――クラウドファンディングを使って制作費を稼ぎ、自らの手で写真集を発売した緑川静香。流行の手法を使ってすごい! というなかれ、その裏には知られざる苦闘があったのだった……。
(写真/河西 遼)
「若々しく輝いている自分を見てほしい」というアイドルの切なる願いも、出版不況の中では写真集の企画にGOが出ることはめったにない。そんな苦境をはやりのサービスを使って打開したのが、女優・モデル・タレントとして活躍する緑川静香だ。彼女は、インターネットで不特定多数から資金を募り、目標金額に達すればプロジェクトに着手できるクラウドファンディングを使い、見事、資金調達に成功し、念願のファースト写真集『25~ Twenty Five ~』を出版した。
緑川は、雑誌「Seventeen」(集英社)のモデルにスカウトされたことがきっかけで芸能界デビュー。その後、グラドルの登竜門「日テレジェニック」にも選ばれているが、そんな彼女でさえも、写真集を出版するのは現実的に難しい。
「写真集を出すことは目標のひとつだったんですけど、なかなか実現しなくて。そんな時に、『MotionGallery』さんから、お話をいただいたんです」
出版に必要な目標金額は60万円。当初は、これまで応援してくれたファンに「お金をください」と、さらなる負担を強いるようで気が引けた。目標金額を達成できなかったら叩かれるんじゃないか……という不安も頭をよぎったという。
悩む緑川の背中を押したのは、女手ひとつで育ててくれた母親だった。緑川は、極貧の家庭で育った。仕事で家を空けがちな母とは心がすれ違うこともあった。しかし自分が初めて載った雑誌をこっそり購入していてくれたのを見て、芸能界で活躍し、母に恩返ししようと決心したのだという。
そんな母に励まされプロジェクトをスタートしたものの、開始から1週間は怖くてサイトをチェックすることができなかったそう。
「きっと資金が集まっていないんじゃないかなと落ち込んでいたのですが、ファンの方からはげまされてやっとの思いで確認すると、たった1週間で30万円も集まっていたんです!」
最終的に集まったのは、目標を大きく上回る92万1000円。だがこれでプロジェクトは大成功……とはいかない。なにせ、写真集のコンセプト決めや、スタッフの手配まですべて自分でやらなければいけないのである。
しかし、「みんなでプロジェクトを作り上げる」というクラウドファンディングの理念に沿って果敢に写真集のプロデュースに挑戦。「ツイキャス(映像とツイートでコミュニケーションを取ることができるサービス)を経由して、スッピンの写真を入れてほしいなどの意見をもらい、いくつかは実際に取り入れました。普通だったら、自分やファンのみなさんの意見を取り入れることは、なかなか難しいけど、クラウドファンディングだったら、納得できる写真集を作ることができます」
さらに、カメラマンは「日テレジェニック」で一緒に仕事をした横内禎久氏にフェイスブック経由でオファー。横内氏もこれに賛同し、衣装などのスタッフ集めにも協力してくれたという。
「印刷まで考えると92万円は写真集を出版するのに、決して余裕のある金額ではありません。でも、ファンのみなさんが『お金のことは気にしないで、いいものを作ろう』と言ってくれました。本当になにもかもがみなさんのおかげで出せたものなんです」
本誌のインタビュー中、何度も泣き顔を見せていた涙もろい緑川。自分の夢に対して純粋な彼女だからこそ、多くの人を巻き込んでいくことに成功したのかもしれない。
「今回の写真集は、ほとんど修整を入れていません。ただ単にお金がなかったということもあるのですが、どこまで修整を入れるのか、よくわかってなかったんです。後から『普通の写真集は、修整をバンバン入れているよ』と聞いて、しまったー! って思いました」
25歳の素顔が詰まった写真集は、"無修整"の緑川で溢れている。
(文/宮崎智之)
緑川静香(みどりかわ・しずか)
1988年、埼玉県生まれ。「Seventeen」(集英社)でデビュー。 11年に、「日テレジェニック2011」に選ばれたほか、数々の賞を受賞。13年、坂本浩一監督作品『009ノ1』などに出演し、活動の幅を広げる。現在も雑誌のグラビアからテレビ、映画などで活躍中。
オフィシャルブログ〈http://ameblo.jp/midorikawa-shizuka/〉