サイゾーpremium  > 連載  > 小原真史の「写真時評 ~モンタージュ 過去×現在~」  > 写真時評~モンタージュ 現在×過去~【10】
連載
写真時評~モンタージュ 現在×過去~

野生動物の死をめぐるドラマ

+お気に入りに追加
2012年撮影(c)宮崎学

 写真家・宮崎学の作品に「死」というシリーズがある。山中で朽ちていく野生動物の死骸を、赤外線感知装置付きのロボットカメラで定点観測したものだ。一定時間ごとに自動撮影されるだけでなく、死骸に向けて照射された赤外線を何かが遮るとシャッターが下りる仕組みにもなっていて、腐臭に誘われて集まってくるさまざまな生物の様子が、彼らに警戒されることなくとらえられている。自ら動くことのなくなった野生動物の死骸は、ほかの生物の手によってゆっくりと、時に素早く動く。中心となる被写体はファインダーの真ん中に位置している死骸に違いないが、それを分解しにやってくる生物たちも、この死をめぐるドラマの重要なキャストであり、撮影者でもある。森の中の死骸がひとつの舞台装置のようにも見えてくるほどだ。

 野生動物の死骸が横たわるそこは、静かな森の中でもひときわ賑やかな場所だろう。ひとつの死骸がそのほかの生物を活気づけているように見える。死は生の終わり、生の停止であるが、自然は一時もとどまることはない。死が終わりなのではなく、死のゆるやかな終わりがあるということだ。「自然の死によって生命は、絶えることなく、連綿と連なっている」と宮崎が語るように、一個体の死はほかの複数の生と関係していくのだ。鳥たちは死骸の体毛を巣材として持ち帰り、死骸を食べた小動物たちは体内にエネルギーをため込み越冬していく。動物の死は、自然の中で一片の無駄なく再利用されるわけだ。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年2月号

日本のタブー

日本のタブー

小阪有花、危険なエロス

小阪有花、危険なエロス
    • 元祖タブーグラドル【小阪有花】

インタビュー

連載

    • 【長澤茉里奈】ストロング系なんです。
    • 【犬童美乃梨】筋トレ女子、秘密の習慣
    • いとしの【戸田恵梨香】
    • 自由な【インターネット】は終わった
    • 一茂、良純【中年ジュニア】の時代が到来
    • 知られざる【北島三郎】まつり話
    • 【スタバ】を襲う謎のコーヒー起業家
    • 【Zapp】ロボット声の魔力
    • 町山智浩『運び屋』
    • 【ゴーン前会長逮捕】から考える社会の劣化
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子の「ドラッグ・フェミニズム」
    • 「念力事報」/憎みきれないハゲダルマ
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 【ちびまる子ちゃん】がその他大勢に与えた救済
    • 【スヌープドッグ】のローライダーを塗った男
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 不死鳥のごとく蘇った【天才ブルワー】
    • 【ゲイメディア史】群雄割拠時代の幕開け
    • 幽霊、呪われた平成と世直しの幻想。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』