撃を与えたはずの一和会は一方的に押されてしまった」(前出・記者)

 そして86年から始められた他組織の親分衆による抗争終結への奔走が功を奏し、87年2月には事実上、抗争終焉を迎える。89年3月、一和会の山本会長は自身の引退と一和会の解散を決意。さらに山口組本部を訪れて謝罪したことで、正式に山一抗争は幕を下ろしたのである。

 だが、勃発から正式な終結までの5年足らずで大小300を超える事件が発生、双方合わせて約30名の死者と約70名の負傷者を出し、社会へ深い影を落としたのだ。

 山一抗争は業界内だけでなく、各方面にも多大な影響を及ぼし、とりわけ警察官や一般人にも負傷者が出たことで、暴力団に対する司法や取り締まりの強化が図られることになる。その最たるものが、92年3月に施行された暴力団対策法だろう。暴力団対策法は、暴力団構成員による暴力的な要求行為の規制や、暴力団の対立抗争による市民への危険を防止する措置を講ずることなどで、市民生活の安全と平穏の確保を目的として制定された。また都道府県公安委員会によって当該暴力団関係者からの聴聞を経た上で「その暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい」と判断された対象団体は「指定暴力団」と呼ばれ、全国には21団体存在している(12年3月現在)。

 現在、ヤクザたちを最も窮地に追い詰めている暴力団対策法は、山一抗争を原点としているのだ。

 だがもちろん、こうしたヤクザ同士の抗争は現代に限ったわけではない。戦後のヤクザ史だけを見ても、終戦直後の混乱期に始まり、東京オリンピック開催による特需景気で沸いた高度経済成長期や、昭和末期から平成初期にかけてのバブル期でも、常にヤクザたちは他組織と、もしくは組織内の派閥間で死闘を繰り広げてきた。

 しかし、実はヤクザの抗争事件は年々、確実に減少しており、今ほど穏やかな時代はないと言っても過言ではない。都内の指定広域団体三次組織組長は、こう語る。

「オレが入門した70年代には、毎日のようにヤクザ同士のいざこざがあったけど、当時は兄弟分や兄貴分が抗争で命を落としても、ニュースにはならなかった。それほど当時は、ヤクザの抗争なんていくらでもあったからマスコミも相手にしてなかったし、警察だってヤクザ同士のケンカにはずいぶんと甘かった。だけど、今では裏ビデオの販売でも全国紙に名前が出てしまう(苦笑)。当時に比べると、世間の目は信じられないくらいに厳しくなった」

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