サイゾーpremium  > 特集2  > 批判派と推進派の主張──批判派急先鋒「k...

──ネット上では10年ほど前から議論され続けてきたホメオパシーとニセ科学問題。この動向の中心人物であり、ネット以外の場でもホメオパシー批判をし続けている大阪大学教授で物理学者の"きくまこ"さんこと菊池誠氏に、あらためて科学者の目で、ホメオパシーの何が問題なのかを解説してもらった。

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希釈されすぎて、物質がもはや含まれていないにもかかわらず、有効と称されることに対して強く批判が寄せられるレメディ。「一人ひとりにあったものを処方する」とされるが......。

 ホメオパシーは18世紀にザムエル・ハーネマンによって提唱されました。日本語では「同種療法」と呼ばれ、病気の症状と似た症状を引き起こす物質を摂取すれば症状が治まるという考え方に基づいています。200年前にハーネマンが思いついたこの原理が、現在もそのまま信じられています。

 日本学術会議会長談話の通り、ホメオパシーには科学的根拠がありません。ホメオパシーで使用されるレメディとは、症状に効くという物質を限りなく薄く希釈した水を染み込ませた砂糖玉です。標準で100倍希釈を30回繰り返しますし、それ以上に希釈することもあります。これだけ希釈された水の中に、症状に効くという物質の成分は1分子も残っていません。ハーネマンの時代には物質が分子でできているという概念がなかったので、彼は、物質はいくら薄めても水の中に残ると考えました。その後、科学の発展によって分子の存在が明らかになり、今ではホメオパスもレメディに物質の分子が含まれないことを認めています。それではレメディの「効力」を説明できないので、今は「水が物質の記憶を持つ」と説明されますが、後付けの説明にすぎず、科学的な裏付けはありません。

 ホメオパシーの効果は臨床試験でも否定されています。推進団体は「有効性を証明する論文がたくさんある」と説明しています。しかし、実際にはデータの取り方に問題があるものが少なくありません。また、統計的な検証なので、被験者が少なければ、論文によって結果もばらつきます。そこで、さまざまな研究論文の手法や結果を総合的に検討して治療の有効性を調べるメタアナリシスという研究を行ってみると、実験の仕方がしっかりした良質な論文に絞れば、ホメオパシーにはプラセボ(偽薬)以上の効果がないという結論が出ています。数ある代替医療の中でもホメオパシーは、原理的にも臨床的にも「効かない」ことがはっきりしているという点で際立っています。

 代替医療が現代医療と穏健に共存するための条件は、現代医療を否定しないことです。日本では、助産院などに一番影響力を持っているホメオパシー団体が過激な主張をする団体であるため、現代医療との共存は難しいと思います。彼らは表向き、現代医療を否定していないと言いながら、講演や書籍ではあからさまに現代医療を否定しています。また、使う側が、ホメオパシーにはプラセボ以上の効果がないとはっきり認めることも重要ですが、これも難しいでしょう。

 代替医療を選ぶのも現代医療を選ぶのも、医療を受ける側の自由だという主張があります。しかし、そのためには十分な情報が与えられていることが必要です。代替医療のリスクや現代医療の必要性を説明せず、代替医療の効果を期待させる情報だけを与えて「選択の自由」を言うのではずるい。テレビや女性誌などで有名人の体験談が紹介され、ホメオパシーを含む代替医療を選択することが「進んだ考え方」であるかのようなイメージが広められています。しかし、その際、現代医療の代わりに代替医療を選択するリスクは説明されていない。そうこうするうちに、現代医療を拒否して死亡に至る例が起こってしまったわけです。ちなみに、ホメオパシーを選ぶのは自然志向の人が多いようですが、ハーネマンの時代にはむしろ自然ではない「科学的な治療」として始められたものでした。

 医師法や薬事法に触れるものは取り締まればいいのですが、そうではない場合、最後は個人の判断ということになります。しかし、判断のための情報が必要です。現在はまだ、個人が正しい判断をできるだけの情報が不足している状況だと思います。こんな代替療法があるけれど現代の科学ではこんなふうに判断されているという情報を、一般の人にもわかりやすい表現で積極的に出すということを、行政がやってもいいのではないでしょうか。(談)
(取材・文/小川たまか プレスラボ)

菊池誠(きくち・まこと)
物理学者。大阪大学サイバーメディアセンター教授。専門は統計物理学・計算物理学。「ニセ科学フォーラム」実行委員。著書に『科学と神秘のあいだ』(筑摩書房)、『信じぬ者は救われる』(香山リカと共著、かもがわ出版)など。

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