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辛酸なめ子のサバイバル女道 第10回

"恋して""踊れる"パリジェンヌに憧れて

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ルクスロー先生と比べると、姿勢の悪さが如実にわかります。

 フランスへの憧れをくすぶらせ続けて20余年、過去にはたびたびフランス語学校に通ったり、フランス男性とお茶を飲んだりしていましたが、記憶力と語学力と女子力に限界を感じて挫折。時間的にフランスに行くことも諦め、今では街で見かけたフランス人を凝視することで、フランス欲を紛らわせています。そんなある日、麻布十番をぶらぶらしていたら、気になるフライヤーを発見。「ときめいて、しなやかに、輝き続けるパリジェンヌ」というコピーで、フランス語とエクササイズとフランス文化を三本立てで学べる貪欲なプログラムの宣伝です。受講すればフランス女性に近付けるかもしれないと思い、講師のルクスロー雅子先生【註1】にコンタクトを取り、申し込んでみました。

 お会いしたルクスロー先生は、おしゃれで美しく、スリムで均衡の取れたスタイルの持ち主。「年齢なんて聞いてくるのは失礼な日本男性くらい」とおっしゃるので御年は推測することしかできませんが、かなりのアンチエイジング度です。教室は、麻布十番のビルの貸しスタジオ。一見殺風景な空間も、先生が深紅のバラやパリの地図、フランスの写真集を飾りつけることで小粋な空間に。全員にエビアンを支給するなど、隅々までフランス精神が行き届いています。講座を受けながらフランス水を飲むことで、血中フランス濃度が上がりそうです。

 講座の第一部は「心を磨く」と題して、フランス語とフランス文化を学びます。最初に一人ずつフランス語で自己紹介するのですが「Je m'appelle ○○(私の名前は○○です)」と名乗るたびに全員で「Enchant~!!(はじめまして)」と拍手する習わしで、だんだんフランス人のラテンノリが憑依したかのようにテンションが上がってまいりました。まず、レッスン後半に使われるエクササイズ用語【註2】を中心に学びます。続いて4月のテーマ「化粧品について」。隣の人と客と店員役になってロールプレイング。「Je voudrai sessayer ce rouge à lèvres.(この口紅試してもいいですか?)」「Biensûr, tenez!(もちろんです、どうぞ)」というやりとりで、やはりRの「ゴゴ……」という喉音を出すのが難しく、満足に発音できたのは、「どうぞ」を表すtenez!くらいでした。しかしフランス語の名詞には男性と女性の性別があるのが興味深く、口紅は(形状的に)「男」なのがさすがフランス人はわかってらっしゃるという感じです。フランスで口紅といえば赤が基本で、日本の口紅は色が薄いことを先生は嘆いていらっしゃいました。中学の時にフランス女に憧れて、手帳に「赤いルージュが似合う女になる」と抱負を書いた自分は間違っていなかったとうれしくなりました。フランスの女の子は、お母さんが真っ赤な口紅でお化粧する姿を見て育ち、女は一生女であるという生き方を学ぶそうですが、日本では母親が赤い口紅をつけるのはヤンキーファミリーくらい……(だからヤンキーの娘は早熟で色っぽいんですね)。 女性はいい年になったら女を捨てて枯れるのが普通だという風潮は寂しいです。フランス女性のように母と女の二面性を持つのが重要だと学びました(今の時点では、母にも女にもなれていませんが……)。

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クルゼを意識し、上体を起こすキツい体勢。

 続いて、先生がおすすめのフランス文化のレクチャーで、Coeur de Pirate【註3】というキュートな女性シンガーの曲を聴いたり、「椿姫」のバレエDVDで「L'élégance(優雅)」な動きを学んだり、短時間で濃密な講義です。エクササイズで「L'élégance」を出すには、柔軟な関節と、すっと伸びた背中のラインが重要だとのこと。「バレエを続けることは女性を続けることです」という先生の言葉が、後半のエクササイズにつながっていきます。フランスのイケメン歌手やダンサーについて語る時の先生の頬はピンク色に上気して、恋する乙女のようでした。疑似恋愛でドーパミンやセロトニンが分泌し、内側から美しくなれます。

下腹部の筋力こそパリジェンヌの証し

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↑画像をクリックすると拡大します。

 第二部は、「体を磨く」をテーマに、ピラティス、バレエ、ダンスなどを実習。先ほどまでスーツ姿だった先生が露出度の高いタンクトップ姿になり、アクセサリーマッスルをアピール。マットの上で「Creus(おなかのインナーマッスル)」を意識して体をひねったり、上体を起こしたりするのですが、ゆっくりした動作に見えてかなりキツいです。「お尻を動かすんじゃないよ、骨盤を動かすんだよ~!」と先生の檄が飛んできますが、女性性について意識が低いせいか、骨盤の動かし方がわかりません。股関節【註4】の柔らかさが、女体の優雅さやしなやかさを表現するのにとても重要とのことですが、ガチガチに固くて60度くらいしか開脚できません。アシスタントさんの「アン、ドゥー、トロワ」という手拍子に合わせて、脚を上げたり伸縮させたりしていたら、脚はつり、各所に鋭い痛みが……。鏡に映る自分のぶざまな姿を見ていたら侘びしくなってきましたが、「自分の欠点を知り尽くすことで、アピールの方法を研究」するのがフランス女性の特質だそうで、現実を直視しなければと思いました。「普段使いやすいところだけ使っていると、体が固まってしまいます。股関節から正しい意識を持つようにすると、体が柔らかくなって色気【註5】が出てきます」と、先生。とにかく、下腹部や股関節など子宮まわりを鍛えることが大切だと学びました。今まで仕事で頭や手ばかり酷使して、子宮を無視してきたことを反省しました。

 最後に、「椿姫」のバレエの振り付けから先生がエッセンスを抽出した、恋に悩む椿姫のダンスに挑戦。しかしぎこちない動きしかできず、フランスの夢がまた少し遠のきました。語学、精神に続いて、肉体的にも玉砕した感が。フランスは遠きにありて想うもの……。これからもフランスに片想いし続けることで、せめて女性フェロモンだけでも分泌していきたいです。

[註1]ルクスロー雅子先生
幼少時からバレエを始め、ヘアメイクアップアーティストを経てパリに10年間滞在、アパレルメーカーに勤務。アニエス・ベーとの出会いで、女性が女性として輝き続ける生き方に開眼。帰国後、AFAAインストラクター(エアロビクス&ピラティス)の資格を取り、パリジェンヌに必須の語学・文化・ダンスを学ぶ「ルクスロー」の講座を開催。月2回の少人数レッスンでパリジェンヌのエスプリを伝えている。webサイトはhttp://www.geocities.jp/luxury_parisienne

[註2]エクササイズ用語
Inspirer(アンスピレ) 息を吸う
Expirer (エクスピレ) 息を吐く
Creus(クルゼ) おなかをへこませて引き上げる
En dehors(オン・ドゥオール) 外旋
En dedans(オン・ドゥドン) 内旋
Les articulations d'épaule(レザルティキュラション デポール) 肩関節
Les hanches(レ オンシュ) 股関節
など、日仏やアテネフランセでも習わなかった単語を教えていただきました。

[註3]Coeur de Pirate(クール・ドゥ・ピラットゥ)
20歳のキュートな女性シンガー。ネットの毒舌ブロガーPerez Hilton(ペレーズ・ヒルトン)に珍しく褒められたことで世界的な注目を集める。フランスでNo.1のセクシー男性歌手、Julien Dor(ジュリアン・ドレ)とコラボしたり、今要注目のファム・ファタル。ちなみにアーティスト写真は彼女がジュリアンと腕を組んでいて、てっきりいい仲なのかと思ったら、「フランスでは、デュエットで腕を組んでいるくらいで付き合っていることにはなりません」と、先生に単純な思考回路を諌められました。

[註4]股関節
股関節まわりが柔らかくなると精神的にも柔軟になり、人生がスムーズになるとか。

[註5]色気
ルクスロー先生の教室に通うようになってから、女性としての魅力がアップして、夫に「愛してるよ」と言ってもらえるようになった生徒さんもいるそうです。

しんさん・なめこ
1974年生まれ。東京生まれ埼玉育ち。漫画家・エッセイスト。セレブ、スピリチュアル、女磨きなどをテーマに、数々の作品を発表。「週刊文春」など多数の雑誌で連載記事を持つ。主な著書に、『女修行』(インフォバーン)、『女の人生すごろく』(マガジンハウス)、『開運修業』(講談社)など。

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