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第1特集
学会を斬り続ける男、「日新報道」遠藤留治がまた吠えた!

創価学会を本気で怒らせた一冊 当事者が"大事件"の裏を語る

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──公明党が衆議院議員数を飛躍的に伸ばした69年、出版界を揺るがす「言論出版妨害事件」が明るみになった。40年近い歳月が流れ、事実関係が風化しつつあるが、妨害を受けた当事者である編集者の脳裏に深々と刻まれた記憶と、事件から得た教訓をあらためて検証したい。

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「言論出版妨害事件」について語ってくれる遠藤留治氏。

 戦後日本の政治、宗教、出版史に大きなクサビを打ち込んだ記念碑的な一冊の本がある。1969年10月に日新報道という小さな出版社から出された、藤原弘達(故人)の著作『創価学会を斬る』がそれだ。明治大学教授であり、気鋭の政治評論家として頭角を現していた藤原氏が、公明党と創価学会の関係は 政教一致 であり、政教一致はファシズムを招く危険性が強いことを訴えたものだ。

 結果的に100万部のベストセラーとなった『─斬る』だが、公明党が自民党幹事長(当時)の田中角栄を介して出版中止を求めるなど、出版前・出版後と様々な妨害工作が著者や出版社に仕掛けられ、一連の騒動は「言論出版妨害事件」【註:コラム参照】として国会でも問題となった。

 事件当時『─斬る』の編集担当であり、現在は日新報道の代表取締役として"学会批判本"を出し続けている遠藤留治氏に、「言論出版妨害事件」の実態と今なお批判本を出す意義について語ってもらった。

「日新報道は、それまで経済誌を中心にしていた社員20人足らずの小さな出版社でしたが、『社会の病理を追及し、その病巣を切開。単なる批判ではなく、治療法まで考えていこう』というポリシーのもと、69年に書籍を中心とした出版部を設けたんです。このときのポリシーは、今も我が社の経営方針となっています。まぁ、出版部といっても僕ひとりでしたが(苦笑)。でも、当時の僕は30代になったばかりで怖いもの知らず。藤原弘達先生も48歳と若かった。血気盛んだったから、創価学会を相手に戦えたのでしょう。同年8月、『─斬る』の小さな予告広告が山手線や地下鉄の車内吊りに出た途端に、抗議の電話が鳴りっ放し状態ですよ。本の中身も知らないのに、社にも藤原先生の自宅にも差出人不明で『お前ら、死ね』と書かれた黒縁のハガキや手紙がダンボール箱3~4つ分も届きました。予想していたとはいえ、想像をはるかに上回る反応でした。でも、これで逆に火が点いた。社員全員で学会に立ち向かおうと団結したんです。藤原先生も、『学者生命、評論家生命を賭けて、絶対に出版する』と約束してくれました」

『─斬る』の出版に当たって、嫌がらせ行為だけでなく、学会側が『─斬る』初版本10万部相当を丸ごと買い取るという条件も出されたそうだ。金銭的に困っている作家や出版社なら、心が揺れ動く提案だろう。さらに公明党の竹入義勝委員長(当時)の依頼を受けた田中角栄が、藤原宅に直接電話をかけ、赤坂の高級料亭にて2度にわたる交渉が行われたという。

「田中角栄から呼び出されたことは事前に藤原先生から相談され、私が『会うだけならいいんじゃないですか』と言ったことを覚えています。藤原先生がすごいのは、料亭で角栄に対して『一国の総理を目指している男が、いち言論人、いち出版社を潰し、特定の勢力の利益のためだけに動いてよいのか』とタンカを切ったことです。角栄も大したもので『よし、わかった』と仲介役を降りたわけです。このとき、料亭の隣室には池田大作と竹入委員長がいたという逸話も耳にしています。角栄はなかなかの男でしたが、角栄という緩衝材がなくなり、妨害行為が激しくなっていったんです」

『─斬る』は当初より発売予定を早め、10月末に刷り上がった。しかし、日販やトーハンといった取次や大手書店にはすでに圧力がかかっており、出来上がった本が店頭に並ばないという異常事態に陥った。

「取次やほとんどの書店は、うちのような弱小出版社よりも、池田大作の『人間革命』(聖教新聞社)など大部数をハケる学会のほうが大事だと考えたわけです。仕方ないので社員全員で風呂敷に30部ずつ包んで、扱ってくれる書店を探し回りました。僕は新幹線に乗って、東京から大阪まで100部担いでいきましたよ(苦笑)。10軒中2軒くらいは、意気に感じて置いてくれる書店もありました。でも、学会員らしい人物たちがずっと尾行していて、書店に本が並ぶのと同時に買い占められたんです。直接、目撃していませんが、多分そうでしょう。後に学会から"転向"した元幹部に聞いたのですが、藤原先生や僕は学会のブラックリストに載っていて、私生活に至るまで徹底的に調査していたそうです。いやぁ、学会の行動力・組織力・資金力は大変なものですよ(笑)」

大スポンサー 学会様 には大手マスコミも逆らえず

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 言論・出版妨害は民主主義の根底を揺るがす大問題だが、一連の騒ぎの中で、もうひとつ重大な問題が明るみになっていった。遠藤氏の語気が一層強まる。

「知り合いの朝日新聞や読売新聞の記者、論説委員たちに一連の事実を説明したのですが、『わかっている』と生返事するだけで記事にしようとしませんでした。当時はまだ、朝日新聞を"正義の味方"と信じていただけにショックでしたよ。取り上げてくれたのは、公明党と敵対する日本共産党のしんぶん赤旗と、『週刊新潮』『週刊文春』などの週刊誌だけです。僕は共産党政権になることは望んでいないが、"社会のチェッカー"としての機能は素晴らしいと感じました。それに対し、大手新聞は今でも学会系の出版物の広告を大きく扱っており、こんなに広告料を払ってくれる広告主はほかにないわけです。それに、新聞社の一部は聖教新聞や公明新聞など関連紙の印刷を請け負っていますから、学会には逆らえない。テレビも含め、大手マスコミは学会の恩恵を受けているんです。『言論出版妨害事件』は、赤旗や週刊誌が書き立ててくれたお陰で国会で扱われることになり、それから大手マスコミは動き始めたんです。自分たちが安全地帯にいることを確認してからでないと、記事にしない。今も続く、日本のマスコミの悪しき体質も大問題ですよ」

 国会で取り上げられると、取次は手のひらを返したように「ぜひ、うちでも扱わせてほしい」と編集部に現れたそうだ。「世間から"民主主義の敵"と思われるのが、イヤだったんでしょう」と遠藤氏はドタバタ喜劇でも見てきたかのように笑ってみせた。『─斬る』以降も、『創価学会 池田大作をブッた斬る』【1】など現在まで26冊もの"学会批判本"を出し、中には名誉毀損など係争中のものもある。なぜ、リスクを承知で批判本を出し続けるのか?

「『言論出版妨害事件』に関しては70年の国会で問題になったことで、5月3日、池田大作が謝罪表明しました。しかし、その後40年近い年月がたっていますが、公明党と創価学会は本当に政教分離をしているといえますか? 公明党が純粋な政党といえますか? ファシズムを研究していた藤原先生が予見し恐れていた、自民党と公明党による連立政権が99年に生まれ、政界のキャスティングボートは公明党に握られた形です。学会からの直接的な嫌がらせはここ数年途絶えましたが、これは学会の体質が変わったというより、"批判本は無視せよ"という戦略なのでしょう。訴えてくるときも学会としてではなく、学会員が個人で訴えてくるなど、マスコミで話題にならないようにしています。学会の大衆操作は、より巧妙になってきているんです。世間だけでなく、自民党も学会に対する警戒心が薄くなってきていますが、社会の問題点は絶えず訴え続けることが大事なんです」

学会が本当に政教分離するまで死ぬ気で戦う

 事件以降、大手出版社からも"学会批判本"が出されるようになったが、批判本のパイオニアである遠藤氏のお眼鏡にかなった"おすすめ本"を紹介してもらおう。今年11月に『民族化する創価学会』【2】を出した宗教学者である島田裕巳氏と、「週刊新潮」に連載されていた「新・創価学会を斬る」で雑誌ジャーナリズム賞を受賞した山田直樹氏の著書は、遠藤氏も興味深く読んでいるそうだ。

「島田さんは宗教学者という中立的な立場から学会を見ており、『創価学会の実力』【3】は僕も読んでいて勉強になりますね。山田さんも現役のジャーナリストとして、よく取材しています。『創価学会とは何か』【4】は週刊誌での連載時は"新・創価学会を斬る"という題名だったので、僕から頼んで単行本化する際にタイトルだけは変えてもらいました(笑)。他社から出た本で感心したのは、この2冊ぐらい。あとは、たいしたことないなぁ(笑)。うちでは、「学者」「評論家・ジャーナリスト」「元学会中堅幹部」と、3者3様の立場から書かれた学会批判本を出すようにしています。多角的に学会を分析するようにしているわけですよ。学会の中には良心的な学会員も少なからずおり、うちの批判本を読むうちに 政教一致 に疑問を抱くようになるみたいです。ですから、脱会した"転向者"は、うちによく来ますよ。『絶望の淵より甦る』【5】の原島嵩さんは元学会の教学部長ですし、『池田大作の品格』【6】の小多仁伯さんは元芸術部書記長です。矢野絢也元書記長は『言論出版妨害事件』に当時関係していた人物ですが、学会を辞めた今では『いやぁ、あのときは……』なんて会話を交わす仲になっています(笑)。そういう意味でも、うちが批判本を出し続けている意味はあるんですよ」

 公称827万世帯ともいわれる創価学会を相手に戦い続ける反骨の出版人・遠藤氏は、最後にこう締めくくった。

「最近でも、竹入元公明党委員長や矢野元書記長といった学会の功労者たちが学会から叩かれているのに、大手新聞やテレビはほとんど報道しません。学会はイメージ戦略が巧みになっただけで、本質的な体質は事件当時から変わっていないと僕は見ています。池田大作が絶対的存在で、批判をまるで受け付けないという体質はおかしい。付和雷同という状態こそ、ファシズムですよ。僕はジャーナリストとして常に少数側の立場に立ち、冷静に社会を見つめていこうと考えています。でも、批判するばかりがジャーナリストではありません。学会が口先だけではなく本当に政教分離し、公明党を解党した上で本来の宗教活動のみに戻ったら、そのときは評価しますよ。『よくやった、池田大作!』とね」

(構成/長野辰次)
(写真/江森康之)

遠藤留治(えんどう・とめじ)
1937年、福島県生まれ。産業経済研究所および複数の出版社勤務を経て、日新報道に入社。69年に出版部を立ち上げ、編集担当としてかかわった藤原弘達による「この日本をどうするシリーズ」の第2弾『創価学会を斬る』が「言論出版妨害事件」を引き起こして話題を呼び、100万部のベストセラーとなる。『朝日新聞を疑え』(伊勢暁史著)、『電通公害論』(猪野健治著)など、マスコミタブーを扱った意欲作を世に送り出している。〈http://nisshin-houdou.com/〉

田中角栄が暗躍、池田大作が謝罪……前代未聞の「言論出版妨害事件」とは?

 67年の植村左内著『これが創価学会だ・元学会幹部43人の告白』(しなの出版)、69年の内藤国夫著『公明党の素顔』(エール出版)などの"創価学会批判本"に対し、創価学会と公明党は著者や出版社に圧力をかけ、出版を妨害した。日新報道の遠藤留治はエール出版より圧力行為の実態を聞き、『これが創価学会だ』をめぐる裁判記録を読んだ上で、藤原弘達著『創価学会を斬る』の出版企画を進める。しかし、69年8月に中吊り広告として出された出版予告を見た学会側からの「題名を変えろ」「(選挙前である)発売時期をずらせ」などの提案に応じなかったため、取次や書店にまで干渉が及んだ。流通過程にまで介入した、戦後日本出版史上初の言論弾圧事件である。

 公明党の依頼を受けた田中角栄が仲介役を途中で降りたことで、圧力行為は激しくなり、身の危険を感じた藤原は遠藤と共にホテルを転々としながら原稿を書き上げ、藤原の子どもには警察が警備についたという。『─斬る』は同年11月に発売にこぎ着けたが、書店で入手できない状態が続いた。70年の国会で大きな問題となったことから、同年5月、創価学会本部総会において池田大作は「言論妨害という陰湿な意図はなかった」と謝罪し、政教分離することを表明。一連の騒ぎにより、『─斬る』は100万部のベストセラーとなり、『これが創価学会だ』『公明党の素顔』も日の目を見ることになった。

 その一方、『─斬る』の内容にいくつかの事実誤認があることを指摘する声もある。また、池田大作が法悟空のペンネームで書いた『随筆 新・人間革命』(聖教新聞社)では事件のことを「『信教の自由』を侵害する凶暴な嵐であった。理不尽な罵倒の連続であった」と振り返っている。その後も学会批判の立場を取り続けた藤原は、99年3月に死去。山田直樹著『創価学会とは何か』によると、藤原充子夫人に対し「おめでとうございます」という嫌がらせの電話が夜中までひっきりなしにかかってきたとされている。

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『創価学会を斬る』
藤原弘達/日新報道(69年)/480円

公明党と自民党の連立政権はファシズムへの第一歩を踏み出すことになると、"政教一致"の危険性を告発。"学会批判本"の先駆的な存在となった。絶版だが、いずれ必ず復刊したいと遠藤氏は語る。

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【1】『創価学会 池田大作をブッた斬る』
藤原弘達/日新報道(88年)/1000円

「言論出版妨害事件」の急先鋒役を務めた元公明党都議・藤原行正と著者との19年ぶりの遭遇となった、「月刊現代」での対談を再録。妨害事件を経て、著者の筆はますます辛辣に。

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【2】『民族化する創価学会 ユダヤ人の来た道をたどる人々』
島田裕巳/講談社(08年)/1785円

分裂や分派の起きない学会を"宗教団体"ではなく"民族"ととらえ、学会の特異性について考察。ポスト池田問題など、今後の学会の進路についても言及している。

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【3】『創価学会の実力』
島田裕巳/朝日新聞社(06年)/1365円

宗教学者である著者が中立的な立場から、巨大教団である学会の社会への影響力を冷静に分析。信仰の形骸化が進み、学会が大きな転換期に差し掛かっていることを指摘している。

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【4】『創価学会とは何か』
山田直樹/新潮社(04年)/1050円

潮出版や第三文明など学会系出版社が新聞や中吊り広告を大量出稿することで、日本のメディアや社会に多大な影響力を持っていることを、グラフや表を使ってわかりやすく解説。

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【5】『絶望の淵より甦る』
原島 嵩/日新報道(07年)/1470円

公明党初代委員長・原島宏治の息子であり、学会教学部長を務めた著者の最後の告発本。妨害事件当時の池田大作や学会の内情などを、元側近ゆえのリアルな筆遣いで再現。

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【6】『池田大作の品格』
小多仁伯/日新報道(07年)/1680円

元学会芸術部書記長である著者が、学会と名誉会長の内情を赤裸々に告白。広告塔として、さらには集票マシンとして活躍する学会芸能人たちについても実名で触れている。


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