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第1特集
音楽業界を崩壊させる!? 違法ダウンロード刑事罰化の真相【3】

ヒカシュー・巻上公一インタビュー JASRAC委員兼ミュージシャンが語るダウンロードと著作権の未来

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──かつてテクノ御三家のひとつに数えられたヒカシューというバンドでリーダーを務める巻上公一。ミュージシャンという肩書を持ちながら、JASRACの委員でもあるその男が、違法ダウンロード刑事罰化やJASRACのネット配信について語ってくれた。

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巻上公一氏。

 1978年に音楽ユニット「ヒカシュー」のリーダーとしてデビュー、口琴やホーメイなど「声」に着目したパフォーマンスを追求し、即興演奏家として第一線で活動する巻上公一は、黎明期から個人サイトを運営するなど、インターネットに積極的なミュージシャンのひとりである。氏はJASRACの委員でありつつ、JASRACの監視団体的な存在であるJ-scat(JASRACの不正融資疑惑を追求する会から発展し、97年に発足した日本作詞作曲家協会)の会員でもあるという、さまざまな立場からボーダーライン上で活動している稀有な存在。今回の強引な刑事罰化についても当然反対の立場ではないかと考えていたが……。

「特に反対はしなかったですね。今回の改正関係の文書は全部読んだけど、そう簡単に逮捕はされないでしょう。あんなの、ザル法ですよ。だからみんな変わらずダウンロードをするんじゃないかな。逆に100万人くらい捕まったら面白いけどね(笑)」

 ただ、もちろん、野放しでいいというわけではない。巻上氏は権利保護については慎重な立場だ。

「もうネット上ではあらゆるデータがコピーされてメチャクチャな時代になってるから、音楽だけじゃなくてマンガも映画もゲームも、権利を保護しようという動きは全部の領域で起こってくるよね。今、刑事罰化に反対してる作り手も、そのうち自分の権利が危うくなってくる。そのとき、やっと気づくんじゃない? 著作権というものは結構大事だと。今はなんでも自由が良いってなってるかもしれないけど、権利を守って創作意欲を出させるという意味では重要だし、あれがあって少しは一獲千金の夢もあったりするしね。そういったものが一切なくなると、つまらないんじゃないかな」

 とはいえ、過剰な権利主張を唱えたいわけでもない。

「YouTubeに自分たちの曲が勝手にどんどんアップされてるけど、ほったらかしにしています。良い音で録ってるので、本当は良い環境で聴いてもらいたいけど、便利なものはどうしようもない。もう若い世代はCDプレイヤーすら持ってないでしょう」

 刑事罰化を機に、合法なネット配信が進むという考えもある。実際、JASRACはYouTube、ニコニコ動画、Ustreamなどと率先して契約しており、ネット配信には積極的だ。

「JASRACにかかわった僕ら作家側がいろいろと提案したおかげで、JASRACはネット上での使用料の徴収方法について早くから模索し始めたんです。たとえば、12年くらい前かな、ネット上での楽曲使用に関して独自の認証システムをつくったんです。一部分でも楽曲が使われたら認証できるものだったけど、どこの企業や音楽配信サービスも採用してくれなくてね。あれがうまくいってたら、お金もかからないし、届け出も徴収もラク……と良いことだらけだったんだけど」

 今回の改正ではJASRACが暗躍したかのように叩かれているが、実際のところ、関係団体で構成された「STOP!違法ダウンロード広報委員会」には、JASRACは「協力」として小さくクレジットされているにすぎない。

「ただの協力でも、JASRACが全部やってると思われて、カスラックとか言われちゃう(笑)。JASRACが悪いという人が多いんだけど、もとが内務省の管轄下にあっただけで、今は作家の団体なんです。だから作家が何か言うと、結構変わるんです。ライヴハウスの徴収方式とか、僕が言って変わったこともいっぱいあるんですよ。ただ、若い会員が少なく、ネットのことに疎そうな年配の先生が決定権のある理事をやっているので、議題がわからずスルーする危険もあるでしょ。新しい動きに敏感な若い人が会員に増えれば変わると思う。みんながJASRACを見張って、良い団体にできるようにするのが、僕は一番良いと思うけど。中には官僚っぽい人もいるけど(笑)、良い人もいっぱいいるから」

(文/ばるぼら)

巻上公一(まきがみ・こういち)
1956年、静岡県熱海市生まれ。78年から現在までヒカシューのリーダーとして作詞作曲を手がけてきたほか、声の音響やテルミン、口琴を用いたソロワークやコラボレーションも精力的に行ってきた。ソロ最新作は『Tokyo Taiga』(Tzadik)。

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