サイゾーpremium  > 連載  > 稲田豊史の「オトメゴコロ乱読修行」  > 【ノルウェイの森】文学的な男女交際の末路
連載
フィクションで解剖――オトメゴコロ乱読修行【20】

【『ノルウェイの森』】村上春樹が「やれやれ」ぼやく文化系の股間を熱くする文学的な男女交際の末路

+お気に入りに追加

――サブカルを中心に社会問題までを幅広く分析するライター・稲田豊史が、映画、小説、マンガ、アニメなどフィクションをテキストに、超絶難解な乙女心を分析。

1612_inadas.jpg

 ここ数年、秋の風物詩といえば、村上春樹の「ノーベル文学賞とるとる詐欺」だが、今年も安定のスルー。そんな村上作品を1冊だけ読んでハルキストを気取りたいなら、とりあえず『ノルウェイの森』で間違いなかろう。1987年の書き下ろし長編で、同年の国内年間ベストセラー9位、翌年の2位。現在までに累計1000万部以上も発行されている、名実ともに村上の代表作だ。

 本作で提示され、村上の他作でも同工異曲的に繰り返される「心が壊れた女性を神聖視」「俗世にうまくコミットできない繊細なボクに自己陶酔」といった男性主人公の精神性は、現在のこじらせ文化系中年男子のそれと、ほぼ一致する。30年かけて1000万部を売った国民的文学作品の影響力には、ほとほと戦慄を禁じ得ない。

 物語は、37歳の「僕(ワタナベ・トオル)」が、主に大学時代を回想する一人称形式で進行する。簡単に言えば、精神を病んだ最愛の女性・直子に振り回された「僕」の青春時代を振り返る恋愛小説だ。直子を含む主要登場人物の多くが心を病んでいるか、自死を選ぶか、もしくは両方という、結構な鬱展開も特徴のひとつである。

 本作は、「僕」が直子を神聖な存在として崇め奉るラブストーリーだが、本連載的にはWヒロインとして登場する対照的なもうひとりの女性に注目したい。「僕」と同じ大学に通う女子大生・小林緑だ。緑こそ、我々を苦しめる、しかしついつい縁を結んでしまいがちな、「文化系男子ホイホイ女子」にほかならない。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2018年12月号

禁断の映画と動画

禁断の映画と動画

"異能作家"たちが語る「文学、新宿、朗読」論

    • 【石丸元章×海猫沢めろん×MC漢×菊地成孔】対談

インタビュー

連載

    • 【橋本梨菜】ギャル男をマネタイズしたいんです。
    • 【RaMu】YouTubeで人気の美女が泡まみれ
    • 【ダレノガレ】は突然に
    • 日本の【AI市場】と日本企業のAI導入の真実
    • 【オスカー社員】が大量退社で瓦解!?
    • 祭事的【渋谷ハロウィン】分析
    • 【出前アプリ】を支えるライダーたちの過酷な日常
    • 【フレディー・マーキュリー】の一生
    • 町山智浩/『ボーイ・イレイスド』ゲイの息子と神のどちらを選ぶのか?
    • ジャーナリスト殺害事件で変わる【サウジ】の覇権
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子の「ドラッグ・フェミニズム」
    • 「念力事報」/それがジュリー
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 【カーネーション】フェミ論点全部乗せの名作朝ドラ
    • 「俺たちの人生は死か刑務所だ」ギャングの豪快な人生
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 【山陰】でビール造りに励む男
    • 【薔薇族】刊行で去っていく友と、死を恐れぬ編集者
    • 幽霊、紅衛兵たちのアニメ映画興行。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』