「基地の街」の光と影

コザ/ビジネスセンター/1979年  (c) 北島敬三

 写真家の北島敬三はベトナム戦争終結直後の沖縄に通い、コザ(現沖縄市)を撮影している。かつて米軍公認のAサインバーが数多く立ち並んだコザは、米兵相手の歓楽街として栄えた「基地の街」だ。北島はベトナム特需に沸くコザの街を我が物顔で闊歩する大柄の米兵たちや、彼らの相手をする沖縄や東南アジアの女性たち、地元のチンピラなど、盛り場に集まる人々の中を縫うように飛び回りながら、大胆に、そして注意深くシャッターを切っている。ストロボに照らされる彼らの上気した表情や汗ばんだ皮膚が印象的だ。路上の人々を主題とすることで、基地経済に依存する街の光と影が鮮やかに写し取られており、70年のコザ暴動を発生させた土壌を今に伝えてくれる。さまざまな色の肌の人々がチャンプルー(混ぜこぜ)状態となった路上の喧噪は、一見アメリカのどこかの都市のようにも見えるが、アメリカと日本(本土)、そして沖縄とが複雑に絡み合ったコザ特有の細部で毛羽立ってもいるだろう。

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