――フォローしていない。名前も知らない。それなのにTikTokやインスタグラムを開くと、「かわいい女性」が次々と流れてくる。背景にあるのは、無名でも動画の内容次第で「おすすめ」に載るアルゴリズムだ。「好きだから見る」のか「見るから好きになる」のか……。知らない美女に指を止めてしまう仕組みを探った。
まるで回転寿司のように、次から次へと流れてくるショート動画。しかも皿に載っているのは、フォローもしていなければ名前も知らない人ばかり。「これは違う」と一皿見送っても、すぐに次の皿が目の前に。しかも閉店時間はなし。気づけば延々と「おすすめ」を“食べ続ける”ことに。
「東京で絶対に行くべき居酒屋3選」「豪華すぎる夜行バスに乗ってみた」「実は知らないと損する100均グッズ」──。
TikTokやインスタグラムのリールを開けば、こうした情報を紹介するショート動画が次々と流れてくる。「天国と地獄」やジブリの楽曲などをBGMに、スマートフォンで撮影した、どこか素人っぽさの残る映像ばかり。テレビと比べて映像が美しいわけでも、企画が凝っているわけでもない。それでも、気づけば流れてくる動画をダラダラと見続けてしまっている。
なかでも、小誌の読者が思わず指を止めてしまうのが、「かわいいけど、誰だか知らない女性」の動画だろう。
はやりの音楽に合わせて踊っている。カフェで食事をしている。あるいは、ただカメラに向かって話している。中には水着姿や身体のラインが分かる服装の女性もいるが、何か特別な芸を披露しているわけでもない。ただただ、かわいい。
しかし、そこに映っている女性が誰なのか分からない。気になってプロフィールを開いてみて初めて、コスプレイヤーやモデル、アイドル、キャバ嬢だと知る。中には、普段何をしている人なのか、最後まで見てよく分からないことさえある。
なぜ彼女たちの動画が「おすすめ」に表示されるのだろうか? 一昔前なら、「それはあなたが女性インフルエンサーやグラビアアイドルばかりフォローしているからですよ」で終わった話かもしれない。
ところが、、現在のSNSはそんなに単純ではない。共著に『アフターソーシャルメディア 多すぎる情報といかに付き合うか』(日経BP)などがある京都精華大学メディア表現学部教授の吉川昌孝氏は、その背景に「アルゴリズムの変化」があるのではないかと語る。
「YouTubeはTikTok以前から、閲覧履歴などを基にした、パーソナライズされたレコメンデーションを発達させてきました。インスタグラムにも自分がフォローしていないコンテンツを発見する仕組みがありました」
ところが、中国のByteDance(バイトダンス)社が運営するTikTokの登場によって、「発見」がプラットフォームの中で占める位置は大きく変わったという。