サイゾーpremium  > 特集  > エロ、暴力、スプラッター......近年...
第1特集
"映倫"は作品を守る? それとも殺す?【2】

エロ、暴力、スプラッター......近年、映倫審査で物議を醸したモンダイ作品

+お気に入りに追加

『ツォツィ』
未成年者の犯罪描写はドラマであっても厳重審査!

0903_tsuotsui.jpg

ツォツィ(チンピラ)と呼ばれるスラム街の少年が、子育てを通じて改心していく姿を描いた人間讃歌。未成年者による殺傷シーンがあることから、映倫はR-15に指定。配給元の日活は「ティーンエイジャー試写会」を開き、中学生らの好意的な感想を映倫に届けたが、映倫は再審査に応じなかった。同様にカンヌ映画祭パルムドール受賞作『ある子供』(05)も、主人公の若者が自分の赤ちゃんをわずかな金で売ってしまうというショッキングなシーンがあるため、PG-12指定に。こちらは再審査されるも、結果は変わらず。過去に再審査された作品は10本で、審査結果が変更されたのはそのうち3本のみ。岩井俊二監督の『スワロウテイル』(96)も少年少女がニセ札づくりをするシーンがあるため、R指定となった。

『バトル・ロワイアル』
中学生同士の殺し合いは国会議員からも問題視

戦争体験者である深作欣二監督(故人)が反戦・反暴力のメッセージを込めた『バトル・ロワイアル』(00)だが、中学生同士が殺し合うという内容からR-15指定となった。"国会の爆弾発言男"の異名で知られた石井紘基議員(故人)が国会で問題にするなど上映の規制を求める運動が起き、このことが社会的関心を呼び、大ヒットに結びついたともいわれている。ちなみに、石井議員は国会で取り上げた時点では映画を観ていなかった。深作欣二監督の実子・健太監督が撮り上げた『バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』(03)も公開され、これもR-15指定となっている。また佐世保市女子児童殺害事件の加害者が『バトル・ロワイアル』のビデオを借りて観ていたことから、『Ⅱ』のビデオ発売が延期される事態に陥った。

『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』
反社会的な題材だらけで映倫審査員もお手上げ!

0903_bokke.jpg

鬼才・三池崇史監督による05年公開のホラー映画。原作者の岩井志麻子演じる遊郭の女主人が、若い女郎をニタニタ笑いながら拷問するシーンのほか、堕胎、近親相姦、奇形......と全編にわたってインモラルな題材が配してある。放送コードのゆるい米国のケーブルテレビ向けに撮った作品だが、米国では放送自粛に。日本での劇場公開に当たって映倫審査を受けているが、審査の対象外となった。松村克弥監督の『オールナイトロング2』(95)、『オールナイトロング3最終章』(96)もスプラッターシーンの過激さから映倫審査外に。逆に、ギャスパー・ノエ監督の仏映画『アレックス』(02)は、暴力とセックス満載ゆえにR-18指定となったが、公開時に俳優の男性器が無修正で映っていたため、「審査員のチェック漏れでは?」と囁かれている。

『美しき諍い女』
芸術的な内容ならば全裸でヘアを見せてもOK!

0903_utsukushiki.jpg

92年当時、映倫管理委員長だった清水英夫氏(現在、名誉顧問)がフランスの映倫を訪問した際に「『美しき諍い女』は芸術映画なので、無修正でお願いしたい」と頼まれ、映倫の審査基準にある「性器・恥毛は描写しない」という個所に「原則として」という5文字を付け加えたことで、事実上のヘア解禁となった。ただしヒロイン役のエマニュエル・ベアールが演じたのは「絵画のモデル役」であり、わいせつシーンは一切なし。セックス絡みでのヘアの露出は、今も厳重にチェックされる。『ベティ・ブルー 愛と激情の日々/インテグラル』(92)は「主人公の腰の動きがわいせつ」と映倫に指摘され、ベッドシーンのぼかし修正を余儀なくされた。怒ったジャン=ジャック・ベネックス監督本人が、映倫に押し掛けたという逸話も残る。

『大統領暗殺』
たとえ世界の嫌われ者でも一国のリーダーの中傷はNG

0903_daitoryo.jpg

英国映画『Death of a President』(06)を、日本での配給会社であるプレシディオが『ブッシュ暗殺』という邦題で07年に公開しようとしたところ、「あらゆる国の元首、国旗、民族的慣習の取り扱いに注意する」などとした映倫規程に抵触するとして、タイトルと共にブッシュ大統領が狙撃されるシーンを描いた宣伝ポスターの変更を求められた。配給側は邦題を『大統領暗殺』と改め、ポスターもブッシュ大統領の顔がわからないようトリミングしたものにした。ちなみに、ウガンダ大統領アミンを題材にしたケニア・英国合作映画『Amin The Rise And Fall』(82)の邦題は『アフリカ残酷物語 食人大統領アミン』だが、このときは問題とならなかった。ヒトラーを悪役として描いた作品は、問題ないのだろうか?

(文/長野辰次)
(絵/黒川知希)


Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年5月号

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ