サイゾーpremium  > 特集  > 石原都政が目指しているのは純潔教育!? ...

──今春、東京都の青少年健全育成条例改正案をめぐる問題が、ネットやマスメディアを騒がせた。通称"非実在青少年問題"と呼ばれる。この騒動の裏にある権力側の目論見とはなんだったのか? まだまだ予断を許さないこの問題から、目を離すな!

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規制反対派の山口貴士氏のブログ。

 2月24日、東京都議会に青少年健全育成条例の改正案が突如提出された。その中に「非実在青少年」(マンガ・アニメ・ゲームに登場する、18歳未満と認識できる二次元の青少年)の性描写に関する規制、つまり、たとえ設定が18歳以上でも"17歳以下に見えるキャラクターが性交(または類似行為)をしているような描写のある作品は「自主規制」せよ"という条文が盛り込まれており、これが成立しそうだとわかるや否や、ネットを中心に反対の声が続出。最終的には、日本書籍出版協会や日本ペンクラブなど、多くの出版系の業界団体や大学、マンガ家、識者が反対意見を表明し、大問題に発展した。結局改正案は、3月30日の都議会本会議で継続審議が決定し、6月の定例議会となるだろう次の議会まで決議見送りとなった。

 改正案の条文(下コラム参照)の問題点はどこにあるのか? 改正反対派の意見は「規定が曖昧で、青少年の性行為を肯定的に表現したものはすべて規制される」「現行の条例で十分規制されているはずだ」などさまざまだが、「まず問題なのは、改正案の成り立ちの不透明さなんです」と、反対派として発言している元編集者で評論家の明治大学准教授・藤本由香里氏は語る。

「通常こうした表現の問題は、何か議論の発端になる問題図書や抗議があった上で規制について話し合われるものですが、今回は、そういった市民の声がないのに突然改正案が出てきた。改正案の元になる答申を出した青少年問題協議会(都知事直属の諮問機関)には現状、業界関係者が皆無。しかも改正案は、そうした偏った人選の協議会で出された答申からもさらに突き進んでいる。まずそれが大きな問題点です」

 改正案の提出者は石原慎太郎知事だが、実際に作成したのは、都の青少年・治安対策本部の青少年課である可能性が高い。今回の提出理由は、「青少年の健全な育成を図るため、児童ポルノの根絶等への気運の醸成等に関する規定を設けるとともに(中略)規定を整備する必要がある」と案中に記されているが、その真意とは? 反対派の山口貴士弁護士は次のように推測する。

「国会における児童ポルノ法改正論議では、規制慎重派の抵抗が強く、創作物や単純所持規制の導入が困難なため、規制を通しやすい地方自治体の条例を全国的に導入しようという規制推進派の戦略だと思います。以前から"絵"も対象に盛り込むべきという意見はありましたが、"児童ポルノ法は実在する子どもの人権を守るものであり、被害者のいない『絵』を規制するのはおかしい"という正論が通っていました。そこで規制推進派は、法律が変えられないなら、各地の地方自治体の条例で規制の実績を作り、国会に圧力をかけようと、方針を変えたものと思います」

たたき台の段階から曖昧でねじれていた改正案

 ただ、方針転換が急すぎたのか、改正案の条文は曖昧な部分ばかりだ。前出の藤本氏は苦言を呈する。

「改正案のたたき台である、東京都青少年問題協議会が作成した『メディア社会が拡がる中での青少年健全育成についての答申』でも、『青少年の健全育成』の問題と、現実の被害児童がいる『児童ポルノ』の問題、そして、現実の被害児童の人権を守るために作られた『児童ポルノ』規制をそのまま『非実在青少年』に適用したい、という願望とをごっちゃにしている。『児童ポルノ』の『児童』が日本では『18歳未満』を指すのも混乱の原因です。答申では性表現の対象も、マンガ・アニメ・ゲームを観るほうも、主に小学生などの低年齢層を問題にしている。なのに、条例の規定はすべて『18歳未満』が対象。だからヘンなことになるんです」

 都の青少年問題に関する政策を議論する委員会には、東京都青少年問題協議会と、東京都青少年健全育成審議会がある。後者は出版業界団体もメンバーに含む第三者機関で、不健全図書の指定を行っている。この指定の基準も明確とはいえないが、都はこれまで、出版社側の「自主規制」を尊重し、「表示図書」として18歳未満に販売しないためのゾーニングを行っている限り、不健全図書指定しない運用を行ってきた。問題は、改正により「自主規制」要求の範囲が著しく拡大し、さらに、まん延の防止義務が要求されることだ。

「青少年とは0歳から17歳までを指し、一律に『青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害』するか否かの判断はできません。非常に抽象的かつ恣意的な基準で、弁護士でも自信を持って判断するのは難しい。ましてや、日々の業務に追われる編集者や書店では無理があります。しかも、今回の条例には、"悪書追放運動"を都が後押しする条項がある。線引きが難しければ安全策をとるしかない。圧力を恐れた書店は店頭に置くのを躊躇し、出版社も無難な作品しか出さなくなるでしょう。そこに都の狙いがあります。形として『自主規制』である以上、都は責任を出版社や作者に押し付け、責任逃れが可能です。事実上規制しておきながら、その責任は取らなくてもいい、自主規制とは都にとって都合のよい、"ずるい"制度なのです」(前出・山口弁護士)

 今回の改正案では都民に、"青少年の性描写を含む表現物をまん延させない義務"も追加されており、議論の争点になっている。藤本氏は「これでは、書店や図書館で誰かひとりが告発すれば、性描写のある本を簡単に排除できる。"悪書狩り"が起こる危険がある」と抗議するが、なぜ都は突然、ここまでの強硬姿勢に出たのだろうか?

「これは私の憶測ですが、東京五輪誘致ということが考えられます。前の東京五輪の時にも"環境浄化"が行われました。2020年の五輪への立候補を表明していますし、"環境浄化"の一環として創作物規制を目論んでいる可能性があります」(前出・山口弁護士)

 次の議会までのじっくりした審議を期待したいが、本誌を含め、メディアも引き続き注目していく必要がある。

(取材・文/遠藤麻衣)

石原さん、意味わかってる!? 条例改正案の最重要個所を抜粋!

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[第3章第7条]図書類の販売等及び興行の自主規制について
図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸付け、又は観覧させないように努めなければならない。

青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。

年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。

[第3章第8条の1]不健全な図書類等の指定について
知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。

【編註:以下の一号が追加】

販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第7条第ニ号に該当するもののうち、強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもので、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく阻害するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの。

[第3章の3 第18条の6の4]児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた都民等の責務
何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する。

都民は、都が実施する児童ポルノの根絶に関する施策に協力するように努めるものとする。

都民は、青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでないことについて理解を深め、青少年性的視覚描写物が青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害するおそれがあることに留意し、青少年が容易にこれを閲覧又は観覧することのないように努めるものとする。
※引用元/「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」

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